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遠く昔の誰かの記録

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 フランコ・トワ・ロンサンティエとセレティアは真実の愛で結ばれた運命の番である。

 リリィの確信した台詞にファヴィリエ・ルカもディミトリオ・ハクヤも安堵した様に微笑んだ。

「悪かったわね。
 龍王から教えられていたけれど、帝国が伝えるフランコ・トワとセレニティを知りたかったの。」

 悪かったと言いながら、ちっとも申し訳なさそうな顔をしていないリリィに2人は苦笑した。

 安堵したのも束の間だった。

「ただ・・・。」

 リリィは一度言葉を切り、不思議そうに首を傾げた。

「ただ、3代前のロンサンティエの皇帝とフロドゥールの姫君については、少し思い違いをしているのかもしれない。」

「「思い違い?」」

 声を揃えた親子に、リリィは眉間に皺を寄せて別の1冊の美しく装丁されている本を渡した。

「これは・・・?」

 問い掛けるディミトリオ・ハクヤにリリィは肩を竦めた。

「ステラ・ロンサンティエ・・・いいえ、ステラ・フロドゥールの日記よ。
 自ら書いた手記のようね。」

「何だと。」

「日記が残っていたのかっ!」

 驚くディミトリオ・ハクヤとファヴィリエ・ルカだった。

「貸して、必要な箇所を読んであげる。」

 呆然とする2人を置き去りにリリィはステラの日記を奪った。

______

龍歴〇〇〇〇年◯月◯日

 今日、私は15の歳になった。
 成人を迎える特別な日だ。
 国中から貰う祝いの言葉に胸がいっぱいになる。
 母上から頂いた首飾りは、母上が成人の日にお祖父様より頂いた物だという。
 大切な首飾りをお譲り下さり、嬉しくて堪らない。
 明日、父上からお話があると聞かされた。
 婚約者についての話だろうと兄様が言っていた。
 本当に、そうであるならば、御相手はどんな方だろう。
 不安と期待で眠れそうにない。

龍歴〇〇〇〇年◯月◯日

 成人を迎えて1日目だ。
 まだ実感はない。
 父上よりの呼び出しは兄様の予想通り、婚約者のお話だった。
 ピウス・プラント公爵子息
 幼馴染の彼が御相手と聞き、不安は安堵と喜びに包まれた。
 胸の高鳴りが止まらない。

龍歴〇〇〇〇年◯月◯日

 父上から婚約者の名を聞き数日経った。
 今日は御本人とお会いした。
 慣れた相手だというのに、今日は彼の目を見るのが恥ずかしかった。
 優しく誠実な彼は、そんな私に微笑んでくれた。
 次男で騎士である彼は、既に伯爵位を得て家を出て、王都に屋敷を構えているそうだ。
 既に私を迎える準備を始めてくれているらしい。
 1度屋敷を訪れる事になった。
 王城を出るのは生まれて初めてだ。
 今から楽しみで仕方ない。

龍歴〇〇〇〇年◯月◯日

 今日は朝から王城は慌ただしい。
 辺境の地に魔獣の群れが出現し暴走しているらしい。
 父上や兄様は早朝に報告を受けてから夜になっても被害を最小に留めようと尽力されている。
 ロンサンティエ帝国にも救援を求め、すぐに駆けつける旨の連絡があったと聞いた。
 どうか、被害が大きくなるまでに間に合って欲しい。

龍歴〇〇〇〇年◯月◯日

 昼を過ぎた頃に彼がやって来た。
 騎士として魔獣討伐に参加すると言う彼に私は笑顔で送り出した。
 私は王女であり彼は騎士だ。
 互いに国を護る立場であるのだから覚悟はしている。
 それでも、不安は尽きない。
 魔獣討伐から帰ってきたら、彼の屋敷を訪れる約束をした。
 その約束を胸に、彼の無事を祈り帰りを待つとしよう。
 

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