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逃げ道準備

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 食事を終えた後、街中のお店をぶらりと周る。古着屋さんでそれぞれに合わせた服を選んでみたり、帽子屋さんで鏡を見ながら合わせてみたり、おもちゃ屋さんの前では3人でああでもないこうでもないといろいろ試しながら遊んでいた。

 「久しぶりにこんなにはしゃいだかも。」

歩き疲れた3人は広場のベンチでひと休み。小さい子たちが噴水の前で走り回っている。程よく暖かい昼下がり。

(こんなにのんびりした時間になるなんてね。)

少し前までは勉強のために王宮に通っていたシャルノア。
外出することも、ナナと話す時間をゆっくりとることも久しぶりである。

(バカルド様に感謝しなきゃだわ。)


ゆっくりと街探索を楽しみ、邸に戻ると、見覚えのある馬が2頭止まっている。

「「おかえりー」」

王都からお迎えの父兄が到着していたようで、シャルノアたちの馬車を待っていた。

「バズ!久しぶり!」
「おう、リュカか。しばらく見ない間にたくましくなったな。」
「これでも騎士団所属なんで。」

ドヤ顔のリュカ兄が少し可愛く見える。バズと並んで、ほぼ身長差がないので大きな顔したくなるのもよく分かる。

「世話になるな、バズ。迎えに来てなんだが、私たちもゆっくり出来そうだから、しばらくお邪魔させて貰うよ。」

聞くと、王都での仕事を済ませ、兄リュカは休暇届けを出してきたらしい。

(父様たちもバズに会いたかったんだろうな。)

その日の夕食はモンティ家勢揃いで、ロウ叔父様、バズと会食となった。途中ワインも運ばれてきたので、久しぶりにドンチャン騒ぎになることは想定内である。まだ成人ではないシャルノアは仲間はずれなので残念だ。ナナと共に先に自室へと戻ることになった。
「おやすみなさい。」
「「「おやすみ」」」



シャルノアの足音が遠のいたのを確認して、話しかける。
「それで、王家の様子はどうなんだ?」

訝しげに聞くロウ叔父様の心配はもっともである。婚約者候補を外し、男爵令嬢を迎える。この選択が今の王家にとって容易ではないことは皆想像がつく。

「王子以外はなんとかシャルを引き戻せないかとあちこち働きかけてますよ。特に女性陣は必死ですね。」

こちらに向かう前にも、父アルトは王妃につかまり、リュカは王女たちに声をかけられまいと必死に避けた。

「きっと王子の発言は想像してなかっただろうからな。シャルがそのまま皇太子妃教育を受ければ、王女たちとも協力し合って未来は安泰だったと思うよ。」

王家の苦労を知っているアルトは、王子の身勝手な行動の影響を受ける王女たちも不憫だと感じている。

「まあ、今更ですけどね。俺は王子許す気ないんで。」
「私も王家にシャルはやらないよ。そう伝えてきたしね。」

似たもの親子を見ながら、バズは聞く。

「んで、諦めそうなの?王家の連中は。」

「「…いゃ…」」

「何しとんじゃ、アルト!断ち切らねばまた呼ばれるぞ?男爵令嬢がなんとかなりそうなら別だが…」

「無理でしょうね…。」
「だろうな。」

「誰が見てもそうなんだ、王子が諦めさえすれば王家が圧力かけてくるぞ?モンティ家で対処できるのか?」

「…まだ力が足りないですね。」

「どうするんだ?」

「……。」

ロウ叔父様の指摘は事実で、バズの問いに答えられずにいる。

「シャルをうちの子にするか?バズの嫁にでも、わしの養子でも。方法はあるぞ?」

「はぁ?」「えっ?」

リュカは信じられない、と怒り出し、
バズは驚いて言葉が続かない。

アルトだけは想像していたようで、ロウ叔父様を見つめていた。

「どうしようもなくなったら、お願いします。しばらくはシャルの気持ちも大切にしたいし、様子見ですね。」
「王家の動き次第じゃな。協力はする。いつでも頼れ。」
「ありがとうございます。」

話は終わり、とでも言うかのようにアルトたちはお酒の進みが早くなる。年長者たちは昔話や近況情報など話があらゆる所に飛ぶので、リュカたちはついてくのがやっとだった。
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