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12月26日 SIde涼2
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「凪沙ちゃんはどれにするー?」
「んー……マックのセットにしようかな?」
「じゃあ、私もマックにする!」
みんなでショッピングモールのフードコートにきた。ちょうどお昼時で多くのお客さんで賑わっている。
そんな中2人は並んでどこのお店にしようかなんて楽しく話しながら、人の多い通路を肩を寄せ合い歩いていて、私は2人の後ろ姿を眺めながらあとをついていく。
「涼ちゃんもマックにする?」
凪沙が楽しそうに振り返ってくる。
「あ、うん……」
3人でマックのセットを購入し、ちょうど空いたソファー席に座った。
いや、私の心が狭いんだ。それでもこの状況に私の心はざわざわと揺れ動いた。
3人なんだし自然とそうなる。だけど、私と凪沙は付き合っている。それを結は知らないだけで、悪気もないわけで……
凪沙が先に座って奥にずれると、その隣に結が座り、私は2人の向かいのソファに1人で座った。
付き合っている2人と友達1人なら、付き合っている2人が横並びに座り、友達が1人で座るのが多分一般的だと思う。結は私たちの関係を知らないから、凪沙の隣に座っただけで……
私はそんな事を考えていたから、凪沙に呼ばれている事にも気づかなかった。
「―――」
「え?」
「もー。だから、涼ちゃんもシェイク飲む?はい」
そう言って凪沙が持っているシェイクのストローをこっちに向けてくる。
ストローを咥えてチューと吸うとバニラ味の甘くて冷たいシェイクが口の中に広がった。季節外れのシェイクはすごく冷たく感じる。
「冷たい……」
「シェイクだからね。はい」
ふふっと凪沙は笑って今度はポテトを一本差し出してきた。私もセットを頼んでるからポテトついてるんだけど、とは思ったけれど……パクッと凪沙からポテトをもらう。
「……あまり拗ねないでね?」
困ったように私のことを覗き込んでくる。私が口を滑らせたばっかりに結と3人になっちゃったのに……
私の機嫌を取るためにシェイクを飲ませてくれたり、ポテトをくれたりしたの?
そんなんで私の機嫌が――……………ちょろいな私……モヤモヤとしていた私の心は凪沙にあっけなく晴らされていく。そんな自分に悔しくて、可笑しくて、誤魔化す為にテリヤキバーガーを頬張った。
「何?涼くん拗ねてるの?」
フィレオフィッシュに齧り付いて、口をもごもごさせながら結が喋った。飲み込んでから喋ってほしい、行儀が悪い。私はホットコーヒーでテリヤキバーガーを飲み込んだ。
「別に拗ねてないけど……」
「私のポテト食べる?シェイクがいい?」
「結のポテトもシェイクもいらないから」
「あ、凪沙ちゃんのが良かったの?」
シェイクで間接キスして、ポテトをあーんしてもらうなら凪沙じゃないと機嫌は良くならないでしょ。なんて、口にはしないけど無言でポテトを食べる。
「はい。凪沙ちゃん」
「何?」
結が凪沙にポテトを差し出した。
「ちょっ!!ちょっと待って!!」
私は咄嗟に立ち上がってしまう。いや、だって、結が凪沙にあーんしようとしてる?恋人同士でもないのに!
前にも凪沙が高坂にあーんしたっていうのを聞いて少しモヤとしたけれど、それを目の前で見させられるのはちょっと……いやかなりモヤっとしそうだった。
「涼くんどうしたの?」
止めたはいいけどなんて言い訳したらいいかなんて全く思いつかなかった。凪沙がクスッと笑顔になって結が差し出していたポテトを手で摘んで食べた。
「そういえば、今日はどこか行きたいところあるの?」
凪沙が話題を無理やり方向転換させた。私は静かにソファーへ再び腰を落ち着けた。
「バッシュ……は、また今度でいいや。えっとね。あ!猫カフェちょっと覗きに行っていい?外からでも見えたよね?」
「そうだね。ガラス張りで外からでも見えたね。あそこの猫みんないい子ばかりで可愛かったね」
「うんうん!また行こうね!」
「行こ行こ!」
凪沙と結が楽しそうに猫カフェについて話している。
「ちょっと、待って。何それ?凪沙と結が2人で猫カフェ行ったの?」
「うん。私がどうしても行きたいって我儘言って凪沙ちゃんについてきてもらったんだよ」
凪沙が連れ去られた日。あの日は結と会って解散した後に元彼と偶然遭遇したと聞いている。あの時に2人で猫カフェに行ったということか……
「あ、写真いっぱい撮ったんだよ?見る?」
結が携帯を取り出し見せてきた。凪沙が写っている。
凪沙が猫を触っているところ……猫は見切れている。膝に登ってきた猫に驚いている所……猫の手が写っている。猫を遠くから見つめているところ……猫はいない。
猫カフェの写真のはずなのにどう見てもメインで写っているのは、凪沙で猫がちゃんと写っているのは数枚程度だった。
結が凪沙のことを好きなのは前から知っていたし、ファンクラブにも入っているのもわかっている。それでも、これは……
ちょっとはっきりさせておいた方が良いのかもしれない。
結は凪沙の事が恋愛的に好きなのか、それともファンとして憧れの対象として好きなのか。
私は携帯を眺めて可愛い可愛いと言って、凪沙にまたカメラを向けている結を見つめる。
携帯を持つその手首を私は掴んだ。
「結。………凪沙は私のだから」
「んー……マックのセットにしようかな?」
「じゃあ、私もマックにする!」
みんなでショッピングモールのフードコートにきた。ちょうどお昼時で多くのお客さんで賑わっている。
そんな中2人は並んでどこのお店にしようかなんて楽しく話しながら、人の多い通路を肩を寄せ合い歩いていて、私は2人の後ろ姿を眺めながらあとをついていく。
「涼ちゃんもマックにする?」
凪沙が楽しそうに振り返ってくる。
「あ、うん……」
3人でマックのセットを購入し、ちょうど空いたソファー席に座った。
いや、私の心が狭いんだ。それでもこの状況に私の心はざわざわと揺れ動いた。
3人なんだし自然とそうなる。だけど、私と凪沙は付き合っている。それを結は知らないだけで、悪気もないわけで……
凪沙が先に座って奥にずれると、その隣に結が座り、私は2人の向かいのソファに1人で座った。
付き合っている2人と友達1人なら、付き合っている2人が横並びに座り、友達が1人で座るのが多分一般的だと思う。結は私たちの関係を知らないから、凪沙の隣に座っただけで……
私はそんな事を考えていたから、凪沙に呼ばれている事にも気づかなかった。
「―――」
「え?」
「もー。だから、涼ちゃんもシェイク飲む?はい」
そう言って凪沙が持っているシェイクのストローをこっちに向けてくる。
ストローを咥えてチューと吸うとバニラ味の甘くて冷たいシェイクが口の中に広がった。季節外れのシェイクはすごく冷たく感じる。
「冷たい……」
「シェイクだからね。はい」
ふふっと凪沙は笑って今度はポテトを一本差し出してきた。私もセットを頼んでるからポテトついてるんだけど、とは思ったけれど……パクッと凪沙からポテトをもらう。
「……あまり拗ねないでね?」
困ったように私のことを覗き込んでくる。私が口を滑らせたばっかりに結と3人になっちゃったのに……
私の機嫌を取るためにシェイクを飲ませてくれたり、ポテトをくれたりしたの?
そんなんで私の機嫌が――……………ちょろいな私……モヤモヤとしていた私の心は凪沙にあっけなく晴らされていく。そんな自分に悔しくて、可笑しくて、誤魔化す為にテリヤキバーガーを頬張った。
「何?涼くん拗ねてるの?」
フィレオフィッシュに齧り付いて、口をもごもごさせながら結が喋った。飲み込んでから喋ってほしい、行儀が悪い。私はホットコーヒーでテリヤキバーガーを飲み込んだ。
「別に拗ねてないけど……」
「私のポテト食べる?シェイクがいい?」
「結のポテトもシェイクもいらないから」
「あ、凪沙ちゃんのが良かったの?」
シェイクで間接キスして、ポテトをあーんしてもらうなら凪沙じゃないと機嫌は良くならないでしょ。なんて、口にはしないけど無言でポテトを食べる。
「はい。凪沙ちゃん」
「何?」
結が凪沙にポテトを差し出した。
「ちょっ!!ちょっと待って!!」
私は咄嗟に立ち上がってしまう。いや、だって、結が凪沙にあーんしようとしてる?恋人同士でもないのに!
前にも凪沙が高坂にあーんしたっていうのを聞いて少しモヤとしたけれど、それを目の前で見させられるのはちょっと……いやかなりモヤっとしそうだった。
「涼くんどうしたの?」
止めたはいいけどなんて言い訳したらいいかなんて全く思いつかなかった。凪沙がクスッと笑顔になって結が差し出していたポテトを手で摘んで食べた。
「そういえば、今日はどこか行きたいところあるの?」
凪沙が話題を無理やり方向転換させた。私は静かにソファーへ再び腰を落ち着けた。
「バッシュ……は、また今度でいいや。えっとね。あ!猫カフェちょっと覗きに行っていい?外からでも見えたよね?」
「そうだね。ガラス張りで外からでも見えたね。あそこの猫みんないい子ばかりで可愛かったね」
「うんうん!また行こうね!」
「行こ行こ!」
凪沙と結が楽しそうに猫カフェについて話している。
「ちょっと、待って。何それ?凪沙と結が2人で猫カフェ行ったの?」
「うん。私がどうしても行きたいって我儘言って凪沙ちゃんについてきてもらったんだよ」
凪沙が連れ去られた日。あの日は結と会って解散した後に元彼と偶然遭遇したと聞いている。あの時に2人で猫カフェに行ったということか……
「あ、写真いっぱい撮ったんだよ?見る?」
結が携帯を取り出し見せてきた。凪沙が写っている。
凪沙が猫を触っているところ……猫は見切れている。膝に登ってきた猫に驚いている所……猫の手が写っている。猫を遠くから見つめているところ……猫はいない。
猫カフェの写真のはずなのにどう見てもメインで写っているのは、凪沙で猫がちゃんと写っているのは数枚程度だった。
結が凪沙のことを好きなのは前から知っていたし、ファンクラブにも入っているのもわかっている。それでも、これは……
ちょっとはっきりさせておいた方が良いのかもしれない。
結は凪沙の事が恋愛的に好きなのか、それともファンとして憧れの対象として好きなのか。
私は携帯を眺めて可愛い可愛いと言って、凪沙にまたカメラを向けている結を見つめる。
携帯を持つその手首を私は掴んだ。
「結。………凪沙は私のだから」
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