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続・10月24日(夜)前編

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幼馴染の亜紀はどさくさに紛れて罰ゲームをさせてくる



「ちょっ!!ま、待って亜紀!!!」
「待てない」
「やだ!!待って!!ダメッ!!ま、待って!!!」
「………」

亜紀は容赦なく私を攻めてくる。


いや、私の操作しているキャラを攻めてくる。

「うぎゃぁぁ!!!」

私が操作していた。緑の恐竜が亜紀の操作している配管工の赤色のおじさんに場外に吹っ飛ばされた。
配管工のおじさん強すぎかよ……

「これで十連勝」
「ちょっとは手加減してよ!!」

パジャマ姿の亜紀と亜紀のTシャツと短パンを借りているあたし。
今日は亜紀の家でお泊まりをする事になっている。だから、少し夜更かしをして亜紀の部屋に置いてあったスマッシュ兄弟で対戦をしているんだけど……

「ちさき弱いね」
「う、うるさい!!もっかい!!もう一回やる!!」
「はいはい」

次こそは!とキャラ選択していく。

巨大な体格で地面をドスドスと素手で叩く。

「ちさき、太った?」
「あたしじゃないぞ!?!?吹っ飛ばされないように大きいキャラにした!!!」
「安直」

亜紀が小さくため息を漏らした。




「か、体が重い……上手く動かせないぞ!?」
「ちさき太ったから」
「だからあたしじゃないから!!この頑固な類人猿が重すぎるんだ!!」
「そういうキャラだからね」

亜紀が黒い棒人間を操作してあたしのキャラを攻めて攻めてゲージを貯めていく。
く、悔しすぎる……全然攻撃が当てられない。でも、あたしが操作している頑固な類人猿は力はあるはず……だからスマッシュを打ち込めば逆転を狙えるんだ!!

「あ、あきぃ……」

あたしは隣に座る亜紀に瞳をウルッとさせて(多分ウルッとしてる)上目遣いで懇願する。
亜紀が横目であたしを見て、口をへの字に変化させた。

「よし!!今だ!!!!」

頑固な類人猿を操作して黒い棒人間に向けてスマッシュを打つ。
が、頑固な類人猿の遅い動きは亜紀の操作する黒い棒人間にあっけなくかわされ背後に回り込まれスマッシュを叩き込まれた。

あんな重たそうな頑固な類人猿を黒い棒人間が軽く場外に飛ばし、画面いっぱいに頑固な類人猿が映され、そして落ちていく。

「嘘だぁぁ!!!」

目の前にあったクッションに両手をついてバシバシ叩いて項垂れた。頑固な類人猿のようだ。

「じゃあ、ちさき罰ゲームね」
「はぁ!?!?」

ガバッと隣にいる亜紀に視線を向ける。亜紀は嬉しそうに微笑んでいるが、何をされるのか恐ろしい。

「罰ゲームとか聞いてないんですけど!?!?」
「11連敗したんだから当然でしょ」
「1勝も勝てずに11連敗もしたのに、さらに罰ゲームまでさせられるなんて拷問だよ!!」

こんなに負けて悔しい思いをしてるのに罰ゲームだなんて、負けた人に優しくできないの!?テレビとかでも罰ゲームは見たことあるけど、負けたのに罰まで受けるなんて可哀想じゃないかな!?

亜紀はちょっと待ってね。と言って紙とペンを用意した。一体何を始めるんだか不安になる。

「11個の罰ゲーム考えるから」
「ちょっと待て!!!!」

あたしは慌てて静止をかけた。
亜紀はペンを持ってこちらに振り返ってきた。小首をかしげてどうしたの?って表情だ。可愛い仕草だけど、やろうとしてることはおかしいからな!?

「1試合につき1個の罰ゲームなの!?」
「当たり前でしょ?」

さも、当然というような真剣な目で見つめ返してくる。

「いや、普通は罰ゲームは一個だろ!」
「11敗したんだから11個でしょ」
「じゃあ、あたしが1勝でもしたら亜紀にも罰ゲームをさせていいのか!?」
「その場合は罰ゲームが10個になる」
「相殺システムぅ!!」

亜紀とまた勝負をして11勝したら罰ゲームは回避できるってことか。今からまた勝負をして罰ゲームを減らすか!?いや、それは11連敗してる時点でリスクが高すぎる……勝てる気がしない……

表情には出てないが嬉しそうに紙に何かを書き終えた亜紀は部屋にあるクローゼットに移動した。

「それじゃ、まずはこれ着て」

たくさんの服がかけられたクローゼットとは別の下の収納ボックスから一着の服を取り出した。

「何これ?これ着るだけでいいの?」
「とりあえず着て」

あたしは服を着るだけならいいかと思い。パパっと着替えた。その間亜紀はあたしの着替えをガン見してた。堂々とした覗きだ。いや、亜紀の部屋で着替えてるんだから覗きも何もないか……この前は恥ずかしそうにしてたのに………

一見クラシカルなワンピース。白い部分はエプロンのようだ。

「って!!!これメイド服じゃん!!なんでこんなの持ってんの!?!?」
「す、すご……すごくよく似合ってる」
「ちょっと!!しかも胸元に穴!!ハートの形した穴開いてるんだけど!?!?」
「すごく色っぽいよ」

口に手を当てて顔を赤く染めて褒めてくれるけど、やってることは変態だ。友達にこんなセクシーなメイド服を着せるなんて!まだロングスカートなだけマシだけど、これ以上のセクシーなメイド服、いやその他の服だった場合を考えればこの服はまだ健全寄りかもしれない。

「これで1個目の罰ゲーム消費ってことでいい?」
「……………いや、『お帰りなさいませお嬢様』を言うまでが1個目」
「ちょっと間があったろ!今考えたな!?メイド服を着て1個目!セリフを言って2個目だから!!」

「イジワル……」

「イジワルじゃない!!じゃないと11個も罰ゲーム消費できないだろ!!」

こんなメイド服を着て大声で叫ぶメイドなんてメイド喫茶にはいなさそうだし、本物のメイドにも失礼に当たりそう。あたしだったらこんなメイドは嫌だ。

「うゔん!!じゃあ、セリフ言えばいいんでしょ」
「うん」

こんなセリフを高校2年生のあたしが幼馴染の亜紀にいう事になるなんて恥ずかしくなってくる。

「オカエリナサイマセ、オジョーサマ」

なんの感情も表に出てこない亜紀がメガネの奥の瞳のハイライトを消した。

「全然心がこもってない。やり直し」
「言えばいいんじゃないの!?!?」
「棒読みが酷すぎるからダメ。ちゃんとやって。あと、私入ってくるところからやるから」
「じゃあ、最初っから入ってくるところからにしてよ!さっきのセリフやり損じゃん!!」


亜紀は静かに部屋から出た。







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