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動き出した者たち
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「それで、お話はなんでしょう?」
国王から再び赤い封筒で呼び出しを受け、アルトは王宮へ来ていた。急な呼び出しに思い当たるものは特にない。
「…シャルノア嬢の居場所に目処がたちそうと息子から報告があってな。」
「ほう。思っていた以上にバルド様は優秀でありましたか…。」
顎を抑えながら、感心したように頷いている。
「それと同時に報告があったんじゃよ。息子に情報を流したのは、ユリーナ様じゃ。」
「は?なぜ彼女が?」
驚くアルトの表情を見てモルトは顔をしかめる。
「わしも驚いた。報告をくれたことに感謝すらしておる。アルト、邸の使用人を見直した方が良いぞ。ユリーナ嬢の手のものが情報を流してきたらしい。護衛騎士の機密情報まて漏れておる。危険じゃ。」
「…君たちに知られたことが問題なんだが…感謝せねばだな。ユリーナにそこまで執着されるとは思ってなかったよ。」
「彼女もそれなりにアルトへの気持ちがあったんじゃないか?シャルノア嬢に厳しいのも意味があったのかもしれないね。」
モルトの言葉にアルトは複雑な表情になる。ユリーナを妻としと見れなかったのは事実だが、もう少しやりようがあったということなのだろうか…
「…それでも私の気持ちは変わらないよ。妻は1人で十分だ…子どもたちにとっても。」
「それは…わしが無理強いしてすまなかった。少しでもそなたの力になりたかったんだ。」
アルトの辛い気持ちも理解しているモルトとしては、ユリーナとの再婚生活が上手くいけばと願っていたのに、世の中うまく回らないものである。
「ありがとう。君の気持ちは分かっているさ。」
優しく笑い返すアルトに、学園時代を思い出してしまうモルト。国王なんて重役につくと、思うように身動きがとれないのが悩みの種である。
「だが、娘のことは別件だからな。君は手出し無用だよ。」
あくまでも王子の力で、国王の助けを借りずに、と念押しするモルトであった。
同じ頃、カリニャンの街には最近見慣れない人たちがうろつくようになっていた。観光地でもないこの街に、見知らぬ顔が現れるのは謎である。朝の買い出しの段階でこの変化を怪しんでいたフィアーノは、店に出てきたシャルノアに声をかける。
「王家が勘付いたのかもしれないぞ。シャル、用心するに越したことはない。」
そう言い、手元に渡されたのは魔道具の腕輪。
「これは?」
「変装用の魔道具だ。顔までは変えれないが、髪や目の色は変化できる。ないよりマシだろ?」
「えっ。何で持ってるんですから、そんなの?」
「ひ・み・つ。俺も昔はよくコレに助けてもらったんだ。はめてみ?」
言われるがままに腕につけたシャルノア。髪色は落ち着いたこげ茶色になり、モンティ家特有のトパーズ色の瞳も茶色に変化する。
「どう?これならすぐさまシャルとは気づかないだろう?イメチェンだ。」
得意気になるフィアーノにシャルノアは戸惑う。
「何か動きがあったんですか?こんな変装まで…。」
「王家が人探しをする時は騎士団が出ることが多い。リュカ君とはまた違う団員なんだろうが、おそらくこの街を捜索している。この街は滅多によそから若者は来ないからな。何かしら情報を得たんだろう。」
「そんな…王家に見つかりにくい場所で選んだのに。」
そう言いながら両腕を抱えるシャルノアは小さく震えていた。その様子を見たフィアーノはフッと笑いシャルノアの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「大丈夫だ。誰もシャルが店で働いてるなんて思わないから。こうやって色も変えたんだ。気づかないさ。貴族の娘とは別人、街娘にでもなったつもりで、いつも通り過ごしてたら問題ない。」
ほんとに?と視線で訴えてくるシャルノアに、彼は安心させるように笑いかけた。
「団員だけで、王子本人が現れてないってことは他にも探してる場所かあるのさ。まだ絞りきれてないんだろう。おえらいさんが現れたらこの街では大騒ぎになる。その時に隠れれば問題ない。」
フィアーノの力強い言葉に安心したシャルノアであった。
国王から再び赤い封筒で呼び出しを受け、アルトは王宮へ来ていた。急な呼び出しに思い当たるものは特にない。
「…シャルノア嬢の居場所に目処がたちそうと息子から報告があってな。」
「ほう。思っていた以上にバルド様は優秀でありましたか…。」
顎を抑えながら、感心したように頷いている。
「それと同時に報告があったんじゃよ。息子に情報を流したのは、ユリーナ様じゃ。」
「は?なぜ彼女が?」
驚くアルトの表情を見てモルトは顔をしかめる。
「わしも驚いた。報告をくれたことに感謝すらしておる。アルト、邸の使用人を見直した方が良いぞ。ユリーナ嬢の手のものが情報を流してきたらしい。護衛騎士の機密情報まて漏れておる。危険じゃ。」
「…君たちに知られたことが問題なんだが…感謝せねばだな。ユリーナにそこまで執着されるとは思ってなかったよ。」
「彼女もそれなりにアルトへの気持ちがあったんじゃないか?シャルノア嬢に厳しいのも意味があったのかもしれないね。」
モルトの言葉にアルトは複雑な表情になる。ユリーナを妻としと見れなかったのは事実だが、もう少しやりようがあったということなのだろうか…
「…それでも私の気持ちは変わらないよ。妻は1人で十分だ…子どもたちにとっても。」
「それは…わしが無理強いしてすまなかった。少しでもそなたの力になりたかったんだ。」
アルトの辛い気持ちも理解しているモルトとしては、ユリーナとの再婚生活が上手くいけばと願っていたのに、世の中うまく回らないものである。
「ありがとう。君の気持ちは分かっているさ。」
優しく笑い返すアルトに、学園時代を思い出してしまうモルト。国王なんて重役につくと、思うように身動きがとれないのが悩みの種である。
「だが、娘のことは別件だからな。君は手出し無用だよ。」
あくまでも王子の力で、国王の助けを借りずに、と念押しするモルトであった。
同じ頃、カリニャンの街には最近見慣れない人たちがうろつくようになっていた。観光地でもないこの街に、見知らぬ顔が現れるのは謎である。朝の買い出しの段階でこの変化を怪しんでいたフィアーノは、店に出てきたシャルノアに声をかける。
「王家が勘付いたのかもしれないぞ。シャル、用心するに越したことはない。」
そう言い、手元に渡されたのは魔道具の腕輪。
「これは?」
「変装用の魔道具だ。顔までは変えれないが、髪や目の色は変化できる。ないよりマシだろ?」
「えっ。何で持ってるんですから、そんなの?」
「ひ・み・つ。俺も昔はよくコレに助けてもらったんだ。はめてみ?」
言われるがままに腕につけたシャルノア。髪色は落ち着いたこげ茶色になり、モンティ家特有のトパーズ色の瞳も茶色に変化する。
「どう?これならすぐさまシャルとは気づかないだろう?イメチェンだ。」
得意気になるフィアーノにシャルノアは戸惑う。
「何か動きがあったんですか?こんな変装まで…。」
「王家が人探しをする時は騎士団が出ることが多い。リュカ君とはまた違う団員なんだろうが、おそらくこの街を捜索している。この街は滅多によそから若者は来ないからな。何かしら情報を得たんだろう。」
「そんな…王家に見つかりにくい場所で選んだのに。」
そう言いながら両腕を抱えるシャルノアは小さく震えていた。その様子を見たフィアーノはフッと笑いシャルノアの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「大丈夫だ。誰もシャルが店で働いてるなんて思わないから。こうやって色も変えたんだ。気づかないさ。貴族の娘とは別人、街娘にでもなったつもりで、いつも通り過ごしてたら問題ない。」
ほんとに?と視線で訴えてくるシャルノアに、彼は安心させるように笑いかけた。
「団員だけで、王子本人が現れてないってことは他にも探してる場所かあるのさ。まだ絞りきれてないんだろう。おえらいさんが現れたらこの街では大騒ぎになる。その時に隠れれば問題ない。」
フィアーノの力強い言葉に安心したシャルノアであった。
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