4 / 53
第1章 「俺の【四大元素】編」(俺が中一で妹が小三編)
第4話 妹との秘密の遊び
しおりを挟む
翌日から俺と妹の秘密の遊びが始まった。
この話を知られたところで、誰も信じてくれないだろう。
菜月は午後になると、すぐに病院へと来てくれた。
午前中は母さんが来るので、菜月には昼からおいでと声をかけていた。
左右を目視して部屋の扉を閉めると、ベッドの脇にある台にランドセルを無造作に置く。
「準備はいいか?」
「うん……。いいよ」
菜月も今日は何をするのかわかっている。昨日二人で秘密を共有したのだから。
俺は菜月がベッドの横にある椅子に座るのを待ってから、窓を指さした。窓のカーテンが閉まっている。
今朝、母さんが来たときに、今日は日差しが強いからカーテンを閉めてと頼んでいたからだ。
正直、日差しなんかどうでもいい。これは菜月と遊ぶための準備なのだから。
「俺から行くぞ。そいやー」
「わあ!」
俺がカーテンに向かって手を振った。すると、カーテンはまるで強風に煽られたように、大きくなびいた。
菜月が感心して、パチパチパチと手を叩いてくれる。
「次は菜月の番だ。やってみろ」
「うん! いっくよー!」
菜月が両手を耳の真横で広げてから、「えいっ!」と押し出す動作をとった。
俺の予想通りカーテンは菜月の操作した風を受けて、ゆらゆらと揺れている。
昨日、菜月の【四大元素】を見せてもらったが、操れる力は俺のほうが大きいみたいだ。
俺と菜月はカーテンに風を送るという遊びを、ひたすら繰り返した。
繰り返すことでわかったのは、この【四大元素】の力は……例えば今使ってる【風】で言うと、手から風を出しているのではなく、今この部屋にある空気を自在に操って風を作っているということだ。
この理屈でいくと、まだ試してはいないが屋外で【風】を使った場合、おそらく台風並みの暴風を作ることも可能だろう。
だけど今のままじゃ、【四大元素】を自在に操る力が足りない。
前から薄々感づいてはいたが、どうやら菜月と一緒だと俺の力は増すようだ。と言うか菜月がいないと、ほとんど力が出せない。これについては理由はわからない。
菜月は俺がいなくても、ひとりでできたというのに……。
だから、菜月と遊んで遊んで遊びまくって、できることを増やしていこう。
その日は【風】を使って遊んだ。
明日は【水】、その次は【火】というように、まんべんなく力をつけていくべきか、とにかく【風】を重点的にやるのか、悩むところだ。
俺がそう考えていると、菜月はもう飽きてしまったようだった。仕方ない……もうかれこれ二時間はやっていたからな。
菜月が今日は帰ると言うので、今日の遊びはこれで切り上げよう。
「あのね、お兄ちゃん。明日はクラスの友達を連れて来てもいい?」
「……えっ?」
「お兄ちゃんが入院してることをSNSで話してたら、みんなが来たいっていうの。駄目?」
「SNSって……。いいか、菜月。病院は遊ぶところじゃないんだぞ。他にも入院している患者さんや、通院している人もいるんだから、駄目に決まってるだろ」
「え……でも、私とお兄ちゃんのこれは遊びなんでしょ?」
「あう……。そ、そうだな。わかった。みんなは無理だけど……じゃあ、ひとりだけだ。ひとりだけなら連れてきていいぞ」
「ほんと!? やったー! じゃあマイちゃん連れてくるね」
「ああ。わかったよ」
俺と菜月で秘密の遊びをするつもりだったが、明日は友達を連れてくるようだ。……貴重な一日が。
「じゃあね、お兄ちゃん。ばいばーい」
「また明日な」
菜月が帰った。
もうすぐ夕食の時間だな……。
軽く目を閉じたつもりだったが、俺はそのまま眠ってしまった。
◇ ◇ ◇
女は躊躇することなく男の目を抉った。
俺は信じられない現場を目撃した。女が男の目にナイフを突き刺したのだ。
恐怖で足が竦み、小刻みに震えているのがわかる。
女に殺されたと思った男が、左目にナイフが刺さったまま立ち上がったのだ。
もはや、その顔からは笑みは消えていた。
「いやぁ……、お強い。僕の初撃をこんな返し方するなんてねぇ。このままだと負けそうですよ」
女は後ろに跳びすさる。
男が左目に刺さったままのナイフの柄に手を触れると、ナイフはガラス細工のように砕け散った。
俺には何が起こったのか、理解できない。
女も表情は見えないが、全く動じた様子もない。
その時、俺は汗で手を滑らしてコンビニのビニール袋を落としてしまった。
真下の水たまりに、カップのアイスと炭酸飲料のペットボトルをぶちまける。
まずい! と思ったが、足がすくんで動かない。
俺は恐る恐る、首だけをゆっくりあげて二人を見る。
女も振り返ってこちらを凝視していた。
二人とも、訝しげな表情をしている。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺は恐怖のあまり叫んだ。後ずさろうとするが、足が上手く動かずに、その場で尻餅をついてしまう。
「おやおや、子どもがこんな時間に散歩ですか? 感心しませんねぇ。見られたからには生かしてはおけませんねぇ」
男は再び厭らしいにやけ顔を浮かべると、俺の胸に手を伸ばした。
「おやすみなさい――――永遠にね」
この話を知られたところで、誰も信じてくれないだろう。
菜月は午後になると、すぐに病院へと来てくれた。
午前中は母さんが来るので、菜月には昼からおいでと声をかけていた。
左右を目視して部屋の扉を閉めると、ベッドの脇にある台にランドセルを無造作に置く。
「準備はいいか?」
「うん……。いいよ」
菜月も今日は何をするのかわかっている。昨日二人で秘密を共有したのだから。
俺は菜月がベッドの横にある椅子に座るのを待ってから、窓を指さした。窓のカーテンが閉まっている。
今朝、母さんが来たときに、今日は日差しが強いからカーテンを閉めてと頼んでいたからだ。
正直、日差しなんかどうでもいい。これは菜月と遊ぶための準備なのだから。
「俺から行くぞ。そいやー」
「わあ!」
俺がカーテンに向かって手を振った。すると、カーテンはまるで強風に煽られたように、大きくなびいた。
菜月が感心して、パチパチパチと手を叩いてくれる。
「次は菜月の番だ。やってみろ」
「うん! いっくよー!」
菜月が両手を耳の真横で広げてから、「えいっ!」と押し出す動作をとった。
俺の予想通りカーテンは菜月の操作した風を受けて、ゆらゆらと揺れている。
昨日、菜月の【四大元素】を見せてもらったが、操れる力は俺のほうが大きいみたいだ。
俺と菜月はカーテンに風を送るという遊びを、ひたすら繰り返した。
繰り返すことでわかったのは、この【四大元素】の力は……例えば今使ってる【風】で言うと、手から風を出しているのではなく、今この部屋にある空気を自在に操って風を作っているということだ。
この理屈でいくと、まだ試してはいないが屋外で【風】を使った場合、おそらく台風並みの暴風を作ることも可能だろう。
だけど今のままじゃ、【四大元素】を自在に操る力が足りない。
前から薄々感づいてはいたが、どうやら菜月と一緒だと俺の力は増すようだ。と言うか菜月がいないと、ほとんど力が出せない。これについては理由はわからない。
菜月は俺がいなくても、ひとりでできたというのに……。
だから、菜月と遊んで遊んで遊びまくって、できることを増やしていこう。
その日は【風】を使って遊んだ。
明日は【水】、その次は【火】というように、まんべんなく力をつけていくべきか、とにかく【風】を重点的にやるのか、悩むところだ。
俺がそう考えていると、菜月はもう飽きてしまったようだった。仕方ない……もうかれこれ二時間はやっていたからな。
菜月が今日は帰ると言うので、今日の遊びはこれで切り上げよう。
「あのね、お兄ちゃん。明日はクラスの友達を連れて来てもいい?」
「……えっ?」
「お兄ちゃんが入院してることをSNSで話してたら、みんなが来たいっていうの。駄目?」
「SNSって……。いいか、菜月。病院は遊ぶところじゃないんだぞ。他にも入院している患者さんや、通院している人もいるんだから、駄目に決まってるだろ」
「え……でも、私とお兄ちゃんのこれは遊びなんでしょ?」
「あう……。そ、そうだな。わかった。みんなは無理だけど……じゃあ、ひとりだけだ。ひとりだけなら連れてきていいぞ」
「ほんと!? やったー! じゃあマイちゃん連れてくるね」
「ああ。わかったよ」
俺と菜月で秘密の遊びをするつもりだったが、明日は友達を連れてくるようだ。……貴重な一日が。
「じゃあね、お兄ちゃん。ばいばーい」
「また明日な」
菜月が帰った。
もうすぐ夕食の時間だな……。
軽く目を閉じたつもりだったが、俺はそのまま眠ってしまった。
◇ ◇ ◇
女は躊躇することなく男の目を抉った。
俺は信じられない現場を目撃した。女が男の目にナイフを突き刺したのだ。
恐怖で足が竦み、小刻みに震えているのがわかる。
女に殺されたと思った男が、左目にナイフが刺さったまま立ち上がったのだ。
もはや、その顔からは笑みは消えていた。
「いやぁ……、お強い。僕の初撃をこんな返し方するなんてねぇ。このままだと負けそうですよ」
女は後ろに跳びすさる。
男が左目に刺さったままのナイフの柄に手を触れると、ナイフはガラス細工のように砕け散った。
俺には何が起こったのか、理解できない。
女も表情は見えないが、全く動じた様子もない。
その時、俺は汗で手を滑らしてコンビニのビニール袋を落としてしまった。
真下の水たまりに、カップのアイスと炭酸飲料のペットボトルをぶちまける。
まずい! と思ったが、足がすくんで動かない。
俺は恐る恐る、首だけをゆっくりあげて二人を見る。
女も振り返ってこちらを凝視していた。
二人とも、訝しげな表情をしている。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺は恐怖のあまり叫んだ。後ずさろうとするが、足が上手く動かずに、その場で尻餅をついてしまう。
「おやおや、子どもがこんな時間に散歩ですか? 感心しませんねぇ。見られたからには生かしてはおけませんねぇ」
男は再び厭らしいにやけ顔を浮かべると、俺の胸に手を伸ばした。
「おやすみなさい――――永遠にね」
0
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる