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「公爵令嬢ミザリエラ!この私に魅了の力を使っていたようだな!!王族に対するなんたる侮辱!
貴様との婚約など破棄する!この女狐め!!」

今宵は、王太子と公爵令嬢ミザリエラの婚約一周年の祝の宴が用意されていた。

王太子殿下が溺愛する婚約者との記念日を祝いたい祝ってもらいたいと半ば強引に開かせたものだった。

婚約者をひたすら愛で自慢する王太子など常であり、強制的に呼びつけられた貴族たちはやや食傷気味となっていた。

ところが、今回は様相が違う。

宴の会場に飛び込んできた王太子は、突然溺愛する婚約者との婚約破棄を叫んだのだった。



「婚約破棄…」

同世代の貴族令嬢に囲まれていた公爵令嬢ミザリエラはポツリと呟いた。

「殿下。流石に冗談でも許されない類のものですわ」
「ミザリエラ様になんと言うひどい仕打ち」

ミザリエラの前に令嬢たちは盾になるように立ちはだかり、王太子から隠した。

「ふん。大方貴様らもその女狐の魅了の術にはまっているのだろう。小癪な女だ」

「ミザリエラ様は魅力的ですわ!!その存在すべてが皆を魅了してやまないのです」

そうよ!と令嬢たちから同意の声が上がる。

王太子は、自分も彼女たちの様に盲目で愚かだったのかと顔をしかめた。

「お話の途中、申し訳ありません。私は聖女の力を得たサーリアと申します。生まれは男爵家の者ですが。
私は本日、王太子殿下と面会した際に彼が魅了魔法にかけられていることに気づき、解術処置を行いました。
…聖女の名の元に、彼は間違いなく魅了されていました」

王太子の横に並び、彼の発言の補足をするようにサーリアは凛と立った。

男爵令嬢でも、聖女に認定されればその地位は王族と同等となる。
王太子と共に諸悪の根源ミザリエラに立ち向かったのだ。
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