306 / 436
遠く昔の誰かの記録
307
しおりを挟む
「ねぇ。本当に私も入っていいの?」
ファヴィリエ・ルカが皇室しか入室が認められていない秘蔵書簡庫の鍵を開けている間にリリィはディミトリオ・ハクヤに問い掛けた。
「いいさ。
どの道、リリィは皇室の一員になるんだ。
それに・・・。」
ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカが鍵穴に自分の血を一滴垂らしているのを指差した。
「この部屋の扉には龍の加護で護られていると言われている。
不思議な事にフランコトワの血筋以外が扉を開ける事が出来ない仕様になっているんた。
龍の加護ならば、リリィも大丈夫だろう。
龍がリリィを拒むなんてあり得ない。」
「開きました。」
ファヴィリエ・ルカがドアノブを押し込むと、小さく軋む音を立てながら扉が開け放たれた。
書簡庫と言われていたから小さい部屋を想像していたリリィであったが、入って見れば奥行きの広い立派な図書館の様な造りになっていた。
ディミトリオ・ハクヤが中央に置かれた広いテーブルを優しく撫でた。
「父と入った子供の時以来だ。
多分、その時から誰か入室した事はないだろう。
何せ、我が一族は勤勉ではないからな。」
自嘲するディイトリオ・ハクヤの背中に、どこか哀愁が漂っていた。
恐らく、兄ハイゴール・ウィリの時代には近寄る事も禁じられいたのだろう。
「初めて入りました。
もっと古く埃っぽいイメージがあったのですが、何とも空気も澄んでいて保管されている蔵書の状態もいい様ですね。」
これが龍の加護を得ていると言われる要因なのかもしれない。
キラキラとした光の玉が浮遊しているのを見ると、此処にも妖精がいるようだ。
「この書簡庫には皇族にしか伝わらない話が纏められている。
中には日記などもあるそうだ。
幼少期には、こんな部屋があると言う事を教えてもらったくらいで本を手にした事はない。」
振り返ったディミトリオ・ハクヤにリリィは小さく頷いた。
「少し離れていて。」
リリィが前に出ると、ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカを守ように立った。
「何が始まるんです?」
不思議そうなファヴィリエ・ルカにディミトリオ・ハクヤがニヤリと笑った。
「リリィのズルだ。」
それを耳にしたリリィはディミトリオ・ハクヤを揶揄うように意地悪な顔で笑顔を見せた。
「ズルで結構。
ある能力を使わない方が馬鹿よ。
それに、結構疲れるのよ。これ。」
リリィは胸の前で手を握ると祈るような体勢になった。
ブツブツと何かを唱えるとリリィの美しい白い髪が輝きを見せる。
その白銀の髪が踊るように舞いだすと、腕を広げたリリィに誘われるように本や書簡が自ら棚から飛び出てグルグルと空中で回転し始めた。
「あれは・・・。」
「読んでいるんだよ。」
邪魔をしないようにディミトリオ・ハクヤが息子の口元に指を当てた。
その光景が暫く続くと本は元の場所に戻り、再び眠りについたように大人しくなった。
それと同時に髪も落ち着いたリリィが振り返り自分の頭を指でトントンとした。
「知識は全部入れ終わったわ。」
それを聞いたファヴィリエ・ルカは言わずにはいられなかった。
「ズルッ!!」
ファヴィリエ・ルカが皇室しか入室が認められていない秘蔵書簡庫の鍵を開けている間にリリィはディミトリオ・ハクヤに問い掛けた。
「いいさ。
どの道、リリィは皇室の一員になるんだ。
それに・・・。」
ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカが鍵穴に自分の血を一滴垂らしているのを指差した。
「この部屋の扉には龍の加護で護られていると言われている。
不思議な事にフランコトワの血筋以外が扉を開ける事が出来ない仕様になっているんた。
龍の加護ならば、リリィも大丈夫だろう。
龍がリリィを拒むなんてあり得ない。」
「開きました。」
ファヴィリエ・ルカがドアノブを押し込むと、小さく軋む音を立てながら扉が開け放たれた。
書簡庫と言われていたから小さい部屋を想像していたリリィであったが、入って見れば奥行きの広い立派な図書館の様な造りになっていた。
ディミトリオ・ハクヤが中央に置かれた広いテーブルを優しく撫でた。
「父と入った子供の時以来だ。
多分、その時から誰か入室した事はないだろう。
何せ、我が一族は勤勉ではないからな。」
自嘲するディイトリオ・ハクヤの背中に、どこか哀愁が漂っていた。
恐らく、兄ハイゴール・ウィリの時代には近寄る事も禁じられいたのだろう。
「初めて入りました。
もっと古く埃っぽいイメージがあったのですが、何とも空気も澄んでいて保管されている蔵書の状態もいい様ですね。」
これが龍の加護を得ていると言われる要因なのかもしれない。
キラキラとした光の玉が浮遊しているのを見ると、此処にも妖精がいるようだ。
「この書簡庫には皇族にしか伝わらない話が纏められている。
中には日記などもあるそうだ。
幼少期には、こんな部屋があると言う事を教えてもらったくらいで本を手にした事はない。」
振り返ったディミトリオ・ハクヤにリリィは小さく頷いた。
「少し離れていて。」
リリィが前に出ると、ディミトリオ・ハクヤはファヴィリエ・ルカを守ように立った。
「何が始まるんです?」
不思議そうなファヴィリエ・ルカにディミトリオ・ハクヤがニヤリと笑った。
「リリィのズルだ。」
それを耳にしたリリィはディミトリオ・ハクヤを揶揄うように意地悪な顔で笑顔を見せた。
「ズルで結構。
ある能力を使わない方が馬鹿よ。
それに、結構疲れるのよ。これ。」
リリィは胸の前で手を握ると祈るような体勢になった。
ブツブツと何かを唱えるとリリィの美しい白い髪が輝きを見せる。
その白銀の髪が踊るように舞いだすと、腕を広げたリリィに誘われるように本や書簡が自ら棚から飛び出てグルグルと空中で回転し始めた。
「あれは・・・。」
「読んでいるんだよ。」
邪魔をしないようにディミトリオ・ハクヤが息子の口元に指を当てた。
その光景が暫く続くと本は元の場所に戻り、再び眠りについたように大人しくなった。
それと同時に髪も落ち着いたリリィが振り返り自分の頭を指でトントンとした。
「知識は全部入れ終わったわ。」
それを聞いたファヴィリエ・ルカは言わずにはいられなかった。
「ズルッ!!」
284
お気に入りに追加
1,022
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
〈とりあえずまた〆〉婚約破棄? ちょうどいいですわ、断罪の場には。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
辺境伯令嬢バルバラ・ザクセットは、第一王子セインの誕生パーティの場で婚約破棄を言い渡された。
だがその途端周囲がざわめき、空気が変わる。
父王も王妃も絶望にへたりこみ、セインの母第三側妃は彼の頬を打ち叱責した後、毒をもって自害する。
そしてバルバラは皇帝の代理人として、パーティ自体をチェイルト王家自体に対する裁判の場に変えるのだった。
番外編1……裁判となった事件の裏側を、その首謀者三人のうちの一人カイシャル・セルーメ視点であちこち移動しながら30年くらいのスパンで描いています。シリアス。
番外編2……マリウラ視点のその後。もう絶対に関わりにならないと思っていたはずの人々が何故か自分のところに相談しにやってくるという。お気楽話。
番外編3……辺境伯令嬢バルバラの動きを、彼女の本当の婚約者で護衛騎士のシェイデンの視点から見た話。番外1の少し後の部分も入ってます。
*カテゴリが恋愛にしてありますが本編においては恋愛要素は薄いです。
*むしろ恋愛は番外編の方に集中しました。
3/31
番外の番外「円盤太陽杯優勝者の供述」短期連載です。
恋愛大賞にひっかからなかったこともあり、カテゴリを変更しました。
とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!
友坂 悠
ファンタジー
あたし、レティーナ。
聖女だけど何もお仕事してないって追放されました。。
ほんとはすっごく大事なお仕事してたのに。
孤児だったあたしは大聖女サンドラ様に拾われ聖女として育てられました。そして特別な能力があったあたしは聖獣カイヤの中に眠る魔法結晶に祈りを捧げることでこの国の聖都全体を覆う結界をはっていたのです。
でも、その大聖女様がお亡くなりになった時、あたしは王宮の中にあった聖女宮から追い出されることになったのです。
住むところもなく身寄りもないあたしはなんとか街で雇ってもらおうとしますが、そこにも意地悪な聖女長さま達の手が伸びて居ました。
聖都に居場所の無くなったあたしはカイヤを連れて森を彷徨うのでした……。
そこで出会った龍神族のレヴィアさん。
彼女から貰った魔ギア、ドラゴンオプスニルと龍のシズクを得たレティーナは、最強の能力を発揮する!
追放された聖女の冒険物語の開幕デス!
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる