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他の女に目移りしたら、婚約者は他の男と親密だった
四 マルシア
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「シア」
「なぁに?ロンド」
「昼間、彼がいたね」
「…気づいてたの?意地悪」
ロンドはマルシアを後ろから抱き寄せ、彼女の腹を撫でる。
「戻りたい…?」
「全然」
もう戻れないのだ。マルシアは腹にロンドの精を受けた。
王族にはもう嫁げない。
いや、元から嫁ぐ相手など居ない。
「シア。一緒にイこう?」
甘く誘い、ロンドの指が胸の先を捏ねる。
「ええ。ロンド。私もイキたい」
いいよ、耳元で囁かれ、再び後ろから貫かれた。
マルシアは馬車に揺られていた。
隣には商会の子息ロンドがいる。
もたれ掛かっていた頭を起こす。
「まだ眠っていてよかったのに」
腰を引き寄せられ彼の胸に飛び込む形になる。
ロンドは陛下にマルシアと王太子との婚約解消と彼女の貴族籍の放棄を願い出た。
国としてはマルシアを商会内に送り込むことが目的だったものあり、陛下は渋い顔をしつつも許可した。
裏ではほくそ笑んでいるに違いない。
父は平民ごときが、とロンドに食ってかかり、陛下に諌められるという茶番のような下らないやり取りがあった。
一応反対の立場を取らなければ怪しまれると思ったのだろう。
すべて筋書き通りで白けてしまう。
引き続き、商会の情報を流すように。
陛下は目線でマルシアにだけ伝えた。
きっと皆、マルシアは上手くロンドを籠絡したと思っているだろう。
だが、違う。
ロンドは目的を持って近づいたマルシアに最初から気づいていた。
知らないふりをして、接していた。
マルシアを見張る連中の隙を突いて、囁いた。
「国の犬のままで良いのか」
マルシアの父は国王にも国にも忠誠を尽している。
陛下が下した諜報活動命令も素直に受け入れた。
「身体を使ってでも情報を持って帰れ」
父から言われた言葉に絶望した。
陛下に、ダナリムとの婚姻はないが、妃教育は励めと言われた時以上の衝撃だった。
ダナリムに相談できるはずがない。
味方もなく、王命に従うしかなかった。
まさか、諜報の対象から救われるとは思いもしなかった。
ロンドは当たり障りのない情報を流してくれた。
大した内容ではなかったが、それでも陛下には初めて「よくやった」と褒められた。
それまで手練の間諜を使ったが尽く失敗していたらしい。
マルシアの肩書が油断させたに違いないと沸き立っていたが、全てロンドの手の上だ。
ロンドは上手くマルシアを使ったと思う。
あえて情報を流させて、上手く商売に転換させた。
他国からの誘いを情報として持って帰させ、結果的に減税をもぎとっていた。
陛下は商会を出し抜いていると思っているが、マルシアから見れば良いように操られているようにしか見えない。
他国に渡り各所に結婚の報告をする予定で、今国境超えをしている。
隣国の支店に着いたら、魔法陣で他国へ移動する。それ以降はもう王家の見張りは追えない。
ロンドはマルシアを国から隠そうとしている。
国の商会も本店とは名ばかりで他国に拠点を移すことになっている。
マルシアたちは故郷の環境に近いが、故郷からはかなり離れた国に辿り着くとそこに新居を構えた。
言語は妃教育で一通り覚えていたので生活には困らない。
「シア。奴らは大慌てらしいぞ」
この国での商売も上手く行っているようで、店に顔を出さずにロンドは今日も妻を膝にのせて手紙に目を通している。
「マルシアの追跡不能になって探しまくった末、商会に飛び込んだらしい」
「ん、それで」
「『何故平民の消息をそんなに気にするのですか?』商会本店長が聞き返すと帰っていったらしい」
「捕らえられずに済んで、よかった」
「そこまで馬鹿ではなかったようだけれど、うちを当てにしすぎなんだよあの国は。そのくせ融通はきかない」
「ちなみに、王太子殿下は…」
「昔の男が気になる?」
「っ」
気にしているのはロンドの方だろう。
今も片手がマルシアに不埒に触れる。
「新しい婚約者との仲は表面上は良いらしいよ」
「そうなの」
よかったと安堵するマルシアにロンドは真実は告げない。
心の底では二人とも別の相手を思っているらしいことまでは。
殿下が想うその相手がマルシアであったなら。
「俺は思ったより心が狭い人間だったみたいだ」
マルシアは意味がわからず首を傾げた。
「なぁに?ロンド」
「昼間、彼がいたね」
「…気づいてたの?意地悪」
ロンドはマルシアを後ろから抱き寄せ、彼女の腹を撫でる。
「戻りたい…?」
「全然」
もう戻れないのだ。マルシアは腹にロンドの精を受けた。
王族にはもう嫁げない。
いや、元から嫁ぐ相手など居ない。
「シア。一緒にイこう?」
甘く誘い、ロンドの指が胸の先を捏ねる。
「ええ。ロンド。私もイキたい」
いいよ、耳元で囁かれ、再び後ろから貫かれた。
マルシアは馬車に揺られていた。
隣には商会の子息ロンドがいる。
もたれ掛かっていた頭を起こす。
「まだ眠っていてよかったのに」
腰を引き寄せられ彼の胸に飛び込む形になる。
ロンドは陛下にマルシアと王太子との婚約解消と彼女の貴族籍の放棄を願い出た。
国としてはマルシアを商会内に送り込むことが目的だったものあり、陛下は渋い顔をしつつも許可した。
裏ではほくそ笑んでいるに違いない。
父は平民ごときが、とロンドに食ってかかり、陛下に諌められるという茶番のような下らないやり取りがあった。
一応反対の立場を取らなければ怪しまれると思ったのだろう。
すべて筋書き通りで白けてしまう。
引き続き、商会の情報を流すように。
陛下は目線でマルシアにだけ伝えた。
きっと皆、マルシアは上手くロンドを籠絡したと思っているだろう。
だが、違う。
ロンドは目的を持って近づいたマルシアに最初から気づいていた。
知らないふりをして、接していた。
マルシアを見張る連中の隙を突いて、囁いた。
「国の犬のままで良いのか」
マルシアの父は国王にも国にも忠誠を尽している。
陛下が下した諜報活動命令も素直に受け入れた。
「身体を使ってでも情報を持って帰れ」
父から言われた言葉に絶望した。
陛下に、ダナリムとの婚姻はないが、妃教育は励めと言われた時以上の衝撃だった。
ダナリムに相談できるはずがない。
味方もなく、王命に従うしかなかった。
まさか、諜報の対象から救われるとは思いもしなかった。
ロンドは当たり障りのない情報を流してくれた。
大した内容ではなかったが、それでも陛下には初めて「よくやった」と褒められた。
それまで手練の間諜を使ったが尽く失敗していたらしい。
マルシアの肩書が油断させたに違いないと沸き立っていたが、全てロンドの手の上だ。
ロンドは上手くマルシアを使ったと思う。
あえて情報を流させて、上手く商売に転換させた。
他国からの誘いを情報として持って帰させ、結果的に減税をもぎとっていた。
陛下は商会を出し抜いていると思っているが、マルシアから見れば良いように操られているようにしか見えない。
他国に渡り各所に結婚の報告をする予定で、今国境超えをしている。
隣国の支店に着いたら、魔法陣で他国へ移動する。それ以降はもう王家の見張りは追えない。
ロンドはマルシアを国から隠そうとしている。
国の商会も本店とは名ばかりで他国に拠点を移すことになっている。
マルシアたちは故郷の環境に近いが、故郷からはかなり離れた国に辿り着くとそこに新居を構えた。
言語は妃教育で一通り覚えていたので生活には困らない。
「シア。奴らは大慌てらしいぞ」
この国での商売も上手く行っているようで、店に顔を出さずにロンドは今日も妻を膝にのせて手紙に目を通している。
「マルシアの追跡不能になって探しまくった末、商会に飛び込んだらしい」
「ん、それで」
「『何故平民の消息をそんなに気にするのですか?』商会本店長が聞き返すと帰っていったらしい」
「捕らえられずに済んで、よかった」
「そこまで馬鹿ではなかったようだけれど、うちを当てにしすぎなんだよあの国は。そのくせ融通はきかない」
「ちなみに、王太子殿下は…」
「昔の男が気になる?」
「っ」
気にしているのはロンドの方だろう。
今も片手がマルシアに不埒に触れる。
「新しい婚約者との仲は表面上は良いらしいよ」
「そうなの」
よかったと安堵するマルシアにロンドは真実は告げない。
心の底では二人とも別の相手を思っているらしいことまでは。
殿下が想うその相手がマルシアであったなら。
「俺は思ったより心が狭い人間だったみたいだ」
マルシアは意味がわからず首を傾げた。
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