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義心の先にあるもの

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 ロンサンティエ帝国の帝都に入ると宝樹ばかりに目が行きがちであるが、王宮も実に立派なもので石造りの白亜の宮殿は、とても美しい。

 騎士が並ぶ先でフロドゥール国一行を待っていたのは1人の男であった。

「ようこそおいで下さいました。
 フロドゥール国国王レイド・フロドゥール様。
 私は宰相を務めますフィリックス・ガルシア。
 以後お見知りおきを」

 フィリックスが話しかけたると、答えたのは国王ではなくフロドゥール国の宰相ハル・シネイ侯爵だった。
 
「お出迎え痛みいる。
 新たな宰相殿がお若いとは聞いていたが、随分としっかりなさっておいでだ。」

 嫌味ともとれる相手の言葉にフィリックスはニッコリと微笑んだ。

「ファヴィリエ・ルカ皇帝陛下と同い年で御座います。
 学園では共に時間を過ごしました。
 フロドゥール国王もシネイ殿も長旅でお疲れで御座いましょう。
 控えの部屋をご用意しております。
 どうぞ、お寛ぎ下さいませ。」

 丁寧に言っているが、客人として現れた在位の長い国王と熟練の宰相を前に、国を背負う若き宰相が年寄り扱いしている事に違いない。
 
 しかし、これも彼にしてみたら先程の仕返しに過ぎない。
 
 こんな場所で「若造が!」「老害が!」と騒いだところで、全くもって無意味なのだ。

 レイド・フロドゥールは鼻を「フンッ」とならすと、慇懃無礼に頭を下げるロンサンティエ宰相フィリックスの前を通り中に入って行った。

「初手から小気味良いやり合いだな。」

 苦笑しているディミトリオ・ハクヤにフィリックス・ガルシアも口角を上げて微笑んだ。

「こんなの遊びにもなりませんよ。
 大公閣下もご苦労様でした。
 ここからは、こちらにお任せ下さい。」

「助かる。
 一度離宮に戻り、話し合いの場に相応しい衣装に変えてこよう。」

 軍人の姿の自分を指差し笑うディミトリオ・ハクヤが去って行くのを見送ると、フィリックスは空を見上げた。

「さて、どうなる事か。
 ・・・はぁ、面倒だぁ。」

 フィリックスは、人前では見せない顔を一瞬だけ覗かせ、何事もなかったかのようにキリリと引き締まった顔で宮殿の中に戻って行った。



『来たよ。』
『来ましたね。』
『『臭い』』
『煩わしいな』
『消すか?』

 何やら物騒な会話が聞こえてくる。
 ヒソヒソと話しているつもりのだろうが隠す気はない様に伺える話し合いに龍の姫巫女はクスクスと笑った。

「何も起こっていないのに消さないで。
 楽しいお喋りも出来ないじゃない。」

 小さな姿で額を突き合わす龍達の頭をリリィは指で優しく撫でていく。

「大丈夫よ。
 ルカが約束してくれたもの。
 獲物は譲ってくれるそうよ。
 それまでは大人しくしていましょう。」

 リリィの瞳が怪しく光った。
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