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モンティ家の憂鬱

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 その頃、王都モンティ家の邸では…

メイドその1
(ナナがいなくなって寂しいわ。あの子の主人自慢を聞くのは楽しみだったのに。お嬢様の姿も見られなくて…あのキレイな容姿を私たちの腕でさらに磨くのはメイドの腕の見せどころなのよ。最近は普通のお仕事しかなくなって。お嬢様戻って来られないかしら…)

モンティ家専属御者
(最近はみなさんお出かけが減られて。おぼっちゃまは自力で動かれるし、ご当主は紋章の入ったこの馬車を嫌がられる。唯一の利用がお嬢様で私は幸せモノだったのに、どこに行ってしまわれたのか…)

メイドその2
(目の保養が足りない…モンティ家一家が揃ったあの瞬間、形に残したかった。キラキラした美形揃いの皆様。2人じゃ足りないの。男性陣の中に紅一点お嬢様がいる事でより一層増すのに。あぁ。イケメンのお客様来たりしないかしら…)

モンティ家のコック
(俺の見せ場が…やっとお嬢様のためにこだわりスイーツ始めたのに、しばらく居ないなんて。ナナちゃんと2人でティータイム、そこに並ぶ俺の作品。笑顔で伝えられるお礼。幸せなあの瞬間が、一瞬で終わってしまうなんて。)


などなど、使用人一同お嬢様ロスが深刻です。


そして、ここにさらに深刻な方が。

「旦那様、そろそろ進めて頂かないと今日の分が終わりませんよ?しっかりして下さい。」

「だってさ、シャルがいなくなってもうひと月だよ?ねをあげて帰ってくるのかと思いきや、報告には楽しそうな所ばかり。俺も混ざりたい…」

「そんなしょっちゅう親戚のおじさんは様子を見に行きませんよ。何も助けを求められていないのに。」

「それなんだよな。変装したら怪しまれるしな。俺が動くと王家にすぐチクられるしな…」

(国王に好かれてるからですけどね…)

今日もまた拗ねておられる。
はぁ。。。と大きくため息を吐く、執事のジョン。当主の面倒は自分の仕事とはいえ、最近ずっとこの調子なので参ってしまう。
 ずっと王宮で皇太子妃になる為にと努力してこられたシャルノアお嬢様。幼い頃、辺境へとこっそり家出していた彼女の姿が懐かしい。当時、シャルノアの書き置きを見つけたのは彼である。父親の不在時に執務室に丁寧に置かれた手紙。キレイな文字が所々滲んでいて、彼女が泣いている姿を想像して柄にもなく焦ってしまった。すぐさま迎えに行った当主の焦りようは、自分の動揺が伝わってしまったのかもしれない。お嬢様と一緒に戻られた後も、王宮に送る事しかできず、不甲斐ない親だと悩まれていた。やっと王宮縛りから解き放たれ、辺境で家族水入らずで過ごされたのに。

(きっと辺境での家族の時間が楽し過ぎたんだな。)

 お嬢様のいないモンティ家は指示機を失った車のよう。当主もリュカぼっちゃまも有能なのに、お嬢様という柱を失うと迷子のようにさまよい、いらない傷を増やすばかり。ジョンは祈る。

(どうかお嬢様。そろそろ平民生活は終えられてこの邸に戻ってきてください…)




ガンッ ガンッ 
カッ。
ガコッ…

今日もモンティ家の訓練場は悲惨な状態。
なぜならば、魔王リュカが滞在しているから。

本来彼は騎士団所属なので王宮に通うべき人間なのだが、王子が許せず、その王子をサポートしていた近衛騎士団はもってのほか。辺境に行く前に指導してやった3班の騎士の保護者から苦情がきたらしく、厳重注意を受けた。本来なら謹慎や減給ものだが、状況を把握している上司はリュカの気持ちを理解してくれた。近衛騎士団長のシュナイダーの忠言もあるだろう。
 ただ、苦情への対応を形にはせねばならないので、自主的自宅謹慎並びに有給消化である。

 怒りが収まらないリュカは、自宅の練習用の模型を相手にストレス発散。実力十分なので、木刀でみね打ちにも関わらず破壊していく。

(シャルもナナも元気にしてっかなー?そろそろ遊びに行っても良い頃合いじゃね?父上より先を狙わねば。)

 それぞれ複雑な思いを抱え、モンティ家の人々は本日も憂鬱な日々を過ごしておられます。
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