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六 (子息たち)

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騎士団長子息は、婚約解消されたことを告げられた。

元婚約者の彼女は新たに若い副団長と婚約した。
騎士団長は息子の愚行を相手令嬢に謝罪し、罪滅ぼしとばかりに有能な部下との仲を取り持ったそうだ。
仲睦まじい元婚約者の様子を子息に伝えると、泣きながら暴れた。
元殿下の部屋で取り押さえる際、子息に剣先を向けたのがその副団長おとこだった。


宰相子息は、婚約解消されたことを告げられた。

子息は俯いたままだった。
償い終えるまで、彼女は待っていてくれるだろうかと呟けば、無情にもすでに新たな婚約を結んだと聞かされた。
相手は、父である宰相の直属の文官らしい。
元々二人は好きあっていた。
子息が令嬢にに一目惚れして、父の地位を匂わせて半ば強引に結んだ婚約だった。
彼女は好いた男のため、脅しに屈して子息と婚約した。
その事も明らかとなり、父は子息を責めた。
知らぬ間に自分の立場を脅しの道具にされた事にも憤りを見せた。
罪人として罰を受けたあとは放逐すると宣言され、子息は静かに涙をこぼした。


魔法師団長子息は、婚約解消されたことを告げられた。

ありえないと頭を左右に振った。
令嬢から望んだ婚約だった。
あいつは俺の事を好いているから、と自信あり気だった。
すでに新たな婚約を結んだと聞かされても、ないないと笑っていた。
相手が双子の弟だと知ってようやく顔色を変えた。
令嬢は強盗に襲われたとき、助けてもらった令息の家名と顔しか覚えていなかった。
彼が双子だと知らずに婚約の打診をしたのだった。
子息は弟と間違えていると気づいていたが、婿入りし高位貴族の一員になれることを知り、誰にも言わなかった。
婚約者は自分に惚れていると自惚れてもいたが、彼女が弟のモノになると知って、初めて強い嫉妬を覚え、婚約者を愛していたと自覚した。


元王太子殿下は、自分が廃嫡されたこと、婚約解消されたことは事実かと何度も確認していた。

誰が何度肯定しても殿下は納得しない。
父に会わせろ、婚約者に会わせろ。
何度も同じことを繰り返した。
元婚約者の令嬢は、学生の身分だがすでに結婚したと告げられた。
そんなわけがない。ありえない。婚約期間もなしに。
貴族牢の牢番が、彼女の結婚式の写真を差し出すと、元殿下は震えた。
満面の笑みで男と見つめ合っている元婚約者。
男とキスをする元婚約者。
笑顔で招待客に手を振る元婚約者。
国王陛下ちちうえとハグを交わす元婚約者。

相手の男は、元婚約者を護衛していた騎士だった。
皮肉にも、王太子と婚約しなければ出会わなかった二人。
元婚約者に媚薬を仕込もうとして何度も阻んだ男だった。

浮気だ!これは浮気だ!

喉が千切れるほどに叫んでも、誰の心にも届かなかった。
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