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新しい生活
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「おはようございます!」
朝早く、シャルノアはモリーの家を訪れていた。
モンティ家にいる間も、シャルノアは朝日が登り始める頃には起きだし、その日の勉学の準備、前日の復習などを済ませてから王宮へ向かう支度をしていた。なので、自由の身になってからも、早起きは身体に染み付いている。
「今日も元気だねー。若いのに珍しい。はぃ、コレ。今日は市場の日だから、沢山だよ。」
そう言われて渡されたお買い物メモは、確かにいつもより長い。
「買うものは多いが、全部市場内で済むハズだよ。ただ、人だかりが出来ていたら、既に売り切れになったものも出て来るかもしれん。今日は時間との勝負じゃ。期待して待ってるよ。」
ホホホホッと笑うモリーおばあちゃんはどこか楽しそうである。シャルノアは腕まくりをして気合いを入れた。
「頑張って参ります。」
カリニャンの町に来て既に10日。ナナは近くの救護院での下働き兼補助の仕事が決まり、毎日忙しくしている。すぐ近くで医療の現場が見られるということもあり、新しい知識を得ては、家で復習している。包帯の巻き方に始まり、倒れた人への対処の仕方や、眼球での状態確認など確実に役立つものを身につけている。
(私も負けてられない。)
「お、シャル今日も早いな。おはよう。」
「おはようございます、フィアーノさん。」
長身でスラっとしたスタイルの黒髪男性。シャルノアの働くお店のコック兼雇われ店長である。面接を受けた時、あまりに若く、ゆるい感じの雰囲気に面を食らったものだ。ただ、働き出すと印象はガラッと変わった。
フライパンや包丁を持つときは真剣な眼差しで、いつも手際よくサラッと料理を作り上げる。彼は新鮮な食材を求めて毎朝市場に通っており、モリーおばあちゃんの買い物をするうちに何度も出会うようになった。市場に一緒に向かうのも今日が初めての事ではない。
「今日の買い物はどんな感じ?」
「今日は時間との勝負です。効率よく全てのモノをゲットせねばなりません。」
助言を貰うため買い物リストを渡す。
「おー、今日はばあちゃん欲張ったな。肉屋は在庫隠してるから後回しで良い。野菜はまとめてルドックのトコだな。んー、競りで魚介系落としてからルドック経由の肉屋だな。帰るまで冷やしてもらっとくと良いぞ。今日の競りは爺ちゃんもいるから、若い子には甘いハズ。」
「いつもアドバイスありがとうございます。全品ゲット目指します!」
ハハッと笑うフィアーノはシャルノアの頭をポンっと撫でる。頑張れの言葉の代わりなのだ。
その後、フィアーノの言う通りに回り、荷物を抱えて戻るとモリーおばあちゃんはすごく喜んでくれた。ロイおじさんだと半分しか買えないこともあったようで、ダメ元でリストにたくさん書いていたらしい。お駄賃だよ、と焼き立て甘めのスコーンを貰い、1つ食べてから職場に向かう。
カフェ.ブランシュ
こじんまりとした建物で隠れ家的な雰囲気の料理屋だ。
接客業で探していたこともあるが、メニューがシャルノアの好きなノワール亭に似ていて選んだ。驚いたことに、店長フィアーノは見習い時代をノワール亭で過ごし、料理の腕を磨いたという。
クマさんのような雰囲気のノワール亭の旦那さんと、スタイリッシュに振る舞うフィアーノが一緒にいる所は想像出来ないが、ブランシュで食べる賄いはノワール亭のような懐かしい味がした。遠い辺境のシラーの街と、このカリニャンが繋がっていることが不思議である。
「おはようございます!」
「「おはよう」」
店長フィアーノと店舗マネージャーのヴァンが出迎える。
ブランシュは元々別にオーナーがいたが、彼が別の仕事を始める為にフィアーノとヴァンを呼び出し店を譲ったらしい。店長フィアーノも落ち着いた紳士のような雰囲気のヴァンも整った容姿でモテる。その為、ブランシュは開店当初から女性客が多く、フィアーノは何とかして客層を増やしたかった。そのために募集をかけたら見事にシャルノアが引っ掛かり、とても喜ばれた。
ここカリニャンは職人の世界なので、食事処には男性も多く集う。何故か女性ばっかりになる店内を避けられていたが、最近少しずつ男性も増えてきた。
同じ空間じゃなければ大丈夫だと思う、というシャルノアの意見を取り入れてテラス席を用意したのがきっかけだ。
「いらっしゃい、今日もカウンター開いてますょ。」
「ありがとう。」
程よい距離感の接客と、自分を覚えていてくれるという安心感。着実に男性客は付き、シャルノアのファンも増えてきた。
(人気なのも困るんだがな…)
今日もフライパンを片手にフロアを様子見していたフィアーノは心の中で呟いた。
朝早く、シャルノアはモリーの家を訪れていた。
モンティ家にいる間も、シャルノアは朝日が登り始める頃には起きだし、その日の勉学の準備、前日の復習などを済ませてから王宮へ向かう支度をしていた。なので、自由の身になってからも、早起きは身体に染み付いている。
「今日も元気だねー。若いのに珍しい。はぃ、コレ。今日は市場の日だから、沢山だよ。」
そう言われて渡されたお買い物メモは、確かにいつもより長い。
「買うものは多いが、全部市場内で済むハズだよ。ただ、人だかりが出来ていたら、既に売り切れになったものも出て来るかもしれん。今日は時間との勝負じゃ。期待して待ってるよ。」
ホホホホッと笑うモリーおばあちゃんはどこか楽しそうである。シャルノアは腕まくりをして気合いを入れた。
「頑張って参ります。」
カリニャンの町に来て既に10日。ナナは近くの救護院での下働き兼補助の仕事が決まり、毎日忙しくしている。すぐ近くで医療の現場が見られるということもあり、新しい知識を得ては、家で復習している。包帯の巻き方に始まり、倒れた人への対処の仕方や、眼球での状態確認など確実に役立つものを身につけている。
(私も負けてられない。)
「お、シャル今日も早いな。おはよう。」
「おはようございます、フィアーノさん。」
長身でスラっとしたスタイルの黒髪男性。シャルノアの働くお店のコック兼雇われ店長である。面接を受けた時、あまりに若く、ゆるい感じの雰囲気に面を食らったものだ。ただ、働き出すと印象はガラッと変わった。
フライパンや包丁を持つときは真剣な眼差しで、いつも手際よくサラッと料理を作り上げる。彼は新鮮な食材を求めて毎朝市場に通っており、モリーおばあちゃんの買い物をするうちに何度も出会うようになった。市場に一緒に向かうのも今日が初めての事ではない。
「今日の買い物はどんな感じ?」
「今日は時間との勝負です。効率よく全てのモノをゲットせねばなりません。」
助言を貰うため買い物リストを渡す。
「おー、今日はばあちゃん欲張ったな。肉屋は在庫隠してるから後回しで良い。野菜はまとめてルドックのトコだな。んー、競りで魚介系落としてからルドック経由の肉屋だな。帰るまで冷やしてもらっとくと良いぞ。今日の競りは爺ちゃんもいるから、若い子には甘いハズ。」
「いつもアドバイスありがとうございます。全品ゲット目指します!」
ハハッと笑うフィアーノはシャルノアの頭をポンっと撫でる。頑張れの言葉の代わりなのだ。
その後、フィアーノの言う通りに回り、荷物を抱えて戻るとモリーおばあちゃんはすごく喜んでくれた。ロイおじさんだと半分しか買えないこともあったようで、ダメ元でリストにたくさん書いていたらしい。お駄賃だよ、と焼き立て甘めのスコーンを貰い、1つ食べてから職場に向かう。
カフェ.ブランシュ
こじんまりとした建物で隠れ家的な雰囲気の料理屋だ。
接客業で探していたこともあるが、メニューがシャルノアの好きなノワール亭に似ていて選んだ。驚いたことに、店長フィアーノは見習い時代をノワール亭で過ごし、料理の腕を磨いたという。
クマさんのような雰囲気のノワール亭の旦那さんと、スタイリッシュに振る舞うフィアーノが一緒にいる所は想像出来ないが、ブランシュで食べる賄いはノワール亭のような懐かしい味がした。遠い辺境のシラーの街と、このカリニャンが繋がっていることが不思議である。
「おはようございます!」
「「おはよう」」
店長フィアーノと店舗マネージャーのヴァンが出迎える。
ブランシュは元々別にオーナーがいたが、彼が別の仕事を始める為にフィアーノとヴァンを呼び出し店を譲ったらしい。店長フィアーノも落ち着いた紳士のような雰囲気のヴァンも整った容姿でモテる。その為、ブランシュは開店当初から女性客が多く、フィアーノは何とかして客層を増やしたかった。そのために募集をかけたら見事にシャルノアが引っ掛かり、とても喜ばれた。
ここカリニャンは職人の世界なので、食事処には男性も多く集う。何故か女性ばっかりになる店内を避けられていたが、最近少しずつ男性も増えてきた。
同じ空間じゃなければ大丈夫だと思う、というシャルノアの意見を取り入れてテラス席を用意したのがきっかけだ。
「いらっしゃい、今日もカウンター開いてますょ。」
「ありがとう。」
程よい距離感の接客と、自分を覚えていてくれるという安心感。着実に男性客は付き、シャルノアのファンも増えてきた。
(人気なのも困るんだがな…)
今日もフライパンを片手にフロアを様子見していたフィアーノは心の中で呟いた。
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