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1.魔法学院1年生
(11).精霊王カルディナの呼び出し
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ことは数日前に遡る…
それは、ノアの宣言により始まった。
召喚術の授業でどんな精霊が呼べるか楽しみにしていたソフィアは、教科書をめくり、魔法陣の確認に勤しんでいた。相手をしてくれない彼女に剛を煮やしたのか、ノアが机の上に留まる。
「番人は精霊と違う存在だから、召喚術では呼んで貰えないんだ。でも気の合う友達を呼ぶことは出来るよ。」
「私の召喚術だからね、ノアの手助けはいらないの。」
「ソフィーの一番近くにいるのはノアの特権なの。どうせなら面白い子と一緒の方が楽しそうでしょ?」
「うーん。ノアと仲良く出来る人が良いな、とは思うよ?」
「ここで試してみよう!変なのが来たら追い返すから」
悪戯顔のノアに促され、早く試してみたい自分の欲求にも抗えず、自室のベットに魔法陣を書いた紙を置き、魔力を込めていく。
風火水土闇光、魔法陣に組み込まれたそれぞれの属性の模様が光始める。
しばらくすると魔法陣上に契約したい精霊が現れるハズなのだが…
「誰も来ない…?」
「ソフィーの魔力でそれはないと思う。もうちょっとしたら…?知ってる人が近づいてきてる。」
魔法陣の中から緑の魔力が見えてきた。
「久しぶり。風の精霊王カルディナ。」
キレイな緑髪の美人さんが現れた。
「誰かと思ったらノアじゃないの。番人さんが付き添ってるなんて珍しいわね。もぉ、この子のおかげで精霊界は大騒ぎよ。どの属性の精霊も吾先にって集まるからパンク状態。精霊王達も呼び出されて皆勢揃いで交通整備よ。今の私はただの代表。正直皆出てきてもおかしくないわ。こんなキレイな魔力誰もが群がるもの。」
あまりのことにソフィアは目を丸くする。
「なるほど。大渋滞のせいだったんだ。精霊王達は皆いるの?」
何故かノアは冷静である。
「闇のは姿は見てないわ。でも魔力の通りはきっと良いハズよ。それ以外は各王が揃ってるわね。せっかくだから番人、挨拶なさいな。」
カルディナ様は自分の出てきた召喚陣を広く大きく伸ばす。魔法陣の属性の模様がそれぞれ光だし、姿を現す。順番に円状に勢揃いである。
紅髪青年、火の精霊王アグニス。
青髪美女、水の精霊王ユーティリア。
茶髪老師、土の精霊王ヴォルグ。
黒髪少年、闇の精霊王エンギル。
金髪少女、光の精霊王イソール。
(精霊王が勢揃いって…恐れ多い。)
「ソフィアです。あの、集まって下さりありがとうございます。」
「よろしく!」
「きゃー可愛い。礼儀正しいわね。」
「なーに番人サボっとるんじゃ、たわけ。」
「…よろしく。」
「…(ペコリ)」
それぞれ個性的で、みんな揃うと圧巻である。
「選べってのも酷だと思うから皆でクジでもどうかしら?私達全員出てきちゃったから自動的に下の子達はナシ、この中からね。当たりは何人まで??」
「ソフィー、何人?」
「えっと、普通の召喚だと一人かと…」
「もっと贅沢にいきましょ。確率上げないと!せめて二人。」
(なんだろ?もはやお祭り騒ぎ?笑)
明日の授業中じゃなくて、この部屋で済んで良かったと心の底から思うソフィアであった。
クジの結果で決まったのは風と闇の精霊王の二人だった。外れた皆も力は貸してくれるらしいので、全属性行使が楽になる。敬語もナシで、気軽に呼んで、と軽い口調で話す皆に、新しく友達がたくさんできた気分だった。
その代わり、今度全員でティーパーティに招待してほしいと頼まれてしまったが。
ノア曰く、精霊王達は人間の真似事が好きなのだとか…
翌日召喚術の授業中、魔法陣が全属性光るというのは珍しい現象なのだと知った。
何よりクラスメイト達が呼び出す精霊は動物や妖精のような姿であり、人型になるのは精霊王達だけなんだと気づく。
男爵令嬢のサラが可愛い妖精姿の光の精霊を呼んだ時、デニス先生がとても興奮しており、光の精霊の召喚は珍しいことなのだと知る。
昨日の様子を思い出して、これはヤバい…と感じ、焦る。
ソフィアの順番で魔法陣が光る間、控えめに、可愛く出てきて、と念じて精霊王達にお願いしてみる。
魔法陣から二人が出てくる様子を緊張して待つと、翠緑の髪の少女と小さな黒フクロウ姿で現れた。
ソフィア的には両方好みな見た目で嬉しい。
カルディナと手を繋ぎ、エンギルを肩に乗せたら意外としっくりきて感動ものである。
「カルディナ、可愛いです。エンギルも、変身ありがとうございます。」
「ソフィーの頼みだもの。妹みたいでしょ?」
「…ノアの真似。コレ、動きやすい。」
どちらもドヤ顔です。
お願いが届いて良かった、とソフィアは改めて感じた。
そんなソフィア達を見る目はたくさん。
興味津々で凝視しているジェシカを始め、クラスメイト達がワクワクした目で見てきている。
そんな中、デニス先生と話をしていたサラは話を終えると、友人達と話すソフィアを見ていた。
サラは精霊が出てきた瞬間嬉しかった。見た目も愛らしい妖精姿で、何より光の精霊だったから。長年憧れていた聖女に一歩近づいたようで誇らしかった。
なのに…一瞬にしてみんなの注目を奪ったソフィアが羨ましく、それを認めてしまうと余計惨めになる気がしてその場を離れていくのだった。
(あれが、サラか…)
実技場近くの木の上から、ノアは眺めていた。
昨日の興奮状態から精霊王達が上手くできるか心配だった為、こっそり様子を見ていたのである。
おかげで【コンダルク】のヒロインを確認する事ができた。
光の精霊を伴っていることからやはり聖女候補なのだろうと思うが、まだ力が弱い。
周りを惹きつける要素も以前に比べると少ないように思う。他の番人が付いている様子もないし、心配いらなかったかなと思う反面、今後どうソフィアに関わってくるのか気をつけたい所だ。
それよりも、エンギルのフクロウ姿が目に入り、意外と可愛いものだからノアとしては面白くない。
可愛いよりもかっこいいフクロウを目指そうかな…と考え始めるのだった。
それは、ノアの宣言により始まった。
召喚術の授業でどんな精霊が呼べるか楽しみにしていたソフィアは、教科書をめくり、魔法陣の確認に勤しんでいた。相手をしてくれない彼女に剛を煮やしたのか、ノアが机の上に留まる。
「番人は精霊と違う存在だから、召喚術では呼んで貰えないんだ。でも気の合う友達を呼ぶことは出来るよ。」
「私の召喚術だからね、ノアの手助けはいらないの。」
「ソフィーの一番近くにいるのはノアの特権なの。どうせなら面白い子と一緒の方が楽しそうでしょ?」
「うーん。ノアと仲良く出来る人が良いな、とは思うよ?」
「ここで試してみよう!変なのが来たら追い返すから」
悪戯顔のノアに促され、早く試してみたい自分の欲求にも抗えず、自室のベットに魔法陣を書いた紙を置き、魔力を込めていく。
風火水土闇光、魔法陣に組み込まれたそれぞれの属性の模様が光始める。
しばらくすると魔法陣上に契約したい精霊が現れるハズなのだが…
「誰も来ない…?」
「ソフィーの魔力でそれはないと思う。もうちょっとしたら…?知ってる人が近づいてきてる。」
魔法陣の中から緑の魔力が見えてきた。
「久しぶり。風の精霊王カルディナ。」
キレイな緑髪の美人さんが現れた。
「誰かと思ったらノアじゃないの。番人さんが付き添ってるなんて珍しいわね。もぉ、この子のおかげで精霊界は大騒ぎよ。どの属性の精霊も吾先にって集まるからパンク状態。精霊王達も呼び出されて皆勢揃いで交通整備よ。今の私はただの代表。正直皆出てきてもおかしくないわ。こんなキレイな魔力誰もが群がるもの。」
あまりのことにソフィアは目を丸くする。
「なるほど。大渋滞のせいだったんだ。精霊王達は皆いるの?」
何故かノアは冷静である。
「闇のは姿は見てないわ。でも魔力の通りはきっと良いハズよ。それ以外は各王が揃ってるわね。せっかくだから番人、挨拶なさいな。」
カルディナ様は自分の出てきた召喚陣を広く大きく伸ばす。魔法陣の属性の模様がそれぞれ光だし、姿を現す。順番に円状に勢揃いである。
紅髪青年、火の精霊王アグニス。
青髪美女、水の精霊王ユーティリア。
茶髪老師、土の精霊王ヴォルグ。
黒髪少年、闇の精霊王エンギル。
金髪少女、光の精霊王イソール。
(精霊王が勢揃いって…恐れ多い。)
「ソフィアです。あの、集まって下さりありがとうございます。」
「よろしく!」
「きゃー可愛い。礼儀正しいわね。」
「なーに番人サボっとるんじゃ、たわけ。」
「…よろしく。」
「…(ペコリ)」
それぞれ個性的で、みんな揃うと圧巻である。
「選べってのも酷だと思うから皆でクジでもどうかしら?私達全員出てきちゃったから自動的に下の子達はナシ、この中からね。当たりは何人まで??」
「ソフィー、何人?」
「えっと、普通の召喚だと一人かと…」
「もっと贅沢にいきましょ。確率上げないと!せめて二人。」
(なんだろ?もはやお祭り騒ぎ?笑)
明日の授業中じゃなくて、この部屋で済んで良かったと心の底から思うソフィアであった。
クジの結果で決まったのは風と闇の精霊王の二人だった。外れた皆も力は貸してくれるらしいので、全属性行使が楽になる。敬語もナシで、気軽に呼んで、と軽い口調で話す皆に、新しく友達がたくさんできた気分だった。
その代わり、今度全員でティーパーティに招待してほしいと頼まれてしまったが。
ノア曰く、精霊王達は人間の真似事が好きなのだとか…
翌日召喚術の授業中、魔法陣が全属性光るというのは珍しい現象なのだと知った。
何よりクラスメイト達が呼び出す精霊は動物や妖精のような姿であり、人型になるのは精霊王達だけなんだと気づく。
男爵令嬢のサラが可愛い妖精姿の光の精霊を呼んだ時、デニス先生がとても興奮しており、光の精霊の召喚は珍しいことなのだと知る。
昨日の様子を思い出して、これはヤバい…と感じ、焦る。
ソフィアの順番で魔法陣が光る間、控えめに、可愛く出てきて、と念じて精霊王達にお願いしてみる。
魔法陣から二人が出てくる様子を緊張して待つと、翠緑の髪の少女と小さな黒フクロウ姿で現れた。
ソフィア的には両方好みな見た目で嬉しい。
カルディナと手を繋ぎ、エンギルを肩に乗せたら意外としっくりきて感動ものである。
「カルディナ、可愛いです。エンギルも、変身ありがとうございます。」
「ソフィーの頼みだもの。妹みたいでしょ?」
「…ノアの真似。コレ、動きやすい。」
どちらもドヤ顔です。
お願いが届いて良かった、とソフィアは改めて感じた。
そんなソフィア達を見る目はたくさん。
興味津々で凝視しているジェシカを始め、クラスメイト達がワクワクした目で見てきている。
そんな中、デニス先生と話をしていたサラは話を終えると、友人達と話すソフィアを見ていた。
サラは精霊が出てきた瞬間嬉しかった。見た目も愛らしい妖精姿で、何より光の精霊だったから。長年憧れていた聖女に一歩近づいたようで誇らしかった。
なのに…一瞬にしてみんなの注目を奪ったソフィアが羨ましく、それを認めてしまうと余計惨めになる気がしてその場を離れていくのだった。
(あれが、サラか…)
実技場近くの木の上から、ノアは眺めていた。
昨日の興奮状態から精霊王達が上手くできるか心配だった為、こっそり様子を見ていたのである。
おかげで【コンダルク】のヒロインを確認する事ができた。
光の精霊を伴っていることからやはり聖女候補なのだろうと思うが、まだ力が弱い。
周りを惹きつける要素も以前に比べると少ないように思う。他の番人が付いている様子もないし、心配いらなかったかなと思う反面、今後どうソフィアに関わってくるのか気をつけたい所だ。
それよりも、エンギルのフクロウ姿が目に入り、意外と可愛いものだからノアとしては面白くない。
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