46 / 100
バルド頑張る
しおりを挟む
「…と言う訳じゃ。婚約も謝罪も、すべてはシャルノア嬢を見つけることからじゃ…。」
アルトからの声を息子に伝えたモルトは、大きくため息を吐いた。長年、小さな繋がりでなんとか保たれていた友情も、今度ばかりは切れるかもしれない。そんな危機感を感じていた。バルドとシャルノアが結婚すれば、自分とアルトも親戚になれると期待していたが、今となってはそれも儚い夢であったと思うしかない。
(行方不明のシャルノア嬢を見つけるなんて、こいつには無理だろう…。)
一時の感情に流されて、未来の皇太子妃を追いやってしまった息子。前途多難な様子に、この先の不安を感じずにはいられない。
「行方不明というのは…何かしら、特に手がかりもないのですか?」
「あれば見つかると思ったのであろうな…モンティ家からは何も聞いておらぬ。」
既に詰んでいる…そう思わずにはいられない。バルドは必死に記憶を辿るも、シャルノアのことをあまりにも知らな過ぎる。何が好きで、どういった考えをするのか、そんな些細なことですら彼には分からなかった。
(けれど、今は探し出すしかないのであろう…)
自身に与えられた難解な課題も、自分が起こしたことへの償いならばそれに従うまで。
「母上や姉様たちにも協力して貰います。」
1人では無理だと悟ったバルドは知恵を絞る。
「うむ。なんとしても見つけ出すのじゃ。頼んだぞ。」
王家の行方はバルドに託された。
別室にて、王女たちや王妃にも同じ内容が伝えられた。
「ああ…心配だわ。シャルノア嬢がいくら優秀だとしても、世の中そんなに甘くないわ。」
「…本当にモンティ家は何も知らないのかしら?娘が心配じゃないの?」
「案外、王家に捕まらないように逃げてたりして?」
シャルロッテの勘は冴えていた。多角的に考えれば、行方不明という言葉を言葉通りに捉えて良いのか迷うところだ。
「何でも良い。ヒントになるようなコト、シャルノア嬢についてのこと、思いついたら教えて欲しい。」
父との話し合いを終えたバルドは早速王女たちに助けを求めた。1人では難しくとも、数人集まれば文殊の知恵である。アメリアはテーブルの上に地図を広げた。
「私は特に思いつくようなことはないわ。捜索の手を広げるにしても、どこから始めましょうか…」
「辺境伯のところは?確か、シャルノア嬢と仲が良いのよね?」
シャルロッテの言葉に、バルドは考える。自分なら見つかりたくない相手に対してどう行動するだろうか…?
「お茶会前までは辺境に居たんだろ?身内のような所に隠れているなら、行方不明とは言わないだろう。」
「そうね。行方不明とまで言われるのだもの。どこか想像つかない所に…。」
「…モンティ伯爵やリュカ様に探りを入れてみましょうか?口は堅くとも何かしら動揺してヒントが出るかもしれないわ。」
「母上にも頼りましょう。巧妙な手口は母上が1番得意のハズだわ。」
「モンティ家の侍従やメイドにツテはないかな?行方不明になるまでの足取りが分かれば…」
兄妹で協力してやるべきことを整理していく。悪い部分が目立っていたバルドだが、本来は物事を冷静に観る優秀な人間である。姉アメリアも妹シャルロッテも、自ら率先して動くことには長けている。
(必ず見つけ出してみせる。やり直しのためにもここが頑張りどころだ。)
気合いを入れたバルド。同じ頃、落ち着いた店内で店番をしていたシャルノアは2度くしゃみをした。
(誰かに噂されてるのかしら…嫌な感じ。)
ブルッと軽く身震いをした彼女は、嫌な考えを振り払うかのように頭を何度かふり、仕事の続きに戻るのであった。
アルトからの声を息子に伝えたモルトは、大きくため息を吐いた。長年、小さな繋がりでなんとか保たれていた友情も、今度ばかりは切れるかもしれない。そんな危機感を感じていた。バルドとシャルノアが結婚すれば、自分とアルトも親戚になれると期待していたが、今となってはそれも儚い夢であったと思うしかない。
(行方不明のシャルノア嬢を見つけるなんて、こいつには無理だろう…。)
一時の感情に流されて、未来の皇太子妃を追いやってしまった息子。前途多難な様子に、この先の不安を感じずにはいられない。
「行方不明というのは…何かしら、特に手がかりもないのですか?」
「あれば見つかると思ったのであろうな…モンティ家からは何も聞いておらぬ。」
既に詰んでいる…そう思わずにはいられない。バルドは必死に記憶を辿るも、シャルノアのことをあまりにも知らな過ぎる。何が好きで、どういった考えをするのか、そんな些細なことですら彼には分からなかった。
(けれど、今は探し出すしかないのであろう…)
自身に与えられた難解な課題も、自分が起こしたことへの償いならばそれに従うまで。
「母上や姉様たちにも協力して貰います。」
1人では無理だと悟ったバルドは知恵を絞る。
「うむ。なんとしても見つけ出すのじゃ。頼んだぞ。」
王家の行方はバルドに託された。
別室にて、王女たちや王妃にも同じ内容が伝えられた。
「ああ…心配だわ。シャルノア嬢がいくら優秀だとしても、世の中そんなに甘くないわ。」
「…本当にモンティ家は何も知らないのかしら?娘が心配じゃないの?」
「案外、王家に捕まらないように逃げてたりして?」
シャルロッテの勘は冴えていた。多角的に考えれば、行方不明という言葉を言葉通りに捉えて良いのか迷うところだ。
「何でも良い。ヒントになるようなコト、シャルノア嬢についてのこと、思いついたら教えて欲しい。」
父との話し合いを終えたバルドは早速王女たちに助けを求めた。1人では難しくとも、数人集まれば文殊の知恵である。アメリアはテーブルの上に地図を広げた。
「私は特に思いつくようなことはないわ。捜索の手を広げるにしても、どこから始めましょうか…」
「辺境伯のところは?確か、シャルノア嬢と仲が良いのよね?」
シャルロッテの言葉に、バルドは考える。自分なら見つかりたくない相手に対してどう行動するだろうか…?
「お茶会前までは辺境に居たんだろ?身内のような所に隠れているなら、行方不明とは言わないだろう。」
「そうね。行方不明とまで言われるのだもの。どこか想像つかない所に…。」
「…モンティ伯爵やリュカ様に探りを入れてみましょうか?口は堅くとも何かしら動揺してヒントが出るかもしれないわ。」
「母上にも頼りましょう。巧妙な手口は母上が1番得意のハズだわ。」
「モンティ家の侍従やメイドにツテはないかな?行方不明になるまでの足取りが分かれば…」
兄妹で協力してやるべきことを整理していく。悪い部分が目立っていたバルドだが、本来は物事を冷静に観る優秀な人間である。姉アメリアも妹シャルロッテも、自ら率先して動くことには長けている。
(必ず見つけ出してみせる。やり直しのためにもここが頑張りどころだ。)
気合いを入れたバルド。同じ頃、落ち着いた店内で店番をしていたシャルノアは2度くしゃみをした。
(誰かに噂されてるのかしら…嫌な感じ。)
ブルッと軽く身震いをした彼女は、嫌な考えを振り払うかのように頭を何度かふり、仕事の続きに戻るのであった。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
白い結婚 ~その冷たい契約にざまぁを添えて~
ゆる
恋愛
政略結婚――それは貴族の娘にとって避けられない運命。美しく聡明なルシアーナは、シュヴァイツァー侯爵家の冷徹な当主セドリックと婚約させられる。互いの家の利益のためだけの形だけの結婚のはずだった。しかし、次々と巻き起こる陰謀や襲撃事件によって二人の運命は大きく動き出す。
冷酷で完璧主義と噂されるセドリックの本当の顔、そして家族さえも裏切るような権力争いの闇。やがてルシアーナは、ただの「道具」として扱われることに反旗を翻し、自分の手で未来を切り拓こうと決意する。
政略結婚の先に待つのは、破滅か――それとも甘く深い愛か? 波乱万丈のラブストーリー、ここに開幕!
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる