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第1章 「俺の【四大元素】編」(俺が中一で妹が小三編)

第11話 俺は「シスコン」と「ロリコン」の称号を獲得した

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 ある日の放課後。
 俺は学校から帰宅して、リビングで菜月とTVゲームをしていた。
 発売されてから結構経つのに、人気が衰えない【大乱闘!スカッとシスターズ】だ。
 このゲームは格闘ゲームなのだが、俺も菜月も一切コントローラに触れずにプレイしている。

「菜月このコンボはどうだ!」
「ああん、もうっ! もう一回! ねぇ、もう一回しよ?」

 俺はグラスに注がれたコーラを手にしながら、ソファに寝そべっている。
 菜月は両手を膝の上に置いたままだ。
 俺たちは今、【四大元素】の力だけでコントローラを操作していた。
 もうこんなことまで、できてしまうのだ。

 最初はコントローラのボタンひとつ押すことさえ苦労した。押す力が足りなかったのだ。それが徐々に押す力が増していき、今では絶妙な力加減で操作していた。
 テーブルの上に置かれたコントローラが、カタカタと軽快な音を刻みながらボタンが押下されるのは、まるでポルターガイスト現象だ。
 
 この時間は母さんもパートに行っているので、あと一時間はゲームで遊べるだろう。
 菜月が負ける度に、もう一回もう一回と俺の膝を揺さぶってせがんでくる。本当に可愛い妹だ。
 今日はいないが、マイちゃんを含めて三人で外で遊ぶときも【四大元素】の鍛錬を怠ってはいない。
 使えば使うほどこの力は俺に馴染んでくる。どこまで成長するのか、菜月の成長を見守るのと同じぐらい興味がある。

「あ、コーラなくなったな。おかわりしよ。菜月もまだ飲むか?」
「うん。私も飲むー」
「わかった。俺が入れてきてやるよ」
「お兄ちゃん、ありがとー」

 俺は自分のグラスと、菜月の目の前に置かれている残り少なくなったコーラが入ったグラスを手を使わずに持ち上げる。

「落とさないでね!」
「おう、任せろ」

 この間は力を過信して失敗したが、もう大丈夫だ。
 俺は二つのグラスを冷蔵庫の前まで移動すると、空中で停止させた。
 改めて神経を集中させて、冷蔵庫をゆっくり開く。当然手は使わない。
 冷蔵庫から取り出したコーラのペットボトルから、空中に停止中のグラスにコーラを注いでいく。
 この操作が結構難しいのだ。本当に繊細な操作力が要求される。
 菜月は俺の成功を祈るように冷蔵庫の前まで移動して、ぎゅっと目を瞑って手を組んでいる。

「目開けてみ?」
「あっ……!?」

 菜月が目を大きく見開いて、中に浮かんだグラスにコーラが注がれる様を見た。
 コーラがグラスに並々と注がれる様子を感心して見ていた菜月は、そらもう大興奮だ。目をキラキラさせて、俺とグラスを交互に見る。「凄い……」と小さな声で漏らしていた。
 ふっ、わかるぞ。菜月の俺に対する好感度が上がった。
 俺は得意満面で、菜月の頭を撫でた。

 それが油断というやつだ。
 一瞬集中を途切れさせてしまった俺が、「しまった!」と思った時には遅かった。
 グラスが急降下し床に落ちて割れた。

「あっちゃー……!」
「……お兄ちゃん。最後気ぃ抜いたでしょ?」
「……ははは」

 俺は乾いた笑いしかでなかった。
 俺が割れたグラスを拾い上げていると、菜月が掃除機を持ってきて細かい破片を吸い取ってくれる。

「お兄ちゃん、そこ危ないから、どいてて」
「……はい」

 俺はがっくりと肩を落とした。菜月の俺に対する好感度が下がった。
 菜月が綺麗に片付けてくれて、新しいグラスにコーラを注いで持ってきてくれた。
 本当に気の利く妹だ。俺の菜月に対する好感度は上がった。
 こうして俺と菜月は母さんが帰ってくるまで、仲良くゲームをして過ごした。

 母さんが帰って来てからは、夕食の時間まで俺と菜月は宿題に取りかかった。
 菜月の宿題に付き合って、俺も勉強をする習慣がつき学力も徐々に向上していた。次の中間テストは期待できそうだな。
 妹と遊ぶといいこと尽くしだ。


    ◇ ◇ ◇


 二年生の先輩から放課後に屋上に来て欲しいと呼び出された。
 喧嘩じゃない。俺を呼び出したのは女子だった。靴箱に手紙が入っていたのだ。女の子らしい可愛らしい文字が書かれていた。
 俺は多分告白でもされるのだろう。
 
 予想通りだった。二年生の先輩は頬を赤く染めながら、俺に付き合って欲しいと告白した。
 俺よりひとつ上の先輩は、妙に大人っぽく高校生ぐらいの色気を感じさせた。はっきり言おう、そこそこ美人でエロかった。
 気持ちは嬉しいが、俺は彼女を傷つけないようにやんわりとお断りした。この先輩のルックスなら、彼氏のひとりや二人ぐらい余裕で作れるだろう。彼女の新しい恋を心の中で応援する。
 目に涙を浮かべながら、先輩は笑って屋上をあとにした。
 
 同じ二年生に椎名先輩という学校一の美少女がいるのだ。どうしたって見劣りしてしまう。
 そういえば、二学期になってから一度も椎名先輩とは会えていない。
 どうしているかな……。
 俺は屋上の柵越しに校庭を覗き込んだ。
 野球部とサッカー部が練習をしている。俺の目は椎名先輩を探していた。

「…………あ、いた!」

 サッカー部のマネージャーだから、すぐに見つけることができた。
 遠目からでも、やっぱり可愛いなあ。

「そっか。放課後はすぐに帰るから、サッカー部の練習を見る機会なんてないもんな……」

 俺は策にもたれかかりながら、椎名先輩を見ていた。
 ジャージ姿もいいなあ。
 そうだ! 今校庭に行ったら先輩に会えるじゃん!
 俺は駆け足で階段を下りていく。急いで靴を履き替えて、偶然を装いサッカー部の近くを通って校庭を横切った。
 椎名先輩との距離が迫ってくる。丁度顧問の先生が場を離れるようだ。
 今だ! 俺は早歩きで先輩との距離を一気に詰めた。

「あ!? 櫛木くんじゃない!」
「え、ええ!? こ、これは椎名先輩じゃないですか!」
「今帰りなの?」
「そうなんです! いやー奇遇だなあ。こんなところで先輩に会えるだなんて!」
「……櫛木くん? さっきからリアクションがかなりオーバーじゃないかしら?」
「ええっ! そ、そうですか? いや、これが普通ですよ! はは……」
「そうかしら……? 夏休みにプールで会ったときは、もっと普通におしゃべりできてたと思うけど……」
「………………」
「どうしたの? 急に黙って……」
「すみません! 先輩と話せると思ったら舞い上がっちゃって、テンションおかしくなってましたあ!」
「もう、やだぁ櫛木くんったらー」

 椎名先輩はくすりと笑って、俺の肩を軽く叩いた。
 さり気ないボディタッチ最高っす。いい匂いがするっす。
 俺はそれで緊張が解けて、普通に椎名先輩と会話ができた。他愛もない世間話やTVでの芸能人のゴシップの話題だけだったが濃密な時間を過ごせた。
 十分ほどで顧問の先生が戻ってきたので、俺は椎名先輩に挨拶をして帰宅することにした。

 久し振りに椎名先輩と会話した俺は、テンションが上がり家に帰る途中コンビニでアイスを二つ買う。
 家に帰ると菜月はもう帰宅していた。玄関にはもう一足女の子の靴がある。
 あ、今日はマイちゃんが遊びに来ていたのか。

「ただいまー」
「お帰りっ! お兄ちゃん!」
「あなたぁ! おかえりなさぁい!」

 はは……。マイちゃんは相変わらずだな。もう少し大きくなったら、俺のハーレムに加えてあげよう……なんてな。
 今日はマイちゃん珍しくスカートか。白のワンピースを着ている。小麦色の肌に似合っているな。このワンピース椎名先輩も似合いそうだな。ああ、先輩の私服見てえなあ……。
 俺の視線が自分のワンピースに釘付けだと察した風に、マイちゃんはその場でくるりと一回転して見せる。スカートがふわっと舞い上がった。

「いいでしょー? あ、今パンツ見えちゃった?」
「大丈夫、見えてないよ。可愛くて良く似合っているね」
「うん。お姉ちゃんのお下がりだけどね」
「ふうん、そうなんだ? お姉ちゃんいたんだね」

 パンツが一瞬見えたことは黙っていてあげよう。俺は紳士だからね。
 それにしても、お姉ちゃんか……同じ小学校なのかな?
 俺がリビングを見渡すと、TVにはゲーム画面が映し出されている。二人でゲームをしていたようだ。
 二つ買ったアイスのひとつは俺の分だったが、別に構いやしない。
 俺はコンビニ袋からアイスを出して、二人に手渡した。

「アイスだー! わーい、ありがとー!」
「お兄さん気が利くぅ!」
「どうぞ、どうぞ。溶けないうちに食べちゃって」

 二人はソファに仲良く並んで座り、俺がゲームをひとりプレイで無双しているのを鑑賞しながらアイスを食べた。
 途中でマイちゃんが俺の膝に乗ってきて、食べかけのアイスを差し出して「ねぇん。食べさせてぇ」などと猫なで声で誘惑してきた。
 マイちゃんの柔らかいお尻の感触が、俺の太ももに伝わってくる。 
 結局マイちゃんは俺の上が気に入ったのか、アイスを食べ終わったあとも動こうとせずにそのままゲームをしている。
 菜月は嫉妬したのかマイちゃんより時間をかけてアイスを食べ終わると、急に俺に抱きついてきた。
 そして俺の空いているほうの膝に座るのだった。
 おい。信じられるか? 小学生が二人で俺の膝を占領しているんだぞ! 流石に少し重かったが、嬉しさで十分カバーできた。

「ねぇ、お兄ちゃん。今日学校でいいことでもあったの?」
「ん、え? ……わかるか?」
「わかるよぅ。だってすっごくにこにこしてるんだもん。アイスまで買ってきてくれたし」
「にゃはは! お兄さん私たちに凄い優しいんだもん。きっとシスコンでロリコンだねっ!」
「なっ……!? シスコンでロリコンって……」

 俺はシスコンとロリコンをダブル認定されてしまった。
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