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第1章 「俺の【四大元素】編」(俺が中一で妹が小三編)

第10話 俺は体育館裏で無双した

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 ヤンキーが股間の痛みから回復し悪態をつきながら「ついてこい」と言うので、俺は静観していたクラスメイトに「大丈夫だから、安心しろ」という風に頷きながら教室を出て行った。
 窓から外を見ると、小雨が降り始めている。
 朝食時に家で見たTVの天気予報では、夕方から雨だと言っていた。本降りになるまでには帰れるだろうと思っていたが、こいつのせいで無理になった。余計に腹が立つ。
 今日は菜月とTVゲームをする予定があったのだ。
 何というゲームだったか。……そうそう【大乱闘スカッとシスターズ】だ。
 ああ、早く終わらせて帰りたい。

 で、辿り着いたのはお約束の体育館裏だった。
 学校の一番端にあり何もないので、誰も通らない場所だ。

 俺を待っていたのは八人の不良グループだ。さっきの奴と合わせて、全員で九人いる。
 体育館裏には、教室で不要になった廃棄予定の机や椅子が積み上げられていた。
 その机のひとつに偉そうに座っているヤンキーが、おそらくリーダーなのだろう。他の奴らは立っていたから、そこから判断できた。
 全員が知らない顔だったので、多分二年か三年の奴らだ。

「大石さん! 連れてきました。こいつが一年の櫛木です」
「おう、ご苦労さん」

 リーダーは大石というらしい。
 こいつも金髪にピアスか。偉そうに人をこんなところに呼び出しやがって。
 さっき悶絶していたヤンキーは、このグループ内じゃただのパシリなのだろう。大石に報告すると、取り巻きの中に加わった。

「お前が櫛木か。何か最近女どもに騒がれてるらしいな?」

 何だこいつら、ただの嫉妬で俺を呼び出したのか?
 菜月と遊ぶ貴重な時間を奪ったヤンキーたちへの怒りが、ふつふつと湧いてきて俺も喧嘩越しで応えることにした。

「時間がないから、とっととかかってこいアホども」

 俺は大石から視線を逸らすことなく、中指を立てて挑発した。
 途端、大石を始め不良グループが激高し、口々に罵声を浴びせてくる。

「なっ……! てめぇ、舐めてんのか?」
「このクソガキがっ! 調子に乗るんじゃねぇ!」
「大石さん! この一年坊主は俺がシメますよっ!」
「ふっざけんなよ! 一年がっ!」

 大石が顎をしゃくると、背の高いヤンキーが俺の前に立ちはだかった。
 俺より頭ひとつ分高いから、身長は百七十センチぐらいだろう。
 そいつはこれ見よがしに俺の前で、ポキポキと指を鳴らして威嚇する。

「やっちまえ」
「うっす」

 大石の合図で、そいつは俺に殴りかかった。
 だが簡単に殴られる俺じゃない。俺は大きく仰け反って躱す。二発、三発と続けてパンチを繰り出してくるが、俺には当たらない。【四大元素】の力を活用して、襲いかかるパンチをすべて躱す。

「どうした? もう終わりか?」
「っせーな! 今からが本番だっ!」

 何が本番なんだか。
 俺はパンチを軽く躱すと足払いでそいつの足をすくう、バランスを崩したそいつは頭を低くしたので俺はその頭を掴んで地面に叩きつけた。
 普通なら大怪我してしまうだろう。だから俺はそいつの頭が地面に激突する瞬間に、空気のクッションを敷いていた。それでもそいつの脳は揺れたようで、そのまま地面に倒れ込んだ。

「もう面倒臭いから、全員まとめてかかってこい」
「てめー! やってやらぁ!」

 俺の安い挑発にヤンキーは激高して、大石を除く全員が一斉に動いた。
 だが俺の敵ではない。
 俺はヤンキーたちの攻撃をかいくぐり、次々とのしていく。
 三分後、地面に倒れていたのは八人のヤンキーだ。
 ヤンキーが悲痛な面持ちで大石に助けを請うが、その大石は俺の立ち回りを見て萎縮してしまっていた。

「なっ……、何なんだよお前っ!? こんなに喧嘩慣れしてるなんて訊いてねえぞっ!?」
「あとは大石先輩、あんただけだぞ?」

 雨が強くなってきた。俺はひとつ試してみたいことがあったのだ。
 降りしきる雨を一点に集中させる。今の俺には可能な操作だ。
 大石は足がすくんでその場を動けないでいる。

 バシャアアアアッ!

「うわっ! なっ……何だっ!?」

 大石は頭からバケツの水を被ったようにずぶ濡れになった。
 俺は大石の胸ぐらを掴むと、そのまま校庭に移動する。最後の仕上げをするために。
 本来なら身長も体重も俺よりある大石を運ぶのは無理だろう。だが俺は【四大元素】の力を使ってるから易々と大石を引きずっていく。
 他のヤンキーはわけもわからずに、俺のあとをついてくる。

 校庭のど真ん中で、俺は大石を投げ飛ばした。
 大石は完全に戦意喪失していた。
 下校中なので大勢の生徒が見ている中、俺は不良集団に勝利した。
 男子は畏怖の目で女子は羨望の目で、俺を眺めている。

「おい。誰か傘持ってないか?」

 俺はヤンキーに訊くと、俺の教室に乗り込んできたヤンキーが校舎に傘を取りに行って俺に手渡した。

「櫛木さん! どうぞ、これ俺の傘っス!」
「いいのか? お前はどうやって帰るんだ?」
「俺はもう一本あるんで、大丈夫っス!」
「そうか。じゃあ借りるわ。サンキュー。明日ちゃんと返すから」

 俺は傘をさして家路を急いだ。
 早く帰って菜月と遊ぶんだもん!


    ◇ ◇ ◇


 翌日、俺は傘を返すために二年の教室を回っていた。クラスも名前も訊いていなかったので、一組から順番に回っていたのだが三組目で見つけることができた。
 俺と目が合ったヤンキーは一瞬固まっていたが、俺が傘を返すと恐縮しながら受け取った。

 俺が不良グループに勝ったことは、瞬く間に広まっていたようだ。
 明らかに女子にもモテ始めた。
 スポーツができて、喧嘩も強い。かといって、生徒を威嚇するわけでもなく気軽に雑談もする。そんな俺の好感度は目に見えて急上昇していった。

 そして俺は、いつのまにか学校一の不良グループのリーダーにされていた。大石を始め上級生のヤンキーが、金魚のフンの如く俺のあとをついてくる。
 まあリーダーといっても、俺はこいつらが悪さをしないための抑止力的な存在でいるつもりだ。
 俺はいい意味で教師からも一目置かれる存在になっていた。
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