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1.魔法学院1年生
(21).テオドール、大活躍
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翌日、影に潜むテオドールを連れて授業へと向かった。
「どうして頭の上にいるの?」
「ソフィアの銀髪だと、エンギル君目立つよね。」
「飛ぶのは疲れちゃうのかなあ?」
ジェシカ達にからかわれながらも、カルディナとエンギルを連れて訓練場へと足を踏み入れた。
(サラさんは…… いる。)
ソフィアのいる場所とは正反対の位置に、リュカやランディ達と話をする姿が確認できた。
どうやって近づこうかと考えていると、アンナの目がリュカを追っているのが分かった。
(ずっと避けられてるんだよな。)
仲良しの頃の2人を思うとソフィアも切なくなってしまう。
「アンナ、リュカのとこ行ってみる?」
アンナの付き添いって形なら近づきやすいという打算もあるけれど、純粋に友達として2人が心配というのもある。
ソフィアと一緒でも不安だよ、とジェシカもイネスも付いてくることになった。
自分はコミュ障だから仕方ないのだろうか。
「テオドール、近づくからよろしくね。」
足元に目眩しをこっそりかけてみんなの後に続く。
「リュカ、ちょっと話出来ないかな?」
こういう時のアンナは強いと思う。
しっかりとリュカの目を見て、気持ちを伝えようとしているのがこちらにも伝わる。
リュカは気まずそうにしながらも他の2人から少し離れ、アンナと2人で話そうという姿勢を見せた。
(魅了の力が弱まっているのかも。)
ジェシカ達と側で待機していると、強い視線を感じた。
そっと周りを見渡すとサラが睨んでいる。足元でテオドールが動き出したのが確認できた。気づけばサラが近づいてきていた。
まさかの、向こうからの接近に、焦る。ジェシカ達も気づいたようで、ソフィアとサラの間を遮るように位置取りをし出した。
「…貴方は何故私の邪魔をするの?」
「「「えっ?」」」
突然の問いかけにソフィア達は言葉が出なかった。
「私からルーシェを取り上げたのは貴方でしょう?昨日部屋から見えたわ。ルーシェが貴方の精霊に囲まれている所。何度呼んでもルーシェは応えてくれなくなった。こんなことなかったのに…彼女に何をしたの?どこに連れてったのよ⁈」
ルーシェのことはジェシカ達には伝えていなかったため、2人はどう反応して良いか戸惑っている。
ソフィアも昨日の出来事を大々的に伝える訳にはいかないので言葉に詰まってしまった。
肩の上ではカルディナが鼻息荒く怒っているが、言葉は聞こえていないらしい。
あまりにもカルディナらしくない荒れた言葉だったので、ある意味では良かったのだが。
「何で何も言わないのよ。貴方は何でも持ってるじゃない。貴族としての地位も、友達も、精霊たちまで。私にはルーシェしかいなかったのに、返してよ。」
サラの悲鳴のような声に、周りの皆の視線が集まっている。離れていたアンナ達もこちらの異変に気づいたようだ。
(これは、まずい。どうしよう。)
注目を浴び、動揺し始めたソフィアの目眩しが崩れていく。テオドールの鑑定は終わったのだろうか。
「エンギル、これどうしたらいいかな…」
「絶対絶命…?」
精霊王なのに⁈エンギルの言葉に一瞬不安になったけれど、彼の表情はどこか楽しそうで…?
サラはソフィアを睨みつけながらジリジリと近づいてくる。
「それは本心なのじゃな?」
柔らかい声が訓練場に響く。
いつの間にか訓練場の入口にエリクが立っていた。
後ろにはランベールとデニスも控えている。
突然学院長が現れたことに視線が一気に集中する。その隙を狙ってノアが肩口にやってきた。
「今アルフレッドも向かってるから。うまく話合わせて。」
みんなが来てくれたことで十分心強い。
エリク達はソフィアのすぐ側までやって来た。
「ソフィア嬢は彼女を保護しただけじゃ。取り上げたりしとらんよ。今は学院長室で休んでおるのでな。」
エリクはソフィアと目が合うとニコリと笑った。
「保護って、何で⁈」
学院長相手に全く態度を変えないサラに、学生達の非難の目が集中し始める。
「ソフィア嬢、昨日わしに伝えてくれた事をそのまま言えばいい。君が見つけた精霊はどんな様子だったかの?」
「…ひどく泣いていました。自分の力じゃ足りなかった、と悔やんでいました。」
エリクの視線から、それで良い、と言われているように感じた。
魅了の力に触れず曖昧にする事で正解だったようだ。
「足りない、とは?」
「ご主人の魅力が伝わるように力を使ったけれど、大事な相手には届かなくて力不足だった、と。」
「嘘よ。」
ソフィアの話を聞いてるうちにサラの表情はくもり、そわそわとランベールの方を気にするようになった。
(ランベール様に好かれたいってことだもんね。)
「ソフィア嬢が嘘をついていないことは私たちが保証しよう。その場には王子もデニス先生もおったのでな。」
後ろにいる2人も頷いた事で周りはみんな信じてくれたようだ。ソフィアを見る目が優しくなる。
「だから何なの?ルーシェを取り上げて満足したんでしょ⁈」
サラはとても興奮している様子だ。
「君は力が足りないと落ち込む精霊に何か声をかけてやったのかい?彼女しかいない、と言うならば泣いていることに気づいていたんじゃ?何故いつも側にいるべき精霊が君の元を離れていたんだろうか?」
「確かに、ソフィーの精霊はいつも一緒にいるわ…。」
ボソッと呟いたアンナの声は広く聞こえていた。
「それは…ルーシェが急にいなくなるから…。」
ランベールがジッとサラを見つめる。
まるで嘘は許さない、とでも言うかのように。
サラはその視線に気付き、明らかに動揺し始めていた。
「精霊の力は主との相性によるもの。力が弱いと嘆いている子に寄り添ってあげないと、力はどんどん弱くなる。主との相性が悪いと消滅してしまう事もあるんだ。他人を責める前に、自らを振り返ったらどうだろう?」
優しい口調ではあるが、デニス教授の最もな言葉にサラも返す言葉がないようだ。少し離れた所にアルフレッドの姿が見えていた。
「これでは実技は集中出来ないだろう。今日は自習にする。各々寮へ戻るように。午後からの授業がある者は1度心身を整えてから参加しなさい。解散。」
デニス教授の指示で学生たちが動き始める。
サラとソフィアは当事者なのでまだ動けない。
ジェシカ達に目配せして、先に戻るように促す。
寮への道で、リュカとランディがジェシカ達へと合流し、アンナとリュカが会話している所が見えた。
(話せるようになったんだ、良かった。)
「さて、サラ嬢。ソフィア嬢に言うことがあるはずじゃ。君の大事な精霊を慰め、癒してくれたのは彼女じゃぞ?」
「…すみませんでした。……ルーシェのこと、ありがとう。」
しぶしぶではあったたが、謝罪とお礼を伝えてきた彼女の表情は落ち着いていた。
話を聞く、とデニス教授に付き添われ学院内へと戻っていく。
「先生、来て下さってありがとうございました。」
「いぃやぁ、こちらこそ。面白いものが見れたわい。」
そう、返してきたエリクはとても楽しそうだ。
ソフィアが不思議に思っていると、アルフレッドがランベールに向き言う。
「で、お前は何してるの?何でランになってんだ?」
「えっ⁈」
どういうことかと思っていたら、ランベールの足元から容姿が変わっていき、テオドールの執事服が見える。
ランベールのカオがぐにゃりと歪み、テオドールへと移り変わった。
「えええ⁈」
おかしい。驚いているのが自分だけなんて…
まさかエンギル達精霊が気づいていると思わなかった。
「彼らとは長い付き合いですから。私のイタズラはよく知っていますよ。」
学院長室でテオドールにお茶を貰いながら、今日の出来事を振り返る。
アルフレッドも着いたばかりなのでソフィアと一緒に聞く側だ。
「彼女の鑑定はすぐ終わりました。はっきり言って未熟者過ぎて…話になりません。魔力も弱く、わがまま、妬みや嫉妬の多いこと多いこと…ランベール様への憧れと恋心でいっぱいでしたよ。」
報告を済ませたテオドールはどこか呆れ顔である。
「テオ君には事前にわしの影にも入って貰ってたんじゃよ。学院内なら動けるわしの性質を、影でも再現できるか試してのう。」
「何かあったらすぐ呼ぶようにって、そういうことだったんですね。」
「エンギルが頭から動かなかったから、私がいないこと気づかなかったでしょう?敵を欺くにはまずは味方から、ってね。鑑定が終わり、すぐにここに戻りまして、エリク様と打ち合わせしておりました。貴方の側にはノアがいれば大丈夫でしょうから。」
「なるほどね。ノアはソフィーのピンチって伝えてすぐ戻ったからな。俺が間に合うのかヒヤヒヤしてたけど、問題なかった訳ね。で、ランになってたのは?」
「テオ君の報告でサラ嬢はランベール王子に夢中ってことだったから、本人がいたら良かったのになあってボヤいてたんじゃよ。好きな相手の前なら変なことしでかさんじゃろう?そしたら、テオ君なれるって言うから。見てみたらそっくりじゃし。声はそのままなら喋らずにおれば良いな、と。デニス教授は喋りをフォローしてくれておったのう。ほれ、チームワークじゃ。」
なんだろう、すごく楽しそう。
危機感のあった自分との温度差にソフィアは気が抜けた。
「結局、サラさんは問題なかったということですよね?怪しい影は別の人間ですか?」
「恋する乙女の嫉妬ってことか。振り出しに戻ったな。」
「そうでもありませんよ?魅了は彼女だけでは効かなかったハズです。それが広がったのは何かしら影響を受けていたからで。聖女候補が行く場所と言えば…」
「「教会?」か?」
「調べてみる価値はありますよね?方法を考えねば、ですが。」
「なるほど。ソフィーが行くのは危険過ぎる。どうするかな…」
テオドールが扉へと動く。
「本物の知恵を借りましょう。」
そこには、仕事を終えたと思われるランベールが扉の前に到着したところであった。
「どうして頭の上にいるの?」
「ソフィアの銀髪だと、エンギル君目立つよね。」
「飛ぶのは疲れちゃうのかなあ?」
ジェシカ達にからかわれながらも、カルディナとエンギルを連れて訓練場へと足を踏み入れた。
(サラさんは…… いる。)
ソフィアのいる場所とは正反対の位置に、リュカやランディ達と話をする姿が確認できた。
どうやって近づこうかと考えていると、アンナの目がリュカを追っているのが分かった。
(ずっと避けられてるんだよな。)
仲良しの頃の2人を思うとソフィアも切なくなってしまう。
「アンナ、リュカのとこ行ってみる?」
アンナの付き添いって形なら近づきやすいという打算もあるけれど、純粋に友達として2人が心配というのもある。
ソフィアと一緒でも不安だよ、とジェシカもイネスも付いてくることになった。
自分はコミュ障だから仕方ないのだろうか。
「テオドール、近づくからよろしくね。」
足元に目眩しをこっそりかけてみんなの後に続く。
「リュカ、ちょっと話出来ないかな?」
こういう時のアンナは強いと思う。
しっかりとリュカの目を見て、気持ちを伝えようとしているのがこちらにも伝わる。
リュカは気まずそうにしながらも他の2人から少し離れ、アンナと2人で話そうという姿勢を見せた。
(魅了の力が弱まっているのかも。)
ジェシカ達と側で待機していると、強い視線を感じた。
そっと周りを見渡すとサラが睨んでいる。足元でテオドールが動き出したのが確認できた。気づけばサラが近づいてきていた。
まさかの、向こうからの接近に、焦る。ジェシカ達も気づいたようで、ソフィアとサラの間を遮るように位置取りをし出した。
「…貴方は何故私の邪魔をするの?」
「「「えっ?」」」
突然の問いかけにソフィア達は言葉が出なかった。
「私からルーシェを取り上げたのは貴方でしょう?昨日部屋から見えたわ。ルーシェが貴方の精霊に囲まれている所。何度呼んでもルーシェは応えてくれなくなった。こんなことなかったのに…彼女に何をしたの?どこに連れてったのよ⁈」
ルーシェのことはジェシカ達には伝えていなかったため、2人はどう反応して良いか戸惑っている。
ソフィアも昨日の出来事を大々的に伝える訳にはいかないので言葉に詰まってしまった。
肩の上ではカルディナが鼻息荒く怒っているが、言葉は聞こえていないらしい。
あまりにもカルディナらしくない荒れた言葉だったので、ある意味では良かったのだが。
「何で何も言わないのよ。貴方は何でも持ってるじゃない。貴族としての地位も、友達も、精霊たちまで。私にはルーシェしかいなかったのに、返してよ。」
サラの悲鳴のような声に、周りの皆の視線が集まっている。離れていたアンナ達もこちらの異変に気づいたようだ。
(これは、まずい。どうしよう。)
注目を浴び、動揺し始めたソフィアの目眩しが崩れていく。テオドールの鑑定は終わったのだろうか。
「エンギル、これどうしたらいいかな…」
「絶対絶命…?」
精霊王なのに⁈エンギルの言葉に一瞬不安になったけれど、彼の表情はどこか楽しそうで…?
サラはソフィアを睨みつけながらジリジリと近づいてくる。
「それは本心なのじゃな?」
柔らかい声が訓練場に響く。
いつの間にか訓練場の入口にエリクが立っていた。
後ろにはランベールとデニスも控えている。
突然学院長が現れたことに視線が一気に集中する。その隙を狙ってノアが肩口にやってきた。
「今アルフレッドも向かってるから。うまく話合わせて。」
みんなが来てくれたことで十分心強い。
エリク達はソフィアのすぐ側までやって来た。
「ソフィア嬢は彼女を保護しただけじゃ。取り上げたりしとらんよ。今は学院長室で休んでおるのでな。」
エリクはソフィアと目が合うとニコリと笑った。
「保護って、何で⁈」
学院長相手に全く態度を変えないサラに、学生達の非難の目が集中し始める。
「ソフィア嬢、昨日わしに伝えてくれた事をそのまま言えばいい。君が見つけた精霊はどんな様子だったかの?」
「…ひどく泣いていました。自分の力じゃ足りなかった、と悔やんでいました。」
エリクの視線から、それで良い、と言われているように感じた。
魅了の力に触れず曖昧にする事で正解だったようだ。
「足りない、とは?」
「ご主人の魅力が伝わるように力を使ったけれど、大事な相手には届かなくて力不足だった、と。」
「嘘よ。」
ソフィアの話を聞いてるうちにサラの表情はくもり、そわそわとランベールの方を気にするようになった。
(ランベール様に好かれたいってことだもんね。)
「ソフィア嬢が嘘をついていないことは私たちが保証しよう。その場には王子もデニス先生もおったのでな。」
後ろにいる2人も頷いた事で周りはみんな信じてくれたようだ。ソフィアを見る目が優しくなる。
「だから何なの?ルーシェを取り上げて満足したんでしょ⁈」
サラはとても興奮している様子だ。
「君は力が足りないと落ち込む精霊に何か声をかけてやったのかい?彼女しかいない、と言うならば泣いていることに気づいていたんじゃ?何故いつも側にいるべき精霊が君の元を離れていたんだろうか?」
「確かに、ソフィーの精霊はいつも一緒にいるわ…。」
ボソッと呟いたアンナの声は広く聞こえていた。
「それは…ルーシェが急にいなくなるから…。」
ランベールがジッとサラを見つめる。
まるで嘘は許さない、とでも言うかのように。
サラはその視線に気付き、明らかに動揺し始めていた。
「精霊の力は主との相性によるもの。力が弱いと嘆いている子に寄り添ってあげないと、力はどんどん弱くなる。主との相性が悪いと消滅してしまう事もあるんだ。他人を責める前に、自らを振り返ったらどうだろう?」
優しい口調ではあるが、デニス教授の最もな言葉にサラも返す言葉がないようだ。少し離れた所にアルフレッドの姿が見えていた。
「これでは実技は集中出来ないだろう。今日は自習にする。各々寮へ戻るように。午後からの授業がある者は1度心身を整えてから参加しなさい。解散。」
デニス教授の指示で学生たちが動き始める。
サラとソフィアは当事者なのでまだ動けない。
ジェシカ達に目配せして、先に戻るように促す。
寮への道で、リュカとランディがジェシカ達へと合流し、アンナとリュカが会話している所が見えた。
(話せるようになったんだ、良かった。)
「さて、サラ嬢。ソフィア嬢に言うことがあるはずじゃ。君の大事な精霊を慰め、癒してくれたのは彼女じゃぞ?」
「…すみませんでした。……ルーシェのこと、ありがとう。」
しぶしぶではあったたが、謝罪とお礼を伝えてきた彼女の表情は落ち着いていた。
話を聞く、とデニス教授に付き添われ学院内へと戻っていく。
「先生、来て下さってありがとうございました。」
「いぃやぁ、こちらこそ。面白いものが見れたわい。」
そう、返してきたエリクはとても楽しそうだ。
ソフィアが不思議に思っていると、アルフレッドがランベールに向き言う。
「で、お前は何してるの?何でランになってんだ?」
「えっ⁈」
どういうことかと思っていたら、ランベールの足元から容姿が変わっていき、テオドールの執事服が見える。
ランベールのカオがぐにゃりと歪み、テオドールへと移り変わった。
「えええ⁈」
おかしい。驚いているのが自分だけなんて…
まさかエンギル達精霊が気づいていると思わなかった。
「彼らとは長い付き合いですから。私のイタズラはよく知っていますよ。」
学院長室でテオドールにお茶を貰いながら、今日の出来事を振り返る。
アルフレッドも着いたばかりなのでソフィアと一緒に聞く側だ。
「彼女の鑑定はすぐ終わりました。はっきり言って未熟者過ぎて…話になりません。魔力も弱く、わがまま、妬みや嫉妬の多いこと多いこと…ランベール様への憧れと恋心でいっぱいでしたよ。」
報告を済ませたテオドールはどこか呆れ顔である。
「テオ君には事前にわしの影にも入って貰ってたんじゃよ。学院内なら動けるわしの性質を、影でも再現できるか試してのう。」
「何かあったらすぐ呼ぶようにって、そういうことだったんですね。」
「エンギルが頭から動かなかったから、私がいないこと気づかなかったでしょう?敵を欺くにはまずは味方から、ってね。鑑定が終わり、すぐにここに戻りまして、エリク様と打ち合わせしておりました。貴方の側にはノアがいれば大丈夫でしょうから。」
「なるほどね。ノアはソフィーのピンチって伝えてすぐ戻ったからな。俺が間に合うのかヒヤヒヤしてたけど、問題なかった訳ね。で、ランになってたのは?」
「テオ君の報告でサラ嬢はランベール王子に夢中ってことだったから、本人がいたら良かったのになあってボヤいてたんじゃよ。好きな相手の前なら変なことしでかさんじゃろう?そしたら、テオ君なれるって言うから。見てみたらそっくりじゃし。声はそのままなら喋らずにおれば良いな、と。デニス教授は喋りをフォローしてくれておったのう。ほれ、チームワークじゃ。」
なんだろう、すごく楽しそう。
危機感のあった自分との温度差にソフィアは気が抜けた。
「結局、サラさんは問題なかったということですよね?怪しい影は別の人間ですか?」
「恋する乙女の嫉妬ってことか。振り出しに戻ったな。」
「そうでもありませんよ?魅了は彼女だけでは効かなかったハズです。それが広がったのは何かしら影響を受けていたからで。聖女候補が行く場所と言えば…」
「「教会?」か?」
「調べてみる価値はありますよね?方法を考えねば、ですが。」
「なるほど。ソフィーが行くのは危険過ぎる。どうするかな…」
テオドールが扉へと動く。
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