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プロローグ
しおりを挟む『白き色が魔を彩る』
もし誰もが魔法を行使することが当たり前な世界で、魔法を使うことができない存在がいたのなら、その者はどのような人生を歩むだろうか。
同情、軽蔑、侮蔑、差別──それは耐えがたい屈辱と絶望に満ちた人生を歩むことになるだろう。理解されることなく、ただ拒絶され続ける日々。その状況をもたらしたのは、決して当人の過ちではなく、単に生まれつき魔法の「力」を持たなかったというだけなのに。
だが、その存在が待ち受けるのは理不尽の数々であり、それはまさに地獄そのものだろう。
魔法を構築することができない存在——人々はそれを世界から否定された魔法の子と呼んだ。
世界は数多の「色」で溢れている。大地には黄土や赤土の色があり、大海には美しい青の色があり、夜空には無数の星々が様々な色を宿している。魔法もまた、それらと同じように色とりどりに彩られている。
『あの朱く輝く星の色は炎を、あっちの蒼く輝く星の色は水を表しているんだって』
雲一つない夜空の下、輝き満ちる数多の星々が大地を照らす。
『じゃあブラン、あの黄色に輝いている星は雷を表しているの?』
そんな夜空の下で、幼い二人が草原の上に背中を預け、星々を眺めていた。
『そうだよ。そしてあの橙色に輝く星は大地《グランド》を表しているんだ』
彼らは数多の色彩で夜空を満たす星々を指さしながら、夜空を眺める。
『じゃあ私はお母様からあの色をマーリン様から授かったって教えてもらったから、雷魔法が使えるんだ!』
星々に向けていた視線を隣の少年に向けた少女は、輝く星々に負けないほどの笑みを浮かべた。
『ブランは何色をマーリン様から授かったか、もう分かったの?』
『実はまだ分かっていないんだ。でもね、クレア、ようやくアルフォート先生が魔力の色を調べることができる魔道具《ツール》を持っている人のところに連れて行ってくれるって言ってくれたんだ!!』
少年はその知らせにとても喜び、上半身を起こして両手を星々が輝く夜空に高く掲げる。
『ブラン、いつも自分の色を知りたいって言ってたもんね』
『だって、自分に流れている魔力の色を知れば、どんな魔法が使えるのかが分かるんだよ!炎でも水でも氷でも、どんな魔法でも試してみたいし、構築してみたい。ヴィオレを支えるためには、俺がいち早く魔法使いにならなきゃいけないから』
自身に残された唯一の妹のために、少年は夢を少女に語る。
『ブランならきっと魔法使いになれるよ。だって――』
魔法使いとは、魔法を極めた者にしか与えられない誉れの称号だ。誰もが魔法を使う世界では、その称号を得るためには茨の道を歩まなければならない。その茨の道を歩む覚悟を、まだ幼い少年が抱いていた。
『だって?』
少年と同様に、少女も背中を起こし、両手を星空に高く掲げる。
『ブランは私の魔法の先生なんだから!』
少年の灰色の瞳と少女の金色の瞳が重なり、二人は見つめ合う。そして、彼らの表情が徐々に崩れていくと、再び草原の上に背中を預けて笑い合った。
『ねえブラン』
『ん?』
『約束して』
ひとしきり笑った少女が、少年に約束を交わそうとする。
『ブランがこれからもずっと、私の魔法の先生でいてくれるって』
そう言葉をかけた少女は星を眺めながら、少年の手を優しく握った。
数多の色によって彩られた魔力。
その色が、魔法を構築するための鍵となる。
朱の色彩は炎の魔法を、蒼の色彩は水の魔法を、黄の色彩は雷の魔法を、緑の色彩は風の魔法を、橙の色彩は土の魔法を生み出すように、宿す色によって構築できる魔法が変わっていく。
そんな色彩が溢れた世界で、拒絶された魔法の色が存在した。
それは空っぽな魔力色素、世界から否定された魔法の子と呼ばれる者たちが宿してしまった色彩。
「無」を表す白き色彩、「壊」を表す黒き色彩──それは世界を混沌に陥れる拒絶の色彩。
これは、そんな世界から拒絶された色彩をその身に宿した一人の少年が魔法の覇者へと成り上がる物語だ。
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ゆっくりと書いていく予定です。
時々修正加えていくと思います。
白が一番好きな色。
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