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3.魔法学院3年生 前編
(73).隠し通せるか⁈
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翌日、魔物騒動で夜会を中断してしまったため、改めて3カ国で昼食の機会がもたれた。食事の前に、陛下は両国に謝罪し、説明責任があると、対応した魔法師団を代表してハロルドが今回の騒動の詳細を伝えた。
ただ、発生源がどこなのか、何が目的なのか、原因究明が難しいことも伝えられた。ガンダルグ国側に座る、クロエの表情は厳しい。
ヴィレス国側から手が上がり、代表と思われる長髪の青年が被っていたローブを取り、顔を見せた。
「我が名はテシャン。ヴィレス国の魔法塔で研究しているものだが、貴国に確認したい。聖女は見つかっていたのか?」
彼の発言に、セウブ国陣営は目を見張る。
「ここ数年、現れていないと聞いていたのだが?昨日魔物が暴れたハズの土地は完全にキレイになっていた。どなたが対処されたのだ??」
想像していなかった発言で、陛下とランベールは視線を合わせ、ハロルドを伺う。気づいたハロルドは軽く頷き、テシャンに向き合った。
「我が魔法師団には精霊と契約出来た者が多数いる。その中の数名に対応させました。」
「なるほど、数名で、と… 我が部下は昨日、目撃している。森の中で1人の女性が魔法の光の中央にいた、と。精霊たちの主人とすれば、その方が聖女様ではないのか?何故頑なに秘密にしているのでしょうか?」
テシャンはランベールに向けて言葉を放っている。
明らかなる挑発に、対応策を頭の中で練る。彼の影にはテオドールが控えていた。
この昼食会は彼らを調べるチャンスでもある。
「その目撃した部下というのはどなたでしょう?教えて頂いても?」
(テオ、これからヴィレス国の陣営に近づくから、出来る範囲で調べてくれ。)
「彼です。」
テシャンに招かれ、1人の青年が話し出す。
「私は昨夜、王太子様と、その婚約者様が森の復旧をされる姿を見ていました。壮大な魔法、即座に癒されていく森。同じ魔法使いなので分かりますが、莫大な魔力が必要だと思われます。今代の聖女様は、次期皇太子妃様の事ではないのですか?」
青年と目を合わせながら、ランベールはニコッと笑った。
「確かに、我が婚約者は聖女様のようだよね?キレイで可愛い、そして魔法の才能に優れている。」
(惚気か?)
そう思ったのは、近くにいたジルベールだけではないハズ。
「ま、違うんだけどね。…聖女様はこの度も現れなかったが、光魔法の使い手は数人いてね。その中の1人は皇太子妃の友人なんだ。いろいろあって、精霊同士も仲が良くてね。昨夜はその光の精霊にも手助けしてもらっていた。
私の精霊もね。だから、精霊たちの主がソフィアのように見えたんじゃないかな?」
ランベールの説明に、ヴィレス国側は疑心暗鬼になり、セウブ国側は納得の表情になる。
「昨夜は光、水、土の精霊の力を借りている。君は気づいていなかったが、あの場には皇太子妃の護衛もいた。彼の精霊は水だ。僕の精霊が土。ちなみに我が婚約者の精霊は風と闇だ。昨日は出番がなかったんだよね。」
ランベールは番人テオドールと契約しているので、いざとなれば土の精霊は呼べる。
護衛のクレイグの名を出した事で、精霊は分散出来たし、ソフィアへの疑惑の目は遠のいた。誰もが、乗り切ったと確信していた。
「そうでしたか。詳しい説明ありがとうございます。部下の勘違いでしたね…聖女様に会えるのではと期待していたのですが。」
「申し訳ない。我が国も気持ちは同じですから。」
ランベールは自身の席に戻り、ひと息つく。
それ以降両国からの発言はなかった為、説明を終了とし、その場には食事が並び始めた。
(やはり、聖女と名乗れば、余計な輩が増えるな。)
ハロルドの表情が3割り増しで怖くなった瞬間だった。
この場にソフィアを呼ばずに済み、セウブ国の面々の心の中は安堵でいっぱいだった。
(食事会が早く終われば良いのに…テオの結果が気になって仕方ない。)
食事を進めながら、ランベールは気が急いていた。
ただ、発生源がどこなのか、何が目的なのか、原因究明が難しいことも伝えられた。ガンダルグ国側に座る、クロエの表情は厳しい。
ヴィレス国側から手が上がり、代表と思われる長髪の青年が被っていたローブを取り、顔を見せた。
「我が名はテシャン。ヴィレス国の魔法塔で研究しているものだが、貴国に確認したい。聖女は見つかっていたのか?」
彼の発言に、セウブ国陣営は目を見張る。
「ここ数年、現れていないと聞いていたのだが?昨日魔物が暴れたハズの土地は完全にキレイになっていた。どなたが対処されたのだ??」
想像していなかった発言で、陛下とランベールは視線を合わせ、ハロルドを伺う。気づいたハロルドは軽く頷き、テシャンに向き合った。
「我が魔法師団には精霊と契約出来た者が多数いる。その中の数名に対応させました。」
「なるほど、数名で、と… 我が部下は昨日、目撃している。森の中で1人の女性が魔法の光の中央にいた、と。精霊たちの主人とすれば、その方が聖女様ではないのか?何故頑なに秘密にしているのでしょうか?」
テシャンはランベールに向けて言葉を放っている。
明らかなる挑発に、対応策を頭の中で練る。彼の影にはテオドールが控えていた。
この昼食会は彼らを調べるチャンスでもある。
「その目撃した部下というのはどなたでしょう?教えて頂いても?」
(テオ、これからヴィレス国の陣営に近づくから、出来る範囲で調べてくれ。)
「彼です。」
テシャンに招かれ、1人の青年が話し出す。
「私は昨夜、王太子様と、その婚約者様が森の復旧をされる姿を見ていました。壮大な魔法、即座に癒されていく森。同じ魔法使いなので分かりますが、莫大な魔力が必要だと思われます。今代の聖女様は、次期皇太子妃様の事ではないのですか?」
青年と目を合わせながら、ランベールはニコッと笑った。
「確かに、我が婚約者は聖女様のようだよね?キレイで可愛い、そして魔法の才能に優れている。」
(惚気か?)
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「ま、違うんだけどね。…聖女様はこの度も現れなかったが、光魔法の使い手は数人いてね。その中の1人は皇太子妃の友人なんだ。いろいろあって、精霊同士も仲が良くてね。昨夜はその光の精霊にも手助けしてもらっていた。
私の精霊もね。だから、精霊たちの主がソフィアのように見えたんじゃないかな?」
ランベールの説明に、ヴィレス国側は疑心暗鬼になり、セウブ国側は納得の表情になる。
「昨夜は光、水、土の精霊の力を借りている。君は気づいていなかったが、あの場には皇太子妃の護衛もいた。彼の精霊は水だ。僕の精霊が土。ちなみに我が婚約者の精霊は風と闇だ。昨日は出番がなかったんだよね。」
ランベールは番人テオドールと契約しているので、いざとなれば土の精霊は呼べる。
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「そうでしたか。詳しい説明ありがとうございます。部下の勘違いでしたね…聖女様に会えるのではと期待していたのですが。」
「申し訳ない。我が国も気持ちは同じですから。」
ランベールは自身の席に戻り、ひと息つく。
それ以降両国からの発言はなかった為、説明を終了とし、その場には食事が並び始めた。
(やはり、聖女と名乗れば、余計な輩が増えるな。)
ハロルドの表情が3割り増しで怖くなった瞬間だった。
この場にソフィアを呼ばずに済み、セウブ国の面々の心の中は安堵でいっぱいだった。
(食事会が早く終われば良いのに…テオの結果が気になって仕方ない。)
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