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警告

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 パッ。

(これは…手紙?何故…)


団員と一緒に訓練を終えたリュカは、報告を上げるため騎士団本部の長のもとを訪れていた。その帰り道、パッと目の前に現れたシャボン玉がパチンッと割れ、中から紙切れを受け取る。


【緊急。訓練場へ来られたし。】


暗号のような走り書きの文字に怪しく思うも、緊急となると内容が気になって仕方がない。
 早々と訓練場に足を向けたリュカは周りを見渡す。人気のない時間帯、イタズラだったのだろうか…と思い始めた時、ふと、木の影から、近衛騎士団の団長シュナイダーの姿が現れた。


「君か。突然どうしたんだ?この間の件なら片付けたハズだぞ?」

 そう、魔王到来の際。もとい、シャルノアを傷つけた連中にお返しをした時、近衛騎士団としてはまともな人間がいた、と安心した。顔見知りになったつもりはないのだが、王宮に何度も足を運んでいるうちにすれ違うようになり、同じ団長の立場で話をするようになっていた。


「別件です。近衛から漏れたと知られたくないので、こっそりとですみません。まだ公にはされてませんが、先日、王子は男爵令嬢に見切りをつけました。今後は王女たちと共に再び婚約者選考に移るそうですが…おそらく、シャルノア嬢に目をつけているかと。」

「マジか。案外目が覚めるのが早かったんだな…王女となるとやっかいだな。国王や皇后もか?」

「おそらく。1度は仲違いされてましたが、どうやらバルド様の方から謝罪し和解したようで。王家が皆、協力的になっておられる様子なので早く知らせるべきかと思った次第です。」

「助かるよ。シャルはいち早く隠れてはいるけど、そんな状態とはな…こっちとしても対策が練れる。ありがとう、シュナイダー。」


満面の笑みで礼を言うリュカ。シュナイダーは思う。モンティ家は皆、顔が良い分魅力的である。シャルノア嬢もそうであったが、リュカも。凛々しい顔を見せつつ、全力の笑顔など、受ける側にも影響が大きい。


「いえ、これくらいしか出来ませんので…」


近衛騎士として、騒動の際シャルノア嬢を庇い続けることが出来なかった後悔はシュナイダーの心の奥底にも残っていた。現段階での近衛は前よりもマシになってはいるものの、王子に逆らえない点は同じである。

(また近衛に嫌な役が回らなければ良いが…)


そう言い申し訳なさそうにしているシュナイダーを見て、リュカは肩を叩いた。


「なんなら第1に移動しても構わないよ?近衛騎士がやりづらいなら。」

根が真面目なシュナイダーは、王家の指示に従うだけの近衛騎士は疑問が多いだろう。嫌々団長になっているのだとすぐ想像がつく。

(移動すれば肩の荷も楽になるだろうに。)

そう思いながら、シュナイダーに礼を伝え帰路につく。




 帰宅したリュカは早速アルトに報告する。


「そうか…再び…。」

いつもと違い、険しい表情になる。


(これ以上のわがままは許さないょ、モルト。)

普段は温厚なアルト。
1度怒ると、すぐには収まらず、しばらく続く。
子を守る親は強いのである。

ぶつぶつとその場で対策を頭の中で描き始めたアルト。昔からこれが始まると誰にでも容赦がない。

「あ、リュカ…シャルに知らせてくれる?一応耳に入れておいた方が良いだろう。」

そう言われ、魔道具である指輪と平民が着るような地味な服を渡される。

「今シャル、ここにいるから。平民だけど、私の知り合いがやってるお店。モンティ家に王家の影がつく前に会っておいで。」

改めて出される新情報に少しついていけてないリュカだったが、シャルに会えるならと、意気揚々に準備を進めている。

渡された地図とショップカード。

リュカにとっては初めての街、カリニャン。

ノワール亭に似ていると聞いたお店、ブランシェ。

シャルノアの落ち着いた日々が徐々に賑やかになり始める予兆であった。
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