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英傑の記憶②〜帰還〜
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男はギコギコと音を鳴らしながら馬車を揺らしていた。
「あぁ、もう交代の時間かぁ。」
「しょうがねぇよ。
酒や飯にありつく為には仕事しなきゃよ。」
愚痴る男とは別に馬に乗り、馬車と並走していた男がアクビをしている。
並走と書きたてても、スピードなど全くなく、2人は出来るだけ時間を掛けて漁村に向かっていた。
村には何もない。
いるのは草臥れた老人と、自分達を見れば怯える子供ばかりだ。
それに比べて、本拠地には酒や食べ物が豊富にあり、女を侍らせる事もできれば娯楽もある。
男達にすれば、鬱屈とする村と比べて本拠地は天国だった。
「2日かぁ・・・。
暇なんだよなぁ。」
最初こそ老人達も反抗した態度を見せていたが、痛めつけてやれば大人しくなった。
殴る事が無くなれば、暇も暇でやる事がない。
「釣りでもすれば良いんじゃないか?」
馬に乗った男が鼻をほじるのを横目に馬車の運転する男は鼻を鳴らす。
「馬鹿言うなよ。
漁村って言ってる割には、魚なんて釣れた試しがないじゃねーか。
あぁ、また村のジジイ共に難癖つけて殴ってやろうかな。」
「クククッ。
オメーも最低野郎だな。」
いよいよ荒々しく作られた柵が見えてくると男達は面倒腐そう顔を顰めた。
「おいおい。
見張りがいねぇじゃないか。」
「こりゃ、帰ったら報告だな。
馬鹿の酒は俺達が頂こうぜ。」
よもや己の欲の為に盗賊に入った者達だ。
相手の都合よりも己の損得を選ぶ様子から仲間意識など皆無だ。
他者の失敗こそ、自分達の利益。
見張りの役割を放棄した者を告げ口にして代わりに褒美を受け取る。
馬車を降りた男は薄ら笑いを浮かべると、柵の門扉を叩いた。
「おい。
交代の時間だ。
開けろ。」
返事がない。
振り返り馬上から見ていた男と目を合わせて肩を竦めた。
「本当に弛んでるな。
もう一度、呼んでみろよ。」
馬上の男は自ら降りてくるつもりはないらしい。
馬車の男は溜息を吐くとさっきよりも大きな声を張り上げた。
「おいっ!!
交代の時間だって言ってんだろうが!!」
ドンドンッ!ガンガンッ!!
叩いたり蹴ったりとしていると、ゆっくりと門扉が開いた。
「何だってんだよ。
しっかり働きやがれっ!
てめーらの事は上に報告するからな。」
グチグチと文句を吐く男は馬車に戻ると手綱を持つと引っ張った。
馬車の中には2日分の村の食料が載っている。
もちろん、村の人間よりも自分達の分の方が多い。
村の人間達には2日生きる為にのギリギリの量で支配しているのだ。
挨拶もしてこない相手に悪態を吐くと2人の男は漁村の中に入っていった。
人の気配に振り返り、再び文句を言おうとした時だった。
ガンッ!!
一瞬で目の前が暗くなり、男達の意識が薄れていく・・・。
「あぁ、もう交代の時間かぁ。」
「しょうがねぇよ。
酒や飯にありつく為には仕事しなきゃよ。」
愚痴る男とは別に馬に乗り、馬車と並走していた男がアクビをしている。
並走と書きたてても、スピードなど全くなく、2人は出来るだけ時間を掛けて漁村に向かっていた。
村には何もない。
いるのは草臥れた老人と、自分達を見れば怯える子供ばかりだ。
それに比べて、本拠地には酒や食べ物が豊富にあり、女を侍らせる事もできれば娯楽もある。
男達にすれば、鬱屈とする村と比べて本拠地は天国だった。
「2日かぁ・・・。
暇なんだよなぁ。」
最初こそ老人達も反抗した態度を見せていたが、痛めつけてやれば大人しくなった。
殴る事が無くなれば、暇も暇でやる事がない。
「釣りでもすれば良いんじゃないか?」
馬に乗った男が鼻をほじるのを横目に馬車の運転する男は鼻を鳴らす。
「馬鹿言うなよ。
漁村って言ってる割には、魚なんて釣れた試しがないじゃねーか。
あぁ、また村のジジイ共に難癖つけて殴ってやろうかな。」
「クククッ。
オメーも最低野郎だな。」
いよいよ荒々しく作られた柵が見えてくると男達は面倒腐そう顔を顰めた。
「おいおい。
見張りがいねぇじゃないか。」
「こりゃ、帰ったら報告だな。
馬鹿の酒は俺達が頂こうぜ。」
よもや己の欲の為に盗賊に入った者達だ。
相手の都合よりも己の損得を選ぶ様子から仲間意識など皆無だ。
他者の失敗こそ、自分達の利益。
見張りの役割を放棄した者を告げ口にして代わりに褒美を受け取る。
馬車を降りた男は薄ら笑いを浮かべると、柵の門扉を叩いた。
「おい。
交代の時間だ。
開けろ。」
返事がない。
振り返り馬上から見ていた男と目を合わせて肩を竦めた。
「本当に弛んでるな。
もう一度、呼んでみろよ。」
馬上の男は自ら降りてくるつもりはないらしい。
馬車の男は溜息を吐くとさっきよりも大きな声を張り上げた。
「おいっ!!
交代の時間だって言ってんだろうが!!」
ドンドンッ!ガンガンッ!!
叩いたり蹴ったりとしていると、ゆっくりと門扉が開いた。
「何だってんだよ。
しっかり働きやがれっ!
てめーらの事は上に報告するからな。」
グチグチと文句を吐く男は馬車に戻ると手綱を持つと引っ張った。
馬車の中には2日分の村の食料が載っている。
もちろん、村の人間よりも自分達の分の方が多い。
村の人間達には2日生きる為にのギリギリの量で支配しているのだ。
挨拶もしてこない相手に悪態を吐くと2人の男は漁村の中に入っていった。
人の気配に振り返り、再び文句を言おうとした時だった。
ガンッ!!
一瞬で目の前が暗くなり、男達の意識が薄れていく・・・。
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