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己の腹を撫でるニーディアは、婚約者だった頃には見せなかった優しい笑みを浮かべている。

アドバンズの選択した結果が、想い合っていたはずのメルリーノは婚約者と結婚し、ニーディアは叔父に寄り添っている。

アドバンズの側には誰もいなくなっていた。


「…どうすれば、王太子に戻れる。なにかあるはずだ」

アドバンズは諦めるわけにはいかない。
次期国王として、今までやって来た矜持がある。

簡単に弟に譲るわけには行かないのだ。

「本気でそれを望んでいるのですか…?」

「私以外に誰が王の器だと!」

ニーディアはちらりと隣を見上げて口角を上げている。
ウェルスタはそんな彼女に眉を寄せて首を振った。
くすくすと笑うニーディアとため息を吐くウェルスタに、なんとも言えない苦さを感じた。

言葉無くとも会話する二人に苛立った。

「そうですね。妃教育を済ませた婚約者と、自分を支持する後援者と資金。それらがあれば、ようやく王太子殿下と並ぶことができるでしょうね」

ニーディアがようやくウェルスタから目を離し、思い出したようにアドバンズに助言した。

しかし、その駒らは今のアドバンズの手にあるものは一つもない。

「後は、。これがあれば、現王太子殿下から王位を奪還できるかもしれませんね」

「…子供?」

「王太子殿下と王太子妃殿下は子供を持つ事ができないのです」

アドバンズは希望をそこに見出した。

ウェルスタに窘められていたニーディアだったが、やはり彼女に助言を求めて正解だったとアドバンズは瞳を嬉々と輝かせた。

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