上 下
15 / 53
第1章 「俺の【四大元素】編」(俺が中一で妹が小三編)

第15話 エロいお姉さんは俺に羞恥プレイを強要する

しおりを挟む
「家族構成……ですか? ええと一緒に住んでるのは両親と妹です」
 
 奇妙な質問が始まった。
 家族構成から訊かれて、他愛もない質問と応答を繰り返す。これに何か意味はあるのだろうか?
 俺は叔父さんの店――CDショップ――でのバイト面接の帰り、中学の先輩である椎名先輩を見かけて掃除を手伝ったお礼にとこの探偵事務所に案内された。
 そしてこの質問攻めだ。まだ時間がかかるのだろうか。こんなに長居するつもりはなかったのだけど。菜月がひとりで留守番してるんだ。俺がいなくて寂しい思いをしているだろう。早く帰って、昼食を作ってやらないといけないし……。

「女性のおっぱいとお尻では、どちらが好きだ?」
「ふへっ!?」

 急に変な質問を投げられて、変な声が出てしまった。
 蘭子さんは真剣な表情だ。
 おっぱいとお尻どっちが好きかって? そんなの決まってる! 俺の中には明確な答えがあるっ! だが椎名先輩の前でそれを晒すのか? どんな羞恥プレイだよ!?
 先輩はわざとらしく咳払いをして「蘭子さん! 真面目にっ!」と抗議している。

「これはある意味、非常に重要な質問だ。きみには答える義務がある」
「わ、わかりました……。強いて言うなら……あくまで強いて言うならですけど……お尻ですかね」
「なるほど。では女性のパンティで好きな色は? 加えて形状まで教えてくれると、なお助かる」
「えっ!?」

 何だこの質問は!? 蘭子さんみたいなエロいお姉さんに訊かれると、もの凄く興奮するけど! 当然、明確な答えはあるけども! 椎名先輩の前でそれを言わせるのかっ!? 一度ならず二度までも!?
 机で作業をしている先輩に目をやると、死んだ魚のような目で蘭子さんを見ていた。
 ええーい! こうなりゃヤケだ! 言ってしまえ!

「そんなこと考えたこともないですが、強いて言うなら好きな色は白より黒。デザインはシンプルなほうが好みですね。素材は……」
「素材までは訊いていない」
「あ…………」

 俺の背中に冷たい汗が流れる。
 蘭子さんは作り笑いで、椎名先輩に言う。

「千尋、ちゃんと訊いたか? 櫛木くんはおっぱいよりお尻が好きで、パンティの色は黒でシンプルなデザインが好みらしい。参考にするように」
「もうっ! どうして私が参考にするんですかっ!」

 椎名先輩は俺に警戒したのか、お尻の向きをあからさまに俺から遠ざけて座り直した。そして膝の上に両手を置きスカートを押さえた。
 というか、この距離でそこまで警戒するのか……。
 ダメだ。先輩の俺に対する好感度が下がっていく……。
 蘭子さんは俺に向き直って、改めて質問を続けた。

「今まで大きな怪我や病気をしたことはあるか?」

 怪我、病気。これまた思いがけない質問だった。前の質問と何の脈絡もない。だけど俺は答えなければいけないような気がした。

「幼いころは病気がちだったみたいです。あまり憶えていませんが。あと小学校一年の時に腕を骨折しました」
「骨折ね。ここ数年では?」
「え、数年というと?」
「そうだな。一年以内ではどうだ?」
「一年以内……ですか?」

 うーん。一年以内というとアレしか思いつかないな。

「あの、五ヶ月ほど前に大怪我をしまして……」
「ほう大怪我? どんな?」
 
 俺はどう説明すればいいかわからなかった。
 五ヶ月前のあの日、俺はある事件に巻き込まれた。
 死ぬかと思うほどの大怪我をした。
 だけど病院に入院していたものの、胸の傷跡は残ったが命に別状はなかった。
 CTスキャンやMRIなどの精密検査を受けたのだが、内臓の損傷も見られなかった。
 だが怪我をした瞬間、俺は確かに血を吐いてぶっ倒れたはずだった。
 あの胸の痛みと頭痛、吐き気は今でも憶えている。

 俺が上手く説明できず途切れながらもあの時の話を一部始終話すと、蘭子さんが何かに反応したように目を細めた。
 
「これが最後の質問」
「はい、何ですか……?」

 蘭子さんは肺に溜まった煙をすべて吐き出すように、長く息を吐いた。

「自分に特殊な能力があると感じたことはあるか?」
「…………は?」

 何だ……? この質問は?
 この人は何を言っているんだ?

「え……、能力? いや、俺はいたって普通の中学生ですよ」

 わかってて訊いているのか?
 あの不思議な力……【四大元素】のことを。
 蘭子さんが俺を凝視する。その目は真剣だ。数秒の沈黙のあと、

「ありがとう。はい、面接終わり」

 そう言って、蘭子さんは胸の前でぱんと手を叩いた。

「ちょっ……! 面接って!?」
 
 俺は蘭子さんの言葉が理解できなかった。
 はて? これは面接だったのかと眉をひそめて考える。

「蘭子さん、どうでした?」
 
 口を開いたのは椎名先輩だった。
 蘭子さんはタバコを灰皿に押し付けると、胸の前で腕を組んだまま「うーん」と考え込んでしまった。
 俺はわけがわからず、蘭子さんと先輩を交互に見ることしかできなかった。
 灰皿の中のタバコの煙が完全に消えた時、蘭子さんは意を決したように言い放った。

「ほぼ確定だろう。さっそくだが明日から来てもらおうか。今日からと言いたいんだが、きみ向けの案件はまだ準備が整っていないんだ」
「……え?」

 俺は驚きのあまり目が点になる。千尋は納得したように頷いている。わかってないのは俺だけだ。

「あの……確定って何がなんですか? 意味がわからないんですが……」
 
 ローテーブルの上に強く手をついて身を乗り出したので、マグカップが揺らぎ危うく冷めたココアが零れそうになる。そのマグカップを蘭子さんが押さえてくれたおかげで、ココアはローテーブルを汚さずに済む。

「説明はする。すぐには理解できないと思うが訊いてくれ」

 蘭子さんは腕を組んだままだ。
 すると椎名先輩が席を立って、俺の方に近づいて来た。

「ごめんね櫛木くん。私が騙して連れてきたようなものだから……」
「騙すって……俺は騙された……んですか?」

 椎名先輩は申し訳なさそうな顔をして、それ以上は口をつぐんでしまった。

「あたしが頼んだんだから、千尋が気に病むことはない」
「どういうことなんですか……?」
「おめでとう。きみは今から晴れてあたしたちの仲間だ。これから宜しく頼むぞ」
「はい?」

 わけがわからなくなって俺の隣に立つ椎名先輩を見ると、両手の拳を握ってガッツポーズで力強く頷いていた。
 先輩……その仕草めっちゃ可愛いんですが、俺話についていけてません。どういうことでしょう……?

「それでは、説明を始めようか」
 
 蘭子さんはタバコに火をつけた。
 改めて椎名先輩が俺の隣に座る。

「あたしたちと一緒に、正義のためにきみの持ってる能力を使わないか?」

 何を言ってるんだ!? 俺の頭は混乱した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

男女比の狂った世界は、今以上にモテるようです。

狼狼3
ファンタジー
花壇が頭の上から落とされたと思ったら、男女比が滅茶苦茶な世界にいました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...