溜息だって吐きたくなるわっ！〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

英傑の記憶②〜帰還〜

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　東の牢屋と呼ばれる場所は、西と比べて奥行きが長く、幾つもの牢屋が並んでいた。
　所々に松明が灯り、真っ暗という事もなく様子が見てとれた。

「皆んな無事かっ？」

　レアンダが率先して1つの牢屋にしがみついた。

「・・・レアンダ。お前。
　西から戻ってきたのか。」

「レアンダさん。無事で良かった。」

　牢屋の中からレアンダの無事な姿にホッとする声が上がった。

「思ったよりも早く帰って来れたな。
　1人か？奴等はどうした？」

　そんな声にレアンダは苦笑し、振り返った。

「コイツに助けられたんだよ。」

　レアンダがグイッと押し出すと若者・・・フランコ・トワがニッコリとした。

「皆んな・・・迎えに来たよ。
　帰ろう。
　俺達の村に。」

　その姿を見た者達は驚き、牢屋に縋り付いた。

「「「「フランコ・トワ！！」」」」

　皆んなの驚きはもっともだった。
　そんな中でも、一際大きな声で自分を呼ぶ声があった。

「トワ兄ちゃん！」

「ニコッ！！
　シンセロ・ニコ・・・無事だったか。
　ゴメン。ゴメンな。
　俺が海でいなくなったばかりに苦労かけたな。」

「本当にトワ兄ちゃんか？
　生きてたのか？
　今まで何してたんだ？
　何で帰って来なかった？」

　牢屋越しの弟との再会にフランコ・トワは涙を流した。
　フランコ・トワの帰還にはレアンダとて聞きたい事は沢山あった。

　すると、そこに別の声が響いた。

「旦那ッ！旦那ッ！
　ありましたよ！牢屋の鍵！！」

　此処まで案内をしてきた盗賊の男が嬉しそうに鍵を握りしめた手を振り回してやって来た。
　フランコ・トワは受け取ると牢屋の鍵を開け仲間達を次々と出してやった。

　そして、皆んなの前で頭をペコりと下げた。

「ニコ・・・皆んなゴメンな。
　俺、あの日に海に飲み込まれた。
　起きたら“龍王島”に行き着いていたんだ。」

「「「“龍王島”・・・」」」

　驚く声とあまりの事実に仲間達はそれ以上に声が出ずに唖然としてフランコ・トワを見つめた。

「船も無くして“龍王島”の浜辺に打ち上げられた。
　生きる事だけ考えて島を歩き回って、食い物を見つけたり、魔獣と格闘したりして最初の数年は経ってたよ。
　帰りたくても帰れなかった・・・だから数年かけても筏いかだでも作って村を目指そうとしてたんだ。
　だけど、ある日、龍が来て・・・。」

「「「「龍っ？！」」」」

　龍が嘗て人類の犯した罪を許していない事は皆が知っている事だ。
　話が本当なら、海から帰らなかった事ではなく、別の意味でフランコ・トワが生きて目の前にいる事が信じられない。
　いや、フランコ・トワが言うのだ。
　本当にあった事なのだろうと、村の皆は素直に信じた。

「それで何があった？」

　皆の驚きで話が途中で止まったのを弟のシンセロ・ニコが促した。