元婚約者を抱くのは

基本二度寝

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婚約者との二人だけのお茶会。
好きな茶葉を楽しんでいた。

王宮にいる時間の殆どは勉強尽くめで、この時間だけはそれらから解放される貴重な休憩時間なのだ。


「婚約解消したい」

前触れもなく、対面に座る婚約者の王太子はそう告げた。

公爵令嬢のナタリーは、気持ち的にはこのまま即了承したいと思った。
妃教育にはうんざりしていた。
しかし、きっとその対応は今はまだ王太子の婚約者としては間違ったものだろう。

どうしてなのか理由を聞いて、眉を下げ悲しみを演じなければならない。


…面倒くさいな。

ナタリーは目を閉じ、カップに口をつけどう回答すべきか悩んでいた。


「君に落ち度はない。貴族令嬢、王太子の婚約者としても申し分ない」

「…ならばなにを理由に解消を望まれるのですか?」

こちらの返答を待たずに話を進められたのでつい質問を返してしまった。

「この国の何処かで聖女が覚醒したと情報を得たんだ」

聖国の教会本部の神官がこの国に入ったことは知っている。
まさか聖女探しの為だとは思わなかった。


「聖女は重要な役目を持った女性だ。王族に娶り、この国の手助けをしてもらいたいと考えている」

「…つまり、殿下は聖女様と結婚したいので婚約を解消したいと。」

「理解が早くて助かるよ」

にこにこと笑う王太子殿下は此方が拒否するとは考えていないようだった。

もちろん了承一択だ。


「かしこまりました。殿下ぜひ聖女様を幸せにしてくださいませ」

「君が望むのなら、側室になれるよう計らうけれど」

「いいえ。聖女様の心を不安にさせるわけにはまいりません。私のことはお気になさらず」

「そう…?困ったことがあるなら力になるから」

婚約を解消された令嬢の行く末を心配しているのだろう。

だが、ナタリーは目の前に自由を提示されて浮かれていた。

こうして、この茶会をもって王太子殿下とナタリー公爵令嬢は別の道を歩むこととなった。
国王陛下は息子の申し出に驚いたが、もとより聖女を囲え込むことを考えていた為、王太子の案に乗り、婚約は正式に解消された。



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