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2.魔法学院2年生
(34).突然の訪問者
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「ビルド」
ゴゴゴゴッと大きな音を立て、周りの土を1箇所に集めたかと思いきや、ゴーレムが1体出来上がっていた。
「よっしゃー、上手くいった。」
周りの注目を集め1人盛り上がっているのは1年生のダルフォード・ド・クレイグである。
水属性しかない、と落ち込んでいたが実際には土属性もあり、着々と魔法のレベルアップをはかっている。
(きっと、負けず嫌いなのね。ここまで伸びるとは…)
魔力量が桁外れに多いクレイグは、ソフィアの助言を忠実に、自分のものとして昇華している。
彼が努力している姿は他の1年生たちにも良い影響を与えていた。
学院の1年生1割くらいだろうか…クレイグに影響されて広場で訓練するようになってから、着々と力を付けていた。精霊と仲良くなる、その意味が少しでも伝わっているのなら嬉しい。
「ソフィー、この自主練いつまで続けるんだ?」
ふと、ノアに聞かれて考える。
元々自分から始めた訳ではないので辞め時というか、丁度良い頃合いがわからなくなっていた。
「どうしようね…ここまできたら1人で自主練しても変わらないと思うんだけど、自然と皆集まってるからね…」
ソフィアの考え込む姿を見て、ノアは心配になった。
頼まれ事が最近増えてきている気がする。本人は気づいていないのだろうが、恐らく状況を見て、断る、ということが出来なくなってきているのではないだろうか…本人の負担がなければ良いが…
「本人たちに任せて、ソフィーは休めばいいさ。何かあれば聞いてくるだろうし、ソフィーは精霊たちとこれ以上ない仲良しなんだから。」
(そう、僕が面白くないくらいには…)
最近のノアはソフィーの周りの人に呼ばれる事が増え、ソフィー自身との時間が前よりも減っていた。
ソフィーとの関連性から簡単に断われる相手じゃないので対応しているが、その分精霊たちに自分の居場所を奪われているようで面白くない。
(まぁ、仲の良さが力には関係ないからソフィーには影響ないんだけどさ…)
できる事なら、学院前のように2人だけで森で遊びたいなあと考えるノアだった。
数日後、今日も広場には自主練をしている学生がたくさんいる。
ソフィーは広場横のベンチに座り、その光景を眺めていた。そろそろ自分たちだけで自主練してみなよ、と話した所、先輩が参加しないのは寂しいとクレイグに言われ、仕方なく監督役として見守る側になったのである。
アンナやリュカたちは一緒に練習して、時には後輩と模擬戦のような形になるので、本人たちも楽しめているようである。
ソフィアだけ、自分だけ目的なく参加しているのがとても場違いのように感じて、ふと切なくなってしまった。
みんなと一緒に楽しめたら良いのだろうけど、今のところこの場でイヤーカフを外すのは勇気がいる。
精霊王たちの存在、ソフィアの実力が公になれば心休まる日なんてないに等しいだろう…
(隠し事してるみたいで、1歩引いちゃうんだよな)
悪い事をしている訳ではなく、自分の身を守る為の対策なのに、友人たちに本人の自分を見てもらえない事が寂しくもある。仕方のない事なんだけど…
「珍しいね、考え事?」
後ろから声がかかり、背後に人がいることに初めて気づく。
「えっ?いゃ、まぁ少し…ってランベール様⁈どうして学院に?」
「学生たちの間で自主練のようなものが流行っている、と報告があってね。実際に魔法実技の実力が伸びてきているそうだから、激励でも、と思って。」
そう、ニコッと笑うランベールはお供も付けておらずひっそりと来たようで、学生たちにはまだ気づかれていない。
キョロキョロしているソフィーに気づいたのか、影からテオドールが顔を出し、ソフィアに会釈する。なるほど、今日の護衛はテオドールでしたか。
きっと学院長にも呼ばれてるんだろうな、と察した。
「みんな、呼んできましょうか?」
「いゃ、気づくまで待てば良いよ。お陰でソフィーちゃんとの時間も取れるから。」
「また、そんなこと言って…」
照れて少し顔を赤らめたソフィアを眺め、ランベールは満足そうである。
「令嬢たちの攻撃も心配してたんだけど、ソフィーちゃん気にしてないみたいだし、会う口実でもないと話す機会がなさそうだしね。」
そう言いながら、さりげなくソフィアの横に座ったランベールはテオドールに準備させてベンチ横に簡単なティーセットを用意した。
種類違いのケーキが小さく切られ並べられている。あっという間にお茶の場となってしまった事に驚いた。
「ボヤけるくらいの目眩しかけてるから、みんなが気づくのはお茶が終わる頃だと思うよ。どうぞ、召し上がれ。」
(なるほど。だからみんな気づかないのか…)
ソフィアは甘いものの誘惑に負けてケーキに手を伸ばした。側で精霊たちはのほほんとしている。
カルディナはノアの上にケーキの食べカスをポロポロ落として嫌がられている。
イソールはエンギルの上からじっと動かず、ケーキに目を輝かせている。
「その上の子は教会の時の光の精霊さんかな?」
(あれ?見えてる??…どうしょ。)
焦って返事が返せずにいると、笑いながらランベールが教えてくれた。
「テオのおかげでね、見えるよ。番人の力は凄いよね。」
「なるほど。」
側にいるテオドールを見ると、さりげなくドヤ顔している。その顔を見てすっかり気が抜けてしまった。
「ふふっ。確かに、テオドールのおかげですね。」
貴重なソフィアの自然な笑顔が見れて、ランベールは心の中でテオドールに感謝していた。
「どうぞ、その子にもケーキあげて。」
渡されたケーキを小さく取りイソールに渡すと大喜びだった。滅多に精霊界から離れたことのない彼女にとって初めての甘いものであった。
その後もまったりとした時間を過ごし、ソフィアは気づけばのほほんとティータイムを過ごしていた。これもテオドールの力なのだろう、きっと。
ゴゴゴゴッと大きな音を立て、周りの土を1箇所に集めたかと思いきや、ゴーレムが1体出来上がっていた。
「よっしゃー、上手くいった。」
周りの注目を集め1人盛り上がっているのは1年生のダルフォード・ド・クレイグである。
水属性しかない、と落ち込んでいたが実際には土属性もあり、着々と魔法のレベルアップをはかっている。
(きっと、負けず嫌いなのね。ここまで伸びるとは…)
魔力量が桁外れに多いクレイグは、ソフィアの助言を忠実に、自分のものとして昇華している。
彼が努力している姿は他の1年生たちにも良い影響を与えていた。
学院の1年生1割くらいだろうか…クレイグに影響されて広場で訓練するようになってから、着々と力を付けていた。精霊と仲良くなる、その意味が少しでも伝わっているのなら嬉しい。
「ソフィー、この自主練いつまで続けるんだ?」
ふと、ノアに聞かれて考える。
元々自分から始めた訳ではないので辞め時というか、丁度良い頃合いがわからなくなっていた。
「どうしようね…ここまできたら1人で自主練しても変わらないと思うんだけど、自然と皆集まってるからね…」
ソフィアの考え込む姿を見て、ノアは心配になった。
頼まれ事が最近増えてきている気がする。本人は気づいていないのだろうが、恐らく状況を見て、断る、ということが出来なくなってきているのではないだろうか…本人の負担がなければ良いが…
「本人たちに任せて、ソフィーは休めばいいさ。何かあれば聞いてくるだろうし、ソフィーは精霊たちとこれ以上ない仲良しなんだから。」
(そう、僕が面白くないくらいには…)
最近のノアはソフィーの周りの人に呼ばれる事が増え、ソフィー自身との時間が前よりも減っていた。
ソフィーとの関連性から簡単に断われる相手じゃないので対応しているが、その分精霊たちに自分の居場所を奪われているようで面白くない。
(まぁ、仲の良さが力には関係ないからソフィーには影響ないんだけどさ…)
できる事なら、学院前のように2人だけで森で遊びたいなあと考えるノアだった。
数日後、今日も広場には自主練をしている学生がたくさんいる。
ソフィーは広場横のベンチに座り、その光景を眺めていた。そろそろ自分たちだけで自主練してみなよ、と話した所、先輩が参加しないのは寂しいとクレイグに言われ、仕方なく監督役として見守る側になったのである。
アンナやリュカたちは一緒に練習して、時には後輩と模擬戦のような形になるので、本人たちも楽しめているようである。
ソフィアだけ、自分だけ目的なく参加しているのがとても場違いのように感じて、ふと切なくなってしまった。
みんなと一緒に楽しめたら良いのだろうけど、今のところこの場でイヤーカフを外すのは勇気がいる。
精霊王たちの存在、ソフィアの実力が公になれば心休まる日なんてないに等しいだろう…
(隠し事してるみたいで、1歩引いちゃうんだよな)
悪い事をしている訳ではなく、自分の身を守る為の対策なのに、友人たちに本人の自分を見てもらえない事が寂しくもある。仕方のない事なんだけど…
「珍しいね、考え事?」
後ろから声がかかり、背後に人がいることに初めて気づく。
「えっ?いゃ、まぁ少し…ってランベール様⁈どうして学院に?」
「学生たちの間で自主練のようなものが流行っている、と報告があってね。実際に魔法実技の実力が伸びてきているそうだから、激励でも、と思って。」
そう、ニコッと笑うランベールはお供も付けておらずひっそりと来たようで、学生たちにはまだ気づかれていない。
キョロキョロしているソフィーに気づいたのか、影からテオドールが顔を出し、ソフィアに会釈する。なるほど、今日の護衛はテオドールでしたか。
きっと学院長にも呼ばれてるんだろうな、と察した。
「みんな、呼んできましょうか?」
「いゃ、気づくまで待てば良いよ。お陰でソフィーちゃんとの時間も取れるから。」
「また、そんなこと言って…」
照れて少し顔を赤らめたソフィアを眺め、ランベールは満足そうである。
「令嬢たちの攻撃も心配してたんだけど、ソフィーちゃん気にしてないみたいだし、会う口実でもないと話す機会がなさそうだしね。」
そう言いながら、さりげなくソフィアの横に座ったランベールはテオドールに準備させてベンチ横に簡単なティーセットを用意した。
種類違いのケーキが小さく切られ並べられている。あっという間にお茶の場となってしまった事に驚いた。
「ボヤけるくらいの目眩しかけてるから、みんなが気づくのはお茶が終わる頃だと思うよ。どうぞ、召し上がれ。」
(なるほど。だからみんな気づかないのか…)
ソフィアは甘いものの誘惑に負けてケーキに手を伸ばした。側で精霊たちはのほほんとしている。
カルディナはノアの上にケーキの食べカスをポロポロ落として嫌がられている。
イソールはエンギルの上からじっと動かず、ケーキに目を輝かせている。
「その上の子は教会の時の光の精霊さんかな?」
(あれ?見えてる??…どうしょ。)
焦って返事が返せずにいると、笑いながらランベールが教えてくれた。
「テオのおかげでね、見えるよ。番人の力は凄いよね。」
「なるほど。」
側にいるテオドールを見ると、さりげなくドヤ顔している。その顔を見てすっかり気が抜けてしまった。
「ふふっ。確かに、テオドールのおかげですね。」
貴重なソフィアの自然な笑顔が見れて、ランベールは心の中でテオドールに感謝していた。
「どうぞ、その子にもケーキあげて。」
渡されたケーキを小さく取りイソールに渡すと大喜びだった。滅多に精霊界から離れたことのない彼女にとって初めての甘いものであった。
その後もまったりとした時間を過ごし、ソフィアは気づけばのほほんとティータイムを過ごしていた。これもテオドールの力なのだろう、きっと。
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