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ブランシェはシェルター

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「なになに?何の話?」

戻ってきたシャルノアが2人に絡む。少し緊張感のあるような空気を遠目から感じていたが、近づいてみると冗談も言い合ってだいぶ打ち解けている。

「ん?父上の話してたトコ。カリニャンでどんな暮らししてたのか気になんない?」

「気になる、気になる。フィアーノさん知ってるんですか??」

「そりゃ知ってるけど…話したら後が怖いなぁ。」

そう言いながら笑うフィアーノ。シャルノアとしては、父とフィアーノの関係性も気になるところ。
 リュカはフィアーノと目配せをして、話を変えてくれたことへの感謝を告げる。


「じゃ、そろそろ帰るわ。フィアーノさん、よろしくね。俺は気になるから、父上に聞いてみるよ。」

ニヤッと笑うリュカは、帰宅してからフィアーノの秘密を確認するつもりのようだ。

(ま、アルト様なら上手く話してくれるだろう。)

構わない、と笑いながらフィアーノはリュカを見送るのだった。


「じゃ。シャル、しっかり用心しろよ。」

「はいはい。ご心配なく。」

「心配だけど、ナナやフィアーノさんがなんとかするだろうって思ってる。」

「ひどいなぁ。私だってちゃんとするょ。」

気軽に話す感じはやはり兄妹なのだろう、仲良しである。




「良い兄ちゃんだな。やっぱりアルト様に似てるわ。」

「そうですか?昔から一緒に遊んでたので、仲は良いと思いますけど。」


妹の知らないところで、心配して、気遣って、家族を大事にしてるんだなってのが伝わってきた。

(羨ましいなあ。…家族か。)

自分にはないものだなあ、としみじみしてしまうフィアーノ。リュカが、父親に聞いたことで、自分に対する目が変わらないと良いけれど…



「シャル、さっき兄さんから聞いたけどさ。ここ辞められたら困んだから、王子には見つかんなよ。」

「えっ。」

(兄様に聞いたのか…心配いらないのに。)

「辞めませんよ。カリニャンまで王子が来るハズないですから。」

「まぁ、この街にもこの店にも縁はないハズだがな…何があるかは分かんないから、注意しとけよ?」

「分かりました…ありがとうございます。」

(王家に見つかるハズないからこの街を選んだのに…知られてない方が気が楽だったかもな。)


 フィアーノさんにいらない気を遣わせてるんだな、と気づいたシャルノア。やっとカリニャンの街での生活に慣れ、自分の足で歩いていける、と思っていた。けれど、結局周りの人を巻き込んで、1人じゃ全然ダメで…自分はまだまだ一人前には程遠いんだなと落ち込み始めたシャルノア。


そんなシャルノアの様子を見て、フィアーノは苦笑いした。自分に厳しく他人に優しく。シャルには反対の意味で使って欲しいな。

「ほら、なに、シュンっとしてるんだよ。お前は見つかんないよーにかくれんぼしときゃ良いだけだろ?この店に現れても、俺が追い出してやるから気にすんな。」

 フィアーノはそう声をかけながら、俯くシャルの頭をポンっと叩いて励ました。

(大きな手。兄様でも父様でもない人なのに。この人の手は暖かくて好きだな。)


 家族ではないけれど、信用できて、側にいて安心できる人。フィアーノさんの側は、とても居心地が良い。

 シャルノアにとって、心を休ませるための空間。それが、ここブランシェ。王家から逃げるために選んだ選択肢が、いつの間にか彼女にとってはなくてはならないものになっていた。
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