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第2章 領地編1~新たな出会い~
第29話 ウキウキお泊まり会
しおりを挟むさて、これからウキウキお泊まり会だ。
最初は帰ってからまた来る予定だったんだけど、ノアが数日は結界の様子を見た方がいいって外泊の許可を取ってくれたのだ。
どうやってかって? ノアお得意の魔術で……です。
え? 私? ほら、私って力仕事は得意だけど繊細なことは苦手なタイプだから……。
ノアが風の魔術を応用して声をお父様とお母様、執事のセバスに届けてくれて、晴れてお泊まりが決定しました! イエーイ!!
温泉最高だし、浴衣だし、畳だし……。布団に和食、手持ち花火なんかもさせてもらって、もう最高なんて言葉じゃ足りない!
「そういえば、結界の応急処置の方法は大丈夫そう?」
お泊まりが決まって色々と楽しんだあと、布団でゴロゴロしながらノアに聞く。この感じ、久しぶりだ。
「うん。うまくいったよ。結界が大きくなりすぎて魔物の生態系が危ういのも、父さんとセバスは予測済みだったみたい。
あっちでどうにかしてくれるって」
「あっ、そう……なんだ……」
いや、やらかす私が悪いんだけど、地味にへこむ。
そうか、予測済みだったか。そりゃそうだよね。山に穴を開けるどころか消滅させる娘だもんね。
「父さん、笑いすぎて息できなくなってた」
ん? 笑いすぎ?
「なんか、やることが毎回さすがにここまではないだろ……って予想通りになるのが面白かったみたい。あと、さすが俺の娘って言ってたよ」
「それ、褒めてないやつでしょ」
少しやさぐれた気持ちで言えば、ノアは笑う。
「拗ねないでよ。姉さんはフォクス領を救ったんだから」
「ノアやみんながいなければできなかったけどね」
「確かに、そうかもしれない。でも、姉さんが言い出さなければ、フォクス領は消えていた。姉さんだからみんなが協力したんだよ。自信、持ちなよ」
何てことだ。弟が私より大人だ。これが9歳だと? 私が前世で木登りして、虫を集めて、川に飛び込んで遊んでいた年齢と同じとは思えない。
まぁ、環境が全然違うんだけどさ。
それでも、今現在同じ環境で育った私とのこの差はなんだ? 嫡男と娘の違いだけの話じゃない。絶対に他に何か要因があるはずだ。
「ねぇ、何でノアはそんなに大人なの? 私より年上みたいなんだけど」
「えっ、だって姉さんと一緒にいたら普通にこうなるよね?」
何と、私が原因だったのか! 嘘でしょ? ……あっ、何か色々と思い当たってきた。
「私が色々とやらかしたせいか……」
がくりと肩を落とせば、ノアに頭を撫でられる。
……くそう。姉としての威厳がない。いや、私は親しみやすさで勝負しているからいいんだ。
「僕は、姉さんの自由奔放なところ、好きだよ。きっとみんなもそうだと思う。ビックリすることもたくさんあるし、正直呆れることだってある。
それでも、姉さんといるとわくわくするんだ」
褒められてる……のか? なんかよく分かんないけど、ノアが好きだって言ってくれるなら、まぁいいか。
「私もノアが大好き! ずっと、ずっと一緒にいたい!!」
「……ジンよりも?」
「…………へ?」
えっ、ばれてる? 何で? そんなに分かりやすかった?
「好きなんでしょ? ジンのこと」
「えっと……、いや、あの……」
か、覚悟がまだできてないんだけど! それに、弟に恋ばなとか恥ずかしい。 これは、一先ず逃げの戦法で……。
「な、なんか眠くなって来ちゃったなぁ。あは、あはは。あはははは……。おやすみっっ!!」
布団をばさりと頭からかぶり、必殺狸寝入りをしていれば本当に眠くなってきて、気がついたら次の日の朝だった。
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