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追憶からの

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「フロドゥール国初代王妃であるフィリア。
 彼女を惑わした僧侶達の正体は、のちに“ドラコニス”と呼ばれる龍が何よりも嫌いな者達よ。」

 言い切ったリリィに話を聞いていた者達が息を呑む声が聞こえた。

「・・・ドラゴニス。」

 それはフロドゥール国王レイド・フロドゥールも同じだった。
 彼は思わず、意識もせずに隣に座っていた宰相ハル・シネイと顔を合わせた。

 ロンサンティエ帝国の陣営も2人の様子に気がついていたが、特別声を上げる事をしない。

「かつて、人によって捕まってしまった幼い龍は龍気を奪われ続けた。
 それはね。人にとって生気を奪われると同じ事よ。
 意識があるのに体は動かず、ただひたすら苦痛に耐える日々。
 そして幼い龍は人を恨み、ついに闇に身を落とした。」

「闇に身を・・・?」

 今にも泣きそうな顔のリリィを諌める様にディミトリオ・ハクヤが肩に手を置く。

「闇に身を落とした龍は黒龍となり、厄災となって疫病や天変地異を起こすと言われているわ。」

「・・・天変地異。
 もしや、初代が生きていた時代の長年の天変地異は・・・。」

 驚いた顔のファヴィリエ・ルカにリリィはコクンと頷いた。

「黒龍となった幼い龍が関係しているわ。」

「なんて事だ。
 人は人の行いの所為で苦しんでいたと言うのか。」

 思わぬ歴史の事実に集まった者達は驚愕した。

「歴代の龍の姫巫女は、龍の使者を通じて時代毎に警告を鳴らしてきた。
 故に、それ以降の歴史に黒龍が現れた事はないのよ。
 愚かに堕落しようとも、人が龍を怒らせる事は無くなった。」

 リリィの言葉にファヴィリエ・ルカの顔が曇った。

「我が国の先代皇帝は、その過ちを犯そうとしていたがな。」

「あんなもので龍が怒る事もないわ。
 だからこそ、龍は龍の使者と龍の姫巫女に教育を与えているのだから。
 くだらない人間の過ちに遅れを取らない様にね。」

 そう話していたリリィはついに鋭い視線を客人であるレイド・フロドゥールへと向けた。

「残念だけど、貴方は“ドラゴニルス”を迎え入れたわね。」

 確信めいたリリィの言葉に声も出せずにいたレイド・フロドゥールに代わり宰相であるハル・シネイが慌てた様に腰を上げた。

「なっ・・・何を。」

 抗議にもならない声にリリィは首を横に振った。

「誤魔化さなくていいの。
 フロドゥールの城に赴いた際に確信した。
 龍が嫌いな“ドラゴニルス”の匂いが国中に充満していた。
 今も、貴方達の前に龍が出てこないのはドラゴニルスの存在を感じ取っているからよ。」

 ファフィリエ・ルカは気がついた。
 いつもならリリィの側を離れる事のない龍達がまるで存在しないかのようだ。
 まさか白銀の龍であるルーチェまでもが姿を見せないと思わなかった。

「だから、貴方をロンサンティエ帝国に招いたの。」

 龍の姫巫女リリィとフロドゥール国国王レイド・フロドゥールの視線が絡み合った。
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