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2.魔法学院2年生
(37).お忍びデート
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魔道具店を出た2人はランチを取るために小さなカフェに入る。ソファで区切られたような空間は個室のようでもあり、景色も楽しめるように位置が調整されていた。
「よくこのお店知ってましたね?」
可愛いらしい外見と家具の感じ、人気店なんだろうなと推測する。
「せっかくなら人気のトコ行ってみたいからね。騎士たちに聞いてみた。」
少し恥ずかしそうに語るランベール様は変装姿もあいまって幼く見える。案内され、メニューの多さにも驚いた。
(迷うなーコレかコレかな…)
絞ったものの決めれずにいると、ランベールが指差す。
ソフィアの気にしているメニューの2つだった。
「どっちも気になってるでしょ。頼んで半分こしよ。」
結果、どちらも絶品でした。
分け合うなんて申し訳ないと思っていたのに、気づけば夢中になって食べていた。
お会計までスマートに済ませているランベールを見て、誰かと付き合うってこんな感じなのかな…と想像していたことに気づき、1人恥ずかしくなって顔を赤らめ首を振る。
「あとは、お土産?精霊たちは何がお好みなのかな?」
ランベールの声に我にかえる。エンギルに確認すると、みんな見事にお菓子である。
「屋台を周りながら見てみようか。気になったら試食できるし」
そう言われながら市場の中を見て回る。
イソールの喜びそうなキラキラした飴やカルディナ好みのチュロスはすぐに見つかる。
エンギルはソフィアと一緒にキョロキョロして、好みのものが見当たると先導してくれる。
(ふくろう案内便利)
周りきる頃にはソフィアの手にもリンゴ飴があった。
お土産も揃ってホクホク顔だ。
帰りの馬車に乗ろうとした時、人影の中にチラッと濃紺の髪が見えた気がした。
(ジル先輩がこんな街中こないよね。)
馬車のなかった、エンギルは疲れたのか、ソフィアの膝の上で丸くなっている。
ふとランベール様を見ると、大切なものを見るような温かい眼差しでこちらを見ていた。
(恥ずかしい…なんか話題っ)
「今日はありがとうございました。いろいろ見れて楽しかったです。」
「それはどーも。僕も楽しかったよ。フィーってこれからも呼んでいい?」
「…少し恥ずかしくはありますが。良いですよ?」
返答を聞いてランベールは満面の笑みを浮かべる。
(ランベール様の破壊力がすごい…もぉ、近い。緊張してきた。顔赤いの気づかれちゃう…)
ソフィアの無表情は昔からで、貴族ならではの体面もあり表情には出ないのだが、心の中はしっかり暴れていた。
(少しは意識してくれるようになったかな?アルに感謝しないと。)
しっかりと学院の寮まで送ってもらったソフィアは、エンギルと精霊たちの待つ自分の部屋に戻る。
みんなに出迎えられて、お土産を渡すとわぃわぃと賑やかになり、喜んで貰えたようだ。
ノアはソフィアの腕に留まり、頬を寄せて甘えてくる。
「なんか疲れてなーい?」
「楽しかったけど、いろいろドキドキして疲れたかも…」
ソフィアはクッションに顔をうずめながら答えた。しばらくすると、ノアを抱えてモフモフに癒される。
(女の子らしい表情になってきたな…これはジル、頑張んないと…)
密かにソフィアの恋心に勘づくノアだった。
ソフィアがランベールとお出かけしてる間、ノアはジルベールのもとを訪ねていた。
レオに会いたかったのもあるし、しばらく中庭に行けてないので様子見に来ていた。
中庭のいつもの木の上に、ジルベールはレオといた。
寝転がって考え事をしているようで、ノアが来たことに気づくと、起き上がり腕を伸ばしてきた。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「みんな元気だよ。ここに来れなくて残念がってる。」
「…フィアは夜会の噂が凄かったからな。」
レオと一緒にジルから餌を貰い、近況報告をしあう。
ノアとしてはこの場所が気に入っているのでそろそろ会うのも解禁で良いんじゃ、と思っているのだが…
「ジル、留学の件はどうするの?」
「うーん。行く方向で前向きには考えてるよ。父上の話も納得できたからな。ま、まだ来年だしな。」
久しぶりに和気藹々とおしゃべりして、散歩してから部屋に戻る途中ちょうどソフィアが戻ってくる所が見えた。
(てっきりジルベールとくっつくと思ってたんだけどな…)
ノアと別れたジルベールは寮にも王宮にも戻らず、街へと来ていた。
視野を広げる、そのためにもとここ最近の日課である。
街中の店に入り、ご飯を食べながら耳を傾ける。
平民の話、王宮勤めの兵士たちの話、店の店員のおばちゃんとお客との話。
ジルベールの顔は知られていないので、ここの人たちには王子であることも気づかれない。何度か来ているうちに顔見知りもでき、毎日の楽しみにもなってきている。
(ここでの情報収集は今後に役立つハズ)
ジルベールは王太子の兄を補助する立場として、自ら出来ることを模索している最中だった。
自らの足で、耳で、情報を集める。噂というものがどれだけ当てにならないかは、ジルベール自身よく知っている。王宮では特に、有力貴族による情報操作が活発なのである。
さらには、街中で聞く情報にも嘘とホントが混ざり合っている。伝達途中で変化したのか、意図的に流されているのか、どの情報を信じるかは自分自身の判断である。
自分の理解を正確にするためにも、あらゆる所から情報を得ること。
そして、正しく判断できるよう視野を広げること。
これが今のジルベールの課題である。
「よくこのお店知ってましたね?」
可愛いらしい外見と家具の感じ、人気店なんだろうなと推測する。
「せっかくなら人気のトコ行ってみたいからね。騎士たちに聞いてみた。」
少し恥ずかしそうに語るランベール様は変装姿もあいまって幼く見える。案内され、メニューの多さにも驚いた。
(迷うなーコレかコレかな…)
絞ったものの決めれずにいると、ランベールが指差す。
ソフィアの気にしているメニューの2つだった。
「どっちも気になってるでしょ。頼んで半分こしよ。」
結果、どちらも絶品でした。
分け合うなんて申し訳ないと思っていたのに、気づけば夢中になって食べていた。
お会計までスマートに済ませているランベールを見て、誰かと付き合うってこんな感じなのかな…と想像していたことに気づき、1人恥ずかしくなって顔を赤らめ首を振る。
「あとは、お土産?精霊たちは何がお好みなのかな?」
ランベールの声に我にかえる。エンギルに確認すると、みんな見事にお菓子である。
「屋台を周りながら見てみようか。気になったら試食できるし」
そう言われながら市場の中を見て回る。
イソールの喜びそうなキラキラした飴やカルディナ好みのチュロスはすぐに見つかる。
エンギルはソフィアと一緒にキョロキョロして、好みのものが見当たると先導してくれる。
(ふくろう案内便利)
周りきる頃にはソフィアの手にもリンゴ飴があった。
お土産も揃ってホクホク顔だ。
帰りの馬車に乗ろうとした時、人影の中にチラッと濃紺の髪が見えた気がした。
(ジル先輩がこんな街中こないよね。)
馬車のなかった、エンギルは疲れたのか、ソフィアの膝の上で丸くなっている。
ふとランベール様を見ると、大切なものを見るような温かい眼差しでこちらを見ていた。
(恥ずかしい…なんか話題っ)
「今日はありがとうございました。いろいろ見れて楽しかったです。」
「それはどーも。僕も楽しかったよ。フィーってこれからも呼んでいい?」
「…少し恥ずかしくはありますが。良いですよ?」
返答を聞いてランベールは満面の笑みを浮かべる。
(ランベール様の破壊力がすごい…もぉ、近い。緊張してきた。顔赤いの気づかれちゃう…)
ソフィアの無表情は昔からで、貴族ならではの体面もあり表情には出ないのだが、心の中はしっかり暴れていた。
(少しは意識してくれるようになったかな?アルに感謝しないと。)
しっかりと学院の寮まで送ってもらったソフィアは、エンギルと精霊たちの待つ自分の部屋に戻る。
みんなに出迎えられて、お土産を渡すとわぃわぃと賑やかになり、喜んで貰えたようだ。
ノアはソフィアの腕に留まり、頬を寄せて甘えてくる。
「なんか疲れてなーい?」
「楽しかったけど、いろいろドキドキして疲れたかも…」
ソフィアはクッションに顔をうずめながら答えた。しばらくすると、ノアを抱えてモフモフに癒される。
(女の子らしい表情になってきたな…これはジル、頑張んないと…)
密かにソフィアの恋心に勘づくノアだった。
ソフィアがランベールとお出かけしてる間、ノアはジルベールのもとを訪ねていた。
レオに会いたかったのもあるし、しばらく中庭に行けてないので様子見に来ていた。
中庭のいつもの木の上に、ジルベールはレオといた。
寝転がって考え事をしているようで、ノアが来たことに気づくと、起き上がり腕を伸ばしてきた。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「みんな元気だよ。ここに来れなくて残念がってる。」
「…フィアは夜会の噂が凄かったからな。」
レオと一緒にジルから餌を貰い、近況報告をしあう。
ノアとしてはこの場所が気に入っているのでそろそろ会うのも解禁で良いんじゃ、と思っているのだが…
「ジル、留学の件はどうするの?」
「うーん。行く方向で前向きには考えてるよ。父上の話も納得できたからな。ま、まだ来年だしな。」
久しぶりに和気藹々とおしゃべりして、散歩してから部屋に戻る途中ちょうどソフィアが戻ってくる所が見えた。
(てっきりジルベールとくっつくと思ってたんだけどな…)
ノアと別れたジルベールは寮にも王宮にも戻らず、街へと来ていた。
視野を広げる、そのためにもとここ最近の日課である。
街中の店に入り、ご飯を食べながら耳を傾ける。
平民の話、王宮勤めの兵士たちの話、店の店員のおばちゃんとお客との話。
ジルベールの顔は知られていないので、ここの人たちには王子であることも気づかれない。何度か来ているうちに顔見知りもでき、毎日の楽しみにもなってきている。
(ここでの情報収集は今後に役立つハズ)
ジルベールは王太子の兄を補助する立場として、自ら出来ることを模索している最中だった。
自らの足で、耳で、情報を集める。噂というものがどれだけ当てにならないかは、ジルベール自身よく知っている。王宮では特に、有力貴族による情報操作が活発なのである。
さらには、街中で聞く情報にも嘘とホントが混ざり合っている。伝達途中で変化したのか、意図的に流されているのか、どの情報を信じるかは自分自身の判断である。
自分の理解を正確にするためにも、あらゆる所から情報を得ること。
そして、正しく判断できるよう視野を広げること。
これが今のジルベールの課題である。
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