6 / 7
六
しおりを挟む
己の腹を撫でるニーディアは、婚約者だった頃には見せなかった優しい笑みを浮かべている。
アドバンズの選択した結果が、想い合っていたはずのメルリーノは婚約者と結婚し、ニーディアは叔父に寄り添っている。
アドバンズの側には誰もいなくなっていた。
「…どうすれば、王太子に戻れる。なにかあるはずだ」
アドバンズは諦めるわけにはいかない。
次期国王として、今までやって来た矜持がある。
簡単に弟に譲るわけには行かないのだ。
「本気でそれを望んでいるのですか…?」
「私以外に誰が王の器だと!」
ニーディアはちらりと隣を見上げて口角を上げている。
ウェルスタはそんな彼女に眉を寄せて首を振った。
くすくすと笑うニーディアとため息を吐くウェルスタに、なんとも言えない苦さを感じた。
言葉無くとも会話する二人に苛立った。
「そうですね。妃教育を済ませた婚約者と、自分を支持する後援者と資金。それらがあれば、ようやく王太子殿下と並ぶことができるでしょうね」
ニーディアがようやくウェルスタから目を離し、思い出したようにアドバンズに助言した。
しかし、その駒らは今のアドバンズの手にあるものは一つもない。
「後は、自身の子供。これがあれば、現王太子殿下から王位を奪還できるかもしれませんね」
「…子供?」
「王太子殿下と王太子妃殿下は子供を持つ事ができないのです」
アドバンズは希望をそこに見出した。
ウェルスタに窘められていたニーディアだったが、やはり彼女に助言を求めて正解だったとアドバンズは瞳を嬉々と輝かせた。
アドバンズの選択した結果が、想い合っていたはずのメルリーノは婚約者と結婚し、ニーディアは叔父に寄り添っている。
アドバンズの側には誰もいなくなっていた。
「…どうすれば、王太子に戻れる。なにかあるはずだ」
アドバンズは諦めるわけにはいかない。
次期国王として、今までやって来た矜持がある。
簡単に弟に譲るわけには行かないのだ。
「本気でそれを望んでいるのですか…?」
「私以外に誰が王の器だと!」
ニーディアはちらりと隣を見上げて口角を上げている。
ウェルスタはそんな彼女に眉を寄せて首を振った。
くすくすと笑うニーディアとため息を吐くウェルスタに、なんとも言えない苦さを感じた。
言葉無くとも会話する二人に苛立った。
「そうですね。妃教育を済ませた婚約者と、自分を支持する後援者と資金。それらがあれば、ようやく王太子殿下と並ぶことができるでしょうね」
ニーディアがようやくウェルスタから目を離し、思い出したようにアドバンズに助言した。
しかし、その駒らは今のアドバンズの手にあるものは一つもない。
「後は、自身の子供。これがあれば、現王太子殿下から王位を奪還できるかもしれませんね」
「…子供?」
「王太子殿下と王太子妃殿下は子供を持つ事ができないのです」
アドバンズは希望をそこに見出した。
ウェルスタに窘められていたニーディアだったが、やはり彼女に助言を求めて正解だったとアドバンズは瞳を嬉々と輝かせた。
97
お気に入りに追加
472
あなたにおすすめの小説
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
いくら何でも、遅過ぎません?
碧水 遥
恋愛
「本当にキミと結婚してもいいのか、よく考えたいんだ」
ある日突然、婚約者はそう仰いました。
……え?あと3ヶ月で結婚式ですけど⁉︎もう諸々の手配も終わってるんですけど⁉︎
何故、今になってーっ!!
わたくしたち、6歳の頃から9年間、婚約してましたよね⁉︎
愛する人の手を取るために
碧水 遥
恋愛
「何が茶会だ、ドレスだ、アクセサリーだ!!そんなちゃらちゃら遊んでいる女など、私に相応しくない!!」
わたくしは……あなたをお支えしてきたつもりでした。でも……必要なかったのですね……。
旦那様は私より幼馴染みを溺愛しています。
香取鞠里
恋愛
旦那様はいつも幼馴染みばかり優遇している。
疑いの目では見ていたが、違うと思い込んでいた。
そんな時、二人きりで激しく愛し合っているところを目にしてしまった!?
欲に負けた婚約者は代償を払う
京月
恋愛
偶然通りかかった空き教室。
そこにいたのは親友のシレラと私の婚約者のベルグだった。
「シレラ、ず、ずっと前から…好きでした」
気が付くと私はゼン先生の前にいた。
起きたことが理解できず、涙を流す私を優しく包み込んだゼン先生は膝をつく。
「私と結婚を前提に付き合ってはもらえないだろうか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる