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舞踏会
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「リノナリザ!どうしてここに!まさか…こんなところまでつけてきたのか!?…っ」
侯爵子息アリストは、夜会で婚約者の伯爵令嬢リノナリザを見つけ、思わず声を荒げた。
周囲が何事かと此方を伺っている様子に気づき、少し気不味さを覚えた。
「あら、アリスト様。どうしてこちらに?」
「っそれはこっちの台詞だ。恥らいもなく夜会に一人で参加など…」
「パートナーはおりますけど…見えておりませんか?」
リノナリザの隣には、背が高く、鍛えた身体に暗い色味を持つ男が立っている。
パートナーと呼ぶよりは従者と言った方がしっくりくる容貌。
目の上の刀傷のせいか片目が引き攣ったようにつり上がっている。
高低差から男の見下す目線に舌打ちたくなる。
「お前は婚約者としての自覚はあるのか?誰ともしれない男を連れて歩くなど…」
「彼は私の幼馴染です。何の問題があるのですか」
「はぁ…幼馴染とはいえ異性だろう?周りにどう噂されるのかわからないのか…?」
聞き分けのない娘を持つ父親になったような気分だった。
「彼はただの幼馴染です。変な勘ぐりをなさらないで。嫉妬は見苦しいですよ」
「誰が嫉妬などするかっ!!話をすり替えるな!」
ふふっと笑い、リノナリザは男の身体に身を寄せた。
男もリノナリザの腰を抱く。
「っそれが幼馴染の距離かっ!ふざけるな」
「ふざけてなどおりません。彼は大きな怪我をして長くベッドから起き上がることができなかったのです。
今もまだふらつきが残るのでこうやってお支えしているだけですよ?」
ね?っと、目線を合わせてリノナリザと男が微笑み合う。
その視線だけの会話は『幼馴染』というには甘ったるいものだった。
「見え透いた嘘を並べてっ…その男は浮気相手なのだろう!お前のような女を我が侯爵家に入れるわけにはいかない!婚約破棄を父に訴える!!覚悟しておけ!」
アリストは自身のパートナーの肩を抱いてその場を離れた。
周囲がひそひそと囁き合う。
この噂は貴族間で直に広がる。
アリストの婚約破棄を助けるものだと確信し、薄く嗤った。
侯爵子息アリストは、夜会で婚約者の伯爵令嬢リノナリザを見つけ、思わず声を荒げた。
周囲が何事かと此方を伺っている様子に気づき、少し気不味さを覚えた。
「あら、アリスト様。どうしてこちらに?」
「っそれはこっちの台詞だ。恥らいもなく夜会に一人で参加など…」
「パートナーはおりますけど…見えておりませんか?」
リノナリザの隣には、背が高く、鍛えた身体に暗い色味を持つ男が立っている。
パートナーと呼ぶよりは従者と言った方がしっくりくる容貌。
目の上の刀傷のせいか片目が引き攣ったようにつり上がっている。
高低差から男の見下す目線に舌打ちたくなる。
「お前は婚約者としての自覚はあるのか?誰ともしれない男を連れて歩くなど…」
「彼は私の幼馴染です。何の問題があるのですか」
「はぁ…幼馴染とはいえ異性だろう?周りにどう噂されるのかわからないのか…?」
聞き分けのない娘を持つ父親になったような気分だった。
「彼はただの幼馴染です。変な勘ぐりをなさらないで。嫉妬は見苦しいですよ」
「誰が嫉妬などするかっ!!話をすり替えるな!」
ふふっと笑い、リノナリザは男の身体に身を寄せた。
男もリノナリザの腰を抱く。
「っそれが幼馴染の距離かっ!ふざけるな」
「ふざけてなどおりません。彼は大きな怪我をして長くベッドから起き上がることができなかったのです。
今もまだふらつきが残るのでこうやってお支えしているだけですよ?」
ね?っと、目線を合わせてリノナリザと男が微笑み合う。
その視線だけの会話は『幼馴染』というには甘ったるいものだった。
「見え透いた嘘を並べてっ…その男は浮気相手なのだろう!お前のような女を我が侯爵家に入れるわけにはいかない!婚約破棄を父に訴える!!覚悟しておけ!」
アリストは自身のパートナーの肩を抱いてその場を離れた。
周囲がひそひそと囁き合う。
この噂は貴族間で直に広がる。
アリストの婚約破棄を助けるものだと確信し、薄く嗤った。
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