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バルド頑張る

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「…と言う訳じゃ。婚約も謝罪も、すべてはシャルノア嬢を見つけることからじゃ…。」

アルトからの声を息子に伝えたモルトは、大きくため息を吐いた。長年、小さな繋がりでなんとか保たれていた友情も、今度ばかりは切れるかもしれない。そんな危機感を感じていた。バルドとシャルノアが結婚すれば、自分とアルトも親戚になれると期待していたが、今となってはそれも儚い夢であったと思うしかない。

(行方不明のシャルノア嬢を見つけるなんて、こいつには無理だろう…。)


 一時の感情に流されて、未来の皇太子妃を追いやってしまった息子。前途多難な様子に、この先の不安を感じずにはいられない。


「行方不明というのは…何かしら、特に手がかりもないのですか?」

「あれば見つかると思ったのであろうな…モンティ家からは何も聞いておらぬ。」

既に詰んでいる…そう思わずにはいられない。バルドは必死に記憶を辿るも、シャルノアのことをあまりにも知らな過ぎる。何が好きで、どういった考えをするのか、そんな些細なことですら彼には分からなかった。

(けれど、今は探し出すしかないのであろう…)

自身に与えられた難解な課題も、自分が起こしたことへの償いならばそれに従うまで。

「母上や姉様たちにも協力して貰います。」

1人では無理だと悟ったバルドは知恵を絞る。

「うむ。なんとしても見つけ出すのじゃ。頼んだぞ。」


王家の行方はバルドに託された。



 別室にて、王女たちや王妃にも同じ内容が伝えられた。


「ああ…心配だわ。シャルノア嬢がいくら優秀だとしても、世の中そんなに甘くないわ。」

「…本当にモンティ家は何も知らないのかしら?娘が心配じゃないの?」

「案外、王家に捕まらないように逃げてたりして?」

シャルロッテの勘は冴えていた。多角的に考えれば、行方不明という言葉を言葉通りに捉えて良いのか迷うところだ。


 「何でも良い。ヒントになるようなコト、シャルノア嬢についてのこと、思いついたら教えて欲しい。」

父との話し合いを終えたバルドは早速王女たちに助けを求めた。1人では難しくとも、数人集まれば文殊の知恵である。アメリアはテーブルの上に地図を広げた。

「私は特に思いつくようなことはないわ。捜索の手を広げるにしても、どこから始めましょうか…」

「辺境伯のところは?確か、シャルノア嬢と仲が良いのよね?」

シャルロッテの言葉に、バルドは考える。自分なら見つかりたくない相手に対してどう行動するだろうか…?


「お茶会前までは辺境に居たんだろ?身内のような所に隠れているなら、行方不明とは言わないだろう。」

「そうね。行方不明とまで言われるのだもの。どこか想像つかない所に…。」

「…モンティ伯爵やリュカ様に探りを入れてみましょうか?口は堅くとも何かしら動揺してヒントが出るかもしれないわ。」

「母上にも頼りましょう。巧妙な手口は母上が1番得意のハズだわ。」

「モンティ家の侍従やメイドにツテはないかな?行方不明になるまでの足取りが分かれば…」

兄妹で協力してやるべきことを整理していく。悪い部分が目立っていたバルドだが、本来は物事を冷静に観る優秀な人間である。姉アメリアも妹シャルロッテも、自ら率先して動くことには長けている。

(必ず見つけ出してみせる。やり直しのためにもここが頑張りどころだ。)

気合いを入れたバルド。同じ頃、落ち着いた店内で店番をしていたシャルノアは2度くしゃみをした。

(誰かに噂されてるのかしら…嫌な感じ。)

ブルッと軽く身震いをした彼女は、嫌な考えを振り払うかのように頭を何度かふり、仕事の続きに戻るのであった。
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