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人形令嬢の義妹フォーリアとは、婚約者との交流の為にしぶしぶ訪れていた侯爵家で、何故か当たり前のように義姉の隣に座っていた。
義姉とは違い、表情をコロコロ変えるしよく喋る姦しい令嬢だった。
作法も知らず音を立てて茶を飲むし、許可を出す前から此方を名前で呼ぶほど無知な女だったが、しゃべらぬ人形令嬢を相手にするよりはかなりマシだった。
息の詰まる婚約者との面会も、このフォーリアのお陰である意味助かっていた。
どうしても侯爵家と縁を結ばねばならぬというのならば、このフォーリアの方がまだよかったと思っていた相手だったのだが、いざ妃候補に加え身辺調査を行うと早々に脱落した。
フォーリアは侯爵の後妻の連れ子だった。
しかも、侯爵の血を引いてはいない。
それに、侯爵もフォーリアを養子にしてはいなかった。
だから、貴族令嬢が当然身につけてしかるべき淑女の作法も知識もなかったのかと納得した。
貴族でないならフォーリアはリーヴェンスの妃に選ばれることはない。
リーヴェンスは未練も迷いも無く、フォーリアを切り捨てた。
ーーー
何度目かの夜会。
今回も未来の妃を探しに参加したのだがしくじった。
その夜会にはリーヴェンスの弟、グラハザードがいた。
王族のくせに騎士団に混じり身体を鍛えている変わり者。
そのせいか、リーヴェンスよりも身体の厚みがあるし、背も高い。
その弟が、リーヴェンスとの婚約を解消した人形令嬢を連れていた。
父は兄の婚約者だった女を弟に充てがったのだ。
口数の少ないグラハザードと人形令嬢。
無口同士で似合いだと思った。
グラハザードがパートナーに話しかけるが、相変わらず人形令嬢は何も話さない。
にもかかわらず、弟は彼女の手を引いてダンスの輪に入っていく。
ー…なるほど。
踊りで間をもたせるか。
考えたな。
リーヴェンスは人形令嬢と踊ったことは無かった。
建前として、夜会のエスコートはしたが、会場に入れば知った顔を見つけて彼女を放置していた。
弟は、人形令嬢を苦もなく舞わせた。
彼女の衣装がふわりと動きに合わせて、裾が軌道を追う。
珍しく、弟の口角があがっていた。
随分機嫌が良いようだ。
兄のお下がりの女を押し付けられて何が楽しいのかわからない。
リーヴェンスは、ふんと鼻で笑い目を逸らす。
ー…元婚約者と踊らず済んでよかった。
リーヴェンスだったら、体格の良いグラハザードほど彼女を支え、自由に舞わせることは出来なかっただろうことは理解している。
人形令嬢の舞が美しかった事は、認めなくなかった。
義姉とは違い、表情をコロコロ変えるしよく喋る姦しい令嬢だった。
作法も知らず音を立てて茶を飲むし、許可を出す前から此方を名前で呼ぶほど無知な女だったが、しゃべらぬ人形令嬢を相手にするよりはかなりマシだった。
息の詰まる婚約者との面会も、このフォーリアのお陰である意味助かっていた。
どうしても侯爵家と縁を結ばねばならぬというのならば、このフォーリアの方がまだよかったと思っていた相手だったのだが、いざ妃候補に加え身辺調査を行うと早々に脱落した。
フォーリアは侯爵の後妻の連れ子だった。
しかも、侯爵の血を引いてはいない。
それに、侯爵もフォーリアを養子にしてはいなかった。
だから、貴族令嬢が当然身につけてしかるべき淑女の作法も知識もなかったのかと納得した。
貴族でないならフォーリアはリーヴェンスの妃に選ばれることはない。
リーヴェンスは未練も迷いも無く、フォーリアを切り捨てた。
ーーー
何度目かの夜会。
今回も未来の妃を探しに参加したのだがしくじった。
その夜会にはリーヴェンスの弟、グラハザードがいた。
王族のくせに騎士団に混じり身体を鍛えている変わり者。
そのせいか、リーヴェンスよりも身体の厚みがあるし、背も高い。
その弟が、リーヴェンスとの婚約を解消した人形令嬢を連れていた。
父は兄の婚約者だった女を弟に充てがったのだ。
口数の少ないグラハザードと人形令嬢。
無口同士で似合いだと思った。
グラハザードがパートナーに話しかけるが、相変わらず人形令嬢は何も話さない。
にもかかわらず、弟は彼女の手を引いてダンスの輪に入っていく。
ー…なるほど。
踊りで間をもたせるか。
考えたな。
リーヴェンスは人形令嬢と踊ったことは無かった。
建前として、夜会のエスコートはしたが、会場に入れば知った顔を見つけて彼女を放置していた。
弟は、人形令嬢を苦もなく舞わせた。
彼女の衣装がふわりと動きに合わせて、裾が軌道を追う。
珍しく、弟の口角があがっていた。
随分機嫌が良いようだ。
兄のお下がりの女を押し付けられて何が楽しいのかわからない。
リーヴェンスは、ふんと鼻で笑い目を逸らす。
ー…元婚約者と踊らず済んでよかった。
リーヴェンスだったら、体格の良いグラハザードほど彼女を支え、自由に舞わせることは出来なかっただろうことは理解している。
人形令嬢の舞が美しかった事は、認めなくなかった。
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