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第一章 悪魔との契り

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「ほぅら、どうした!このままでは死んでしまうぞ?」
「あぁもう!悪魔ってどうしてこう、品がないのかしら!」

破けたドレス。
いや、正確には破いたドレスか。まぁ、どちらでもいいのだけど。
がらりと崩れた足場。じりじりとこちらへ詰め寄る彼に先ほどまでの人間に似たなにかはない。
あるのは、目の前の女が餌に足る存在か、見定めるような瞳だけ。
彼が提示したものは、いたって単純なものだった。

────自分の価値を証明して見せろ。できねぇようなら、死ぬだけだ。

もはや、そんなの代償でも何でもない。
力が欲しければ生き残るどころか、格上の悪魔という存在に私という餌の価値を証明ろだなんて。
無茶ぶりにもほどがある。
だが、こうなった以上どうにか手を打つしかない。
とりあえず、手の中にあった小さな火種は捨てた。
こうなった以上、ソレもいつどうなるか分かったものじゃないから。

だが、灯りがない洞窟の中は真っ暗だ。
目を慣らすにも、誰かさんの炎が眩しくて、難しい。
こんな暗い所より、まだ、月明かりのある森の中のほうがやりやすいというものだ。

「がはは!そりゃぁ、人間とは思考が違うのさ。ほら、早くしないと追いついちまうぞ?」
「そうはいっても!ひぁっ!」

徐々に縮まる距離。
距離を確かめ走っていたら、ふと、肌が冷たい岩肌に触れた。
ぞっと、背筋が凍り付くのを感じる。
行き止まり。
それ以上先に、道はなかった。
あるのは、水で濡れた岩とほんの少しの光を宿す、虫だけ。
私に、できる魔法は限られている。
多少の衝撃を防ぐか、生き物に言伝をのせるか。
そんなもの、今ここで何の役にも…。

「つめたっ!?あ"-ったくもっとちゃんとしたにすりゃよかったかぁ?」

─────────石?

よく、思い返して、再び、岩肌に触れた。
冷たくて、ごつごつとした、岩。
さっき、私の手の中にあった、ソレとよく、触り心地が似ている。
考えるよりも先に、身体が動いていた。足元で光る虫を捉えて、そっと魔法を籠める。
私にできる最大限の加護。
それでもきっと、あなたの命は奪われてしまうわ。

「………ごめんなさい。」

伝わるはずのない謝罪をうけて、その小さな虫は淡い光を放ち、眩しいそのヒトへ近づいていく。
チャンスは一度きり。
こんなので、悪魔が騙せるかは分からない。
それでも

─────やるしかない。
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