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第1章 「俺の【四大元素】編」(俺が中一で妹が小三編)
第29話 俺は妹と先輩と中学校に行く
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二十分足らずで中学校の校門前に到着した俺たちは、用心深く周囲を見回していた。
ここにいるのは俺と菜月、そして椎名先輩とマイちゃんだ。
冬休み中ではあるが、部活動があるため校門は開いており、校庭からは野球部やサッカー部などの部活に勤しんでいる生徒の声が聞こえてくる。
とりあえず俺たちは、普通に学校の敷居をまたいだ。
別に校則違反ではないが、冬休み中に部活動をしていない一般生徒が学校内に入ることは極めてまれだろう。
しかも妹たちを連れてだ。
「隼人くん、私とマイはここから別行動するわ。対象の【逆徒】を見つけたら連絡してちょうだい」
「わかりました」
椎名先輩とマイちゃんは、学校を囲む塀沿いに駆け足で走っていった。
俺は菜月の頭を撫でながら頷いた。
「さて、菜月。俺たちは校庭を通って校舎に入ろう」
「うん。何だか緊張するね」
「大丈夫だ。俺がいれば何も恐くないからな」
「えへへー」
菜月は俺を頼りにしている。嬉しい限りだ。
この期待を裏切らないように行動しよう。
だが俺が校庭越しに校舎を見据えた瞬間、どこからともなく強烈な突風が襲ってきた。
俺はとっさに顔の前で腕をクロスさせて、【四大元素】で突風をやり過ごした。
もちろん菜月は俺の体を盾にして守っている。
突風は一時的なもので、俺は乱れた髪を手で直した。
「髪グチャグチャだよぅ」
「ほら、大丈夫だって」
俺は菜月の突風で乱れた髪を手ぐしで直してやる。
それにしてもおかしい。
今の風は自然なものじゃない。【逆徒】の仕業なのだろうか?
校庭には部活中の生徒しかいない。
椎名先輩たちの姿はもう見えない。この程度なら報告はしなくてもいいだろう。
俺はポケットに入れているスマホに触れてつぶやいた。
菜月と一緒にその場で辺りを見渡す。
時刻は午後十五時を少し回ったところだ。校庭では野球部、サッカー部、陸上部が練習していた。
うちの中学は市内でも部活動が盛んなほうで、学校側もかなり力を入れていた。なにしろ野球部、サッカー部、陸上部が一度に練習できるほどの広さををもった校庭は市内でもうちの中学ぐらいだからだ。校舎の裏側にはテニスコートが四面もある。おまけに水泳部用に室内プールまで完備ときている。体育での水泳の授業は校庭のはじにある屋外プールなのにだ。それもそのはず、水泳部に関しては全国大会に出たこともある超強豪校なのでVIP待遇も頷けた。
俺たちは部活動の邪魔にならないように、校庭を横切って校舎に向かって歩きだした。
五十メートルも歩かないうちに、サッカー部に所属する一年と目が合った。
夏休みに市民プールで俺を「ロリ」とからかった奴だ。
名前は相馬という。
「おっす、櫛木。何やってんだよ」
相馬は右手を上げて声をかけてきた。
「ああ、ちょっと野暮用でさ」
相馬は小学校が同じで、一緒にサッカーをやっていた。
身長百七十センチと中学生にしては恵まれたがっちりした体格だ。性格も明るくクラスでは人気者だった。俺とは小学一年の時に同じクラスになったのがきっかけで家が近いこともあり、よく一緒に遊んでいた。
菜月やマイちゃんと遊ぶようになってからは、まったく遊ばなくなってしまたのだが……。
何を隠そう、ここのサッカー部に美少女がいると教えてくれ、その美少女が椎名千尋という名前だと教えてくれたのは相馬なのだ。
中学に入学した当初に部活を決定する際、俺は当然サッカー部に入部する気でいたのだが、その時はマネージャーをしている椎名先輩の存在を知らなかった。
だけど、校庭で何度かすれ違った先輩を、俺は知らず知らずのうちに気にしていたようだ。
なので、相馬に訊いてみたのだ。
相馬はその性格のおかげで交友関係が広く、俺の知らない奴の名前までよく覚えていた。そして、「惚れたのか? チェックが早いなーこの野郎!」などと茶化しながら先輩の名前を教えてくれた。
「どうした? おまえ暇なら、また一緒にサッカー部で青春の汗を流さないか?」
相馬はドリンクのストローを咥えながら、俺たちの目の前までやってきた。
俺はため息を吐く。
相馬も俺がサッカー部に戻る気がないと知りながら、こうして声をかけているのだ。
「いや、サッカーはもういいや。今は勉強のほうに集中したくてさ。親がうるさいんだよ」
俺は適当に理由をでっちあげて答えた。
すると、相馬は何かに気がついたように目を丸くして、にやりと笑った。
「ああっ! そうかー、ついに行動に移したんだな!」
「え? なんのことだよ?」
「俺とおまえの仲でおとぼけは無しにしようぜ」
相馬はにやつきながら俺の両肩を強く掴んだ。
「でもな櫛木……。元サッカー部仲間としての忠告だ。ストーカーは犯罪だぞ」
「………………」
俺はジト目で相馬を睨み返した。
「お、怒るんじゃねえよ。あ、あれ? おまえ椎名先輩を追いかけて学校に来たんじゃないの?」
「え? お前椎名先輩に会ったのか? ついさっきまで一緒にいたんだけど」
「なんだ、やっぱり椎名先輩を追いかけて来たんじゃねえか。つうか、一緒にいたってどういうことだよ?」
相馬と話していると長くなりそうだ。どこかで切り上げないと。
だけど何て言えばいいんだろう……。
俺が返事を躊躇していると、相馬が何かを察した風に小声で言う。
「まさか……、櫛木って椎名先輩と付き合ってんの?」
「……え? ど、どう解釈したらそうなるんだよ!」
相馬は訝しむように、顎に手を当てながら俺を見る。
「椎名先輩さあ、顧問の話だと冬休みは家の都合で部活休むってことなんだよ。なのに今さっき俺がドリンク取りに部室に行ったら、すれ違ってさ……。急いでたみたいだから、声はかけれなかったんだけど」
「そうか」
「部活休んでる椎名先輩と、部活を辞めた櫛木を同じタイミングで見かけたら、怪しくないか? と言うか、本当に付き合ってないんだろうな! 抜け駆けは許さねえぞ!」
相馬はひとりで興奮して、俺の肩を激しく揺さぶった。
この勘違い野郎め。それが事実なら俺が嬉しいわ!
「ん? ところで、この子は誰だ?」
相馬はやっと菜月の存在に気づいたらしい。
菜月は俺の後ろに隠れる。
「俺の妹だ。夏休みでプールで見ただろ?」
「あ、そう言えば……見たような」
相馬が思い出したように手を打ったタイミングで、背後から声がかかる。
「相馬―っ! いつまで休憩してんだよ!」
「あっ! やべっ二年だ! さーせんっ!」
ちらりと肩越しに様子を見ると、サッカー部の二年生らしき部員が近づいてきた。
俺と話しているのをサボっていると勘違いされたようだ。バカな奴だ。
「じゃ、部活頑張れよ」
俺は相馬に言うと、菜月の手を引っ張って校舎のほうに足早に向かった。
背中越しに相馬が二年の先輩に叱られているのが聞こえた。
「お兄ちゃん、さっきの人はお友達なの? ビックリして挨拶できなかった」
「サッカー部で一緒だった奴だ。別に忘れていいぞ」
数十秒後、俺たちは校舎の入り口まで来ることができた。
中に入ると靴箱のところに人影はなく、ひっそりとしていた。活気のある校庭とは正反対だ。
冬休みで上履きを家に持って帰っていたので、まずいと思いながらもスニーカーのまま通路を抜ける。
廊下には、俺と菜月のスニーカーの足音だけが響いている。
普段なら教師に注意されるだろう。生活指導担当の教師に見つかれば最悪だ。放課後に反省文でも書かされかねない。だけど今は誰もいない。階段まで教師のひとりともすれ違わなかった。冬休みでも何人かの教師はいるはずなんだけどな。職員室にでもいるんだろう。
「むふー」
階段の踊り場でマイちゃんが待っていた。
上の階から椎名先輩が下りて来る。
「先輩たちも、結局校舎に来たんですか?」
「ええ。部活を休んでる手前、校庭を通るのは気が引けて回り道をしたの。でも相馬くんとすれ違っちゃって」
「相馬から訊きました」
「えっ、そうなの!? 彼何か言ってた?」
椎名先輩と付き合っている疑惑をかけられました……とは言わないでおこう。
「いえ、特に何も」
「そう、なら良かったわ」
椎名先輩とマイちゃんは階段を上がって行った。俺と菜月もその後ろ姿を追いかけた。二階に上がると廊下を進んで行き、順番に教室に入っていく。二階には一年生の教室があり階段を上がって左手が音楽室、美術室、視聴覚室、調理実習室、理科室などの特別教室だ。その逆の右手が一組から始まって六組まである。俺たちが入ったのは俺のクラス、一年四組の教室だった。
先輩は窓際の前から二番目の席に手を触れている。その目は机をじっと見据えている。
「先輩? どうしたんですか?」
「隼人くん、この教室から何か感じるんだけど……」
椎名先輩は俺の反応を窺っているようだ。
【四大元素】ってそんなことまでわかるのか?
「何かって何です?」
「この席は誰のかわかる?」
「すみません、憶えてないです。窓際なら女子だと思うんですけど……そうだ、教卓に座席表が貼ってありますよ」
「そうなの?」
何だ椎名先輩の反応は。
どこのクラスでも、そうだと思っていたが違うのだろう。
菜月とマイちゃんは中学校の教室が珍しいのか、さっきから教室内のいたるところを物色していた。
何も出てこないよ。
「先輩のクラスは違うんですか?」
「ええ、私のクラスにはないわ」
「そうなんですね。とりあえず見てみましょう」
俺たちは教卓に貼りつけてある座席表を一緒に覗き込んだ。
ここにいるのは俺と菜月、そして椎名先輩とマイちゃんだ。
冬休み中ではあるが、部活動があるため校門は開いており、校庭からは野球部やサッカー部などの部活に勤しんでいる生徒の声が聞こえてくる。
とりあえず俺たちは、普通に学校の敷居をまたいだ。
別に校則違反ではないが、冬休み中に部活動をしていない一般生徒が学校内に入ることは極めてまれだろう。
しかも妹たちを連れてだ。
「隼人くん、私とマイはここから別行動するわ。対象の【逆徒】を見つけたら連絡してちょうだい」
「わかりました」
椎名先輩とマイちゃんは、学校を囲む塀沿いに駆け足で走っていった。
俺は菜月の頭を撫でながら頷いた。
「さて、菜月。俺たちは校庭を通って校舎に入ろう」
「うん。何だか緊張するね」
「大丈夫だ。俺がいれば何も恐くないからな」
「えへへー」
菜月は俺を頼りにしている。嬉しい限りだ。
この期待を裏切らないように行動しよう。
だが俺が校庭越しに校舎を見据えた瞬間、どこからともなく強烈な突風が襲ってきた。
俺はとっさに顔の前で腕をクロスさせて、【四大元素】で突風をやり過ごした。
もちろん菜月は俺の体を盾にして守っている。
突風は一時的なもので、俺は乱れた髪を手で直した。
「髪グチャグチャだよぅ」
「ほら、大丈夫だって」
俺は菜月の突風で乱れた髪を手ぐしで直してやる。
それにしてもおかしい。
今の風は自然なものじゃない。【逆徒】の仕業なのだろうか?
校庭には部活中の生徒しかいない。
椎名先輩たちの姿はもう見えない。この程度なら報告はしなくてもいいだろう。
俺はポケットに入れているスマホに触れてつぶやいた。
菜月と一緒にその場で辺りを見渡す。
時刻は午後十五時を少し回ったところだ。校庭では野球部、サッカー部、陸上部が練習していた。
うちの中学は市内でも部活動が盛んなほうで、学校側もかなり力を入れていた。なにしろ野球部、サッカー部、陸上部が一度に練習できるほどの広さををもった校庭は市内でもうちの中学ぐらいだからだ。校舎の裏側にはテニスコートが四面もある。おまけに水泳部用に室内プールまで完備ときている。体育での水泳の授業は校庭のはじにある屋外プールなのにだ。それもそのはず、水泳部に関しては全国大会に出たこともある超強豪校なのでVIP待遇も頷けた。
俺たちは部活動の邪魔にならないように、校庭を横切って校舎に向かって歩きだした。
五十メートルも歩かないうちに、サッカー部に所属する一年と目が合った。
夏休みに市民プールで俺を「ロリ」とからかった奴だ。
名前は相馬という。
「おっす、櫛木。何やってんだよ」
相馬は右手を上げて声をかけてきた。
「ああ、ちょっと野暮用でさ」
相馬は小学校が同じで、一緒にサッカーをやっていた。
身長百七十センチと中学生にしては恵まれたがっちりした体格だ。性格も明るくクラスでは人気者だった。俺とは小学一年の時に同じクラスになったのがきっかけで家が近いこともあり、よく一緒に遊んでいた。
菜月やマイちゃんと遊ぶようになってからは、まったく遊ばなくなってしまたのだが……。
何を隠そう、ここのサッカー部に美少女がいると教えてくれ、その美少女が椎名千尋という名前だと教えてくれたのは相馬なのだ。
中学に入学した当初に部活を決定する際、俺は当然サッカー部に入部する気でいたのだが、その時はマネージャーをしている椎名先輩の存在を知らなかった。
だけど、校庭で何度かすれ違った先輩を、俺は知らず知らずのうちに気にしていたようだ。
なので、相馬に訊いてみたのだ。
相馬はその性格のおかげで交友関係が広く、俺の知らない奴の名前までよく覚えていた。そして、「惚れたのか? チェックが早いなーこの野郎!」などと茶化しながら先輩の名前を教えてくれた。
「どうした? おまえ暇なら、また一緒にサッカー部で青春の汗を流さないか?」
相馬はドリンクのストローを咥えながら、俺たちの目の前までやってきた。
俺はため息を吐く。
相馬も俺がサッカー部に戻る気がないと知りながら、こうして声をかけているのだ。
「いや、サッカーはもういいや。今は勉強のほうに集中したくてさ。親がうるさいんだよ」
俺は適当に理由をでっちあげて答えた。
すると、相馬は何かに気がついたように目を丸くして、にやりと笑った。
「ああっ! そうかー、ついに行動に移したんだな!」
「え? なんのことだよ?」
「俺とおまえの仲でおとぼけは無しにしようぜ」
相馬はにやつきながら俺の両肩を強く掴んだ。
「でもな櫛木……。元サッカー部仲間としての忠告だ。ストーカーは犯罪だぞ」
「………………」
俺はジト目で相馬を睨み返した。
「お、怒るんじゃねえよ。あ、あれ? おまえ椎名先輩を追いかけて学校に来たんじゃないの?」
「え? お前椎名先輩に会ったのか? ついさっきまで一緒にいたんだけど」
「なんだ、やっぱり椎名先輩を追いかけて来たんじゃねえか。つうか、一緒にいたってどういうことだよ?」
相馬と話していると長くなりそうだ。どこかで切り上げないと。
だけど何て言えばいいんだろう……。
俺が返事を躊躇していると、相馬が何かを察した風に小声で言う。
「まさか……、櫛木って椎名先輩と付き合ってんの?」
「……え? ど、どう解釈したらそうなるんだよ!」
相馬は訝しむように、顎に手を当てながら俺を見る。
「椎名先輩さあ、顧問の話だと冬休みは家の都合で部活休むってことなんだよ。なのに今さっき俺がドリンク取りに部室に行ったら、すれ違ってさ……。急いでたみたいだから、声はかけれなかったんだけど」
「そうか」
「部活休んでる椎名先輩と、部活を辞めた櫛木を同じタイミングで見かけたら、怪しくないか? と言うか、本当に付き合ってないんだろうな! 抜け駆けは許さねえぞ!」
相馬はひとりで興奮して、俺の肩を激しく揺さぶった。
この勘違い野郎め。それが事実なら俺が嬉しいわ!
「ん? ところで、この子は誰だ?」
相馬はやっと菜月の存在に気づいたらしい。
菜月は俺の後ろに隠れる。
「俺の妹だ。夏休みでプールで見ただろ?」
「あ、そう言えば……見たような」
相馬が思い出したように手を打ったタイミングで、背後から声がかかる。
「相馬―っ! いつまで休憩してんだよ!」
「あっ! やべっ二年だ! さーせんっ!」
ちらりと肩越しに様子を見ると、サッカー部の二年生らしき部員が近づいてきた。
俺と話しているのをサボっていると勘違いされたようだ。バカな奴だ。
「じゃ、部活頑張れよ」
俺は相馬に言うと、菜月の手を引っ張って校舎のほうに足早に向かった。
背中越しに相馬が二年の先輩に叱られているのが聞こえた。
「お兄ちゃん、さっきの人はお友達なの? ビックリして挨拶できなかった」
「サッカー部で一緒だった奴だ。別に忘れていいぞ」
数十秒後、俺たちは校舎の入り口まで来ることができた。
中に入ると靴箱のところに人影はなく、ひっそりとしていた。活気のある校庭とは正反対だ。
冬休みで上履きを家に持って帰っていたので、まずいと思いながらもスニーカーのまま通路を抜ける。
廊下には、俺と菜月のスニーカーの足音だけが響いている。
普段なら教師に注意されるだろう。生活指導担当の教師に見つかれば最悪だ。放課後に反省文でも書かされかねない。だけど今は誰もいない。階段まで教師のひとりともすれ違わなかった。冬休みでも何人かの教師はいるはずなんだけどな。職員室にでもいるんだろう。
「むふー」
階段の踊り場でマイちゃんが待っていた。
上の階から椎名先輩が下りて来る。
「先輩たちも、結局校舎に来たんですか?」
「ええ。部活を休んでる手前、校庭を通るのは気が引けて回り道をしたの。でも相馬くんとすれ違っちゃって」
「相馬から訊きました」
「えっ、そうなの!? 彼何か言ってた?」
椎名先輩と付き合っている疑惑をかけられました……とは言わないでおこう。
「いえ、特に何も」
「そう、なら良かったわ」
椎名先輩とマイちゃんは階段を上がって行った。俺と菜月もその後ろ姿を追いかけた。二階に上がると廊下を進んで行き、順番に教室に入っていく。二階には一年生の教室があり階段を上がって左手が音楽室、美術室、視聴覚室、調理実習室、理科室などの特別教室だ。その逆の右手が一組から始まって六組まである。俺たちが入ったのは俺のクラス、一年四組の教室だった。
先輩は窓際の前から二番目の席に手を触れている。その目は机をじっと見据えている。
「先輩? どうしたんですか?」
「隼人くん、この教室から何か感じるんだけど……」
椎名先輩は俺の反応を窺っているようだ。
【四大元素】ってそんなことまでわかるのか?
「何かって何です?」
「この席は誰のかわかる?」
「すみません、憶えてないです。窓際なら女子だと思うんですけど……そうだ、教卓に座席表が貼ってありますよ」
「そうなの?」
何だ椎名先輩の反応は。
どこのクラスでも、そうだと思っていたが違うのだろう。
菜月とマイちゃんは中学校の教室が珍しいのか、さっきから教室内のいたるところを物色していた。
何も出てこないよ。
「先輩のクラスは違うんですか?」
「ええ、私のクラスにはないわ」
「そうなんですね。とりあえず見てみましょう」
俺たちは教卓に貼りつけてある座席表を一緒に覗き込んだ。
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