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2.魔法学院2年生

(48).学院長室での密会

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 離宮で両親と昼食を取ったシンシアは再びジルベールのもとを訪ねる。薬が効いていれば、彼はひと眠りしているはずである。
 起きてすぐに会った人間の言う事を聞くようになるため、奴隷を雇う時に重宝する薬である。


 侍女には予め伝えてあるので、怪しまれずに部屋に入ることができた。彼は机に突っ伏すような体勢で寝ている。効き目としては数分で目覚めるはずなのでそろそろ目覚めるであろう…


 しばらくすると、スクッと起き上がり辺りを見渡す。シンシアと目が合ったジルベール。


「私が誰か分かるわね!今日から協力者として、いろいろ動いて貰うわよ。」


無言で頷く彼にシンシアは口元を緩める。



「まずは今日の夜、学院長室の金庫から試験の問題内容を写してきなさい。答えがあればそれもね。決して見つからないように。」

「了解。」




 その日の夜、暗闇の中ジルベールの足音だけが響く。学院長室に入ると、中には学院長であるエリクとランベール、アルフレッドが待っていた。


「父上からの情報は正しかったな。やはり試験問題を狙っていたか…」

「相手がジルで良かったよ、ホントに。薬の判別もできて、騙す演技までできるんだから。」


そう言ってみんなで笑い合う。




 数時間前、シンシアの動きを怪しんでいたジルベールは、部屋にいる際にソフィアから貰ったカフスを付けたままにしていた。案の定、食事の際に薬物に反応してくれたので気づくことが出来たのである。

 レオに頼んで、ノアに協力してもらい、どんな毒なのか、購入先まで調べ尽くした。シンシアはまだ泳がせておきたい、と自ら囮役として動いていたのである。
 事前にランベールやエリクたちには伝えてあったため、こうして学院長室で落ち合うことになった。



「うちの隠密の話だと協力者はクレバリー伯爵らしい。あの家には学生の娘もいるから、そこから漏れたんだろう。」

「自分じゃなくて薬を使ってまで人を動かす所があくどい。よく皇女なんて名乗れるよ。」

「彼女はまだ計画があるようなので、試験終わりまではこのまま様子をみるつもりです。膿は出し尽くして貰わないと。」

「レイチェル嬢は自ら皇女に協力するようには見えないんだがな。また薬を使うのか、令嬢自身が動くのか見たい所だな。」

ランベールの言葉にアルフレッドやジルベールが頷いた所で、側にいたエリクが口を開いた。


「ランベール、この場にノア君やテオドール君を呼べるじゃろうか?皆に伝えておきたいことがあってのう。彼らの協力も必要じゃ。」


「テオはすぐに呼び出そう。ジル、レオに頼めるかい?」

「はい。すぐに。」


レオが飛び立って間もなく、ノアが学院長室へ到着するとテオドールによって皆にお茶が配られた。


「先生、お話というのは?」

「実はな、わしはノア君たちと同じ番人なんじゃよ。」



「「「えっ?」」」「「は?」」



「いゃ、でも先生は人間ですょね?ノアたちとは違うんじゃ?」

「番人というのは役割の名前であって、種類の名前ではないんじゃよ。ノア君たちのように精霊になることもあれば、わしのように人間の身体に魂として入ることもある。もしかしたら動物なんかもアリかものう。」


「そんな至る所に番人がいちゃ、たまりませんよ。」

「ほっほっほ。そうかのう?わしが番人だと自覚したのはこの学院長室へ入った時なんじゃ。この部屋の扉をくぐった時に、【課題:守護】が発動してのう。ソフィア嬢を守ることが番人としての役割じゃ。ノア君やテオドール君、その周りを見ても彼女が軸になっておるからのう。彼女を守ることがこの国の平和に繋がるのじゃよ。」


「守る、というのは何かしら敵が想定されてるんですか?」

「おそらく、創造主が考えておるはずじゃ。本人かもしれぬし、 他の番人がでてくるやもしれぬ。だからこそ、今信頼できる人間は繋がっていた方が良いと思ってな。」


エリクの話を受けて、ノアは今までの原作を思い出す。
ヒロインのサラを守るために出てきた人物の中に2人の王子はいた。学院長はどうだっただろうか?学院での出来事は学生同士で話し合われていたため、目立った動きはしてないように思える。
 だとすれば、番人として今回存在しているのは何かしら意図があってのことだろう。今まで関わってきて良い人物なのは理解しているので、番人と言われても拒否感はない。4人目の番人である。


「確かに、今ここにいる面子は信用できる。ソフィーは自分の力を普通だと思っているから危機感がない。まぁ、その分敵意にも気づかず潰してたりするからある意味最強なんだがな。」


呆れたように話すノアは今日は青年姿で話をしている。
フクロウ姿は締まらないので、最近はソフィー専用にしている。ソファに座るメンバーはノアに同意していた。


「あれだけ精霊王に好かれて、魔法も特化してるのに無自覚だもんな。アル、どんな幼少期過ごしたらあぁなるんだ?」


ランベールがアルフレッドに問う。


「母親がいなかったからな。昔は父も俺も構ってやれないことが多くて、心開いてくれるまで時間かかったんだよ。寂しさを、無自覚に魔法を覚える楽しさで紛らわしていたんだと思う。それで最強少女誕生さ。」

「その分、身を守ることや周りを頼ることには慣れてないのかもしれぬのう。」

「危ない所に自ら進んで突っ込んでいきそうですもんね。」

テオドールの言葉に皆思い当たる事があるようだ。


「それは追々、ランに任せましょ。これからは。」


含みをもたせた台詞でアルフレッドがランベールを揶揄う。


「そうですね。王太子妃に正式になれば兄上が頼りでしょう。」


ニコッと笑うジルベールに、複雑な思いになるランベールだった。弟の想いが分かるだけに申し訳なく思う。



「皇后の次に高貴な身分になるんだ。狙われることも増えるだろう。彼女を守ることに勿論力を尽くすつもりだ。皆にも支えて欲しい。


そう言って頭を下げたランベールは、この国の王太子らしい表情をしていた。それを見た周りは皆当然だというかのように頷いた。


「よし、まずは邪魔者皇女をおっばらいましょうか。」


アルフレッドの言葉に、皆でこれからの計画を相談し合うのであった。
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