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遠く昔の誰かの記録
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「そう、遠い過去の話ではないのですよ。
これは、先々帝の父君の話。
ルカから数えて、3代前の皇帝の話なのです。
今のフロドゥール王・・・レイド・フロドゥールの大叔母にあたる方の話なのです。」
マドレーヌの言葉にリリィは思わず舌打ちをした。
「今だに恨みを持っていると?」
「それは分かりません。
件の方の名前はステラ様と仰います。
それはそれは美しい姫君だったそうです。」
ステラ・フロドゥール。
満天の星空の下に生まれた娘は美しい黄色の目を持っていた。
その宝石の様な瞳は子供の頃から人々を魅了していた。
大人になれば、婚姻をめぐり争いの元となると言われる程だった。
父王と母妃は彼女の行く末を心配し、周囲が持て囃すのを制し、しっかりと厳しく育てた。
そんな彼女は勉学や音楽に長け、語学も優秀に育った。
年頃になれば、国内国外関係なく婚姻の打診が増えていく一方であった。
そんな彼女の噂を聞きつけた当代のロンサンティエの皇帝は視察を名目にフロドゥール国を訪れた。
フロドゥール国とロンサンティエ帝国は絶妙なバランスで同盟関係が保たれていた。
互いの初代王が親友であった。
その一点でフロドゥールは他の国と比べてロンサンティエ帝国に対して、対等に意見を言う国であった。
ロンサンティエの皇帝は一目見てステラを気に入ってしまった。
彼女を側室にと望むロンサンティエ帝国に対してステラ姫の父王や母妃は涙ながらに許しを乞うた。
しかし、ロンサンティエの皇帝は有無も言わさずにステラ姫を攫うように帝国に連れ帰ってしまった。
ロンサンティエ皇帝の横暴な行動にフロドゥール国は国民を上げて怒り狂った。
自国の美しい星空の娘を奪い取った。
それはそれは憎悪の籠った感情だった。
ーーーまた、ロンサンティエに奪われた。
王族の誰かが、そんな事を口にした。
初代王もフランコ・トワ・ロンサンティエに龍の姫巫女を奪われた。
眉唾な話が、それが事実として受け入れられ異常なまでに恨みとなっていた。
「ステラ妃は当時の皇帝の3番目の側妃として迎えられました。
離宮も与えられたと聞きます。
ロンサンティエ帝国は法外な結納金と一部の土地をフロドゥール国へ渡しています。
それにより、戦争の矛を収めたフロドゥール国ですが、本当のところ感情はどうなのでしょうね・・・。
先帝・・・ハイゴール・ウィリ様もフロドゥールの娘を側室にと求められた事がありましたが、メッサリーナ様にこの時の事を持ち出されて諦めたと聞きています。」
好色な先帝を思い出し、リリィは呆れた顔をした。
「そのステラ妃に子供は?」
「御座いません。
ですので、フロドゥールの血族にロンサンティエの血筋はいないのです。
それもまた、今回のような重要な話に混ざれない大きな要因でもあるのでしょう。」
リリィとマドレーヌは大きな溜息を吐き出した。
「フロドゥール国の何とも言えない感情を知り得ました。
有難う御座いました。マドレーヌ様。」
「お役に立てば良いのですが・・・。
この話は、あまり知られていません。
私も思い出したのは最近です。
少し昔の歴史を調べておきましょう。
何か役に立つかもしれません。」
こうして、2人の茶会は終わりを迎えたのだった。
これは、先々帝の父君の話。
ルカから数えて、3代前の皇帝の話なのです。
今のフロドゥール王・・・レイド・フロドゥールの大叔母にあたる方の話なのです。」
マドレーヌの言葉にリリィは思わず舌打ちをした。
「今だに恨みを持っていると?」
「それは分かりません。
件の方の名前はステラ様と仰います。
それはそれは美しい姫君だったそうです。」
ステラ・フロドゥール。
満天の星空の下に生まれた娘は美しい黄色の目を持っていた。
その宝石の様な瞳は子供の頃から人々を魅了していた。
大人になれば、婚姻をめぐり争いの元となると言われる程だった。
父王と母妃は彼女の行く末を心配し、周囲が持て囃すのを制し、しっかりと厳しく育てた。
そんな彼女は勉学や音楽に長け、語学も優秀に育った。
年頃になれば、国内国外関係なく婚姻の打診が増えていく一方であった。
そんな彼女の噂を聞きつけた当代のロンサンティエの皇帝は視察を名目にフロドゥール国を訪れた。
フロドゥール国とロンサンティエ帝国は絶妙なバランスで同盟関係が保たれていた。
互いの初代王が親友であった。
その一点でフロドゥールは他の国と比べてロンサンティエ帝国に対して、対等に意見を言う国であった。
ロンサンティエの皇帝は一目見てステラを気に入ってしまった。
彼女を側室にと望むロンサンティエ帝国に対してステラ姫の父王や母妃は涙ながらに許しを乞うた。
しかし、ロンサンティエの皇帝は有無も言わさずにステラ姫を攫うように帝国に連れ帰ってしまった。
ロンサンティエ皇帝の横暴な行動にフロドゥール国は国民を上げて怒り狂った。
自国の美しい星空の娘を奪い取った。
それはそれは憎悪の籠った感情だった。
ーーーまた、ロンサンティエに奪われた。
王族の誰かが、そんな事を口にした。
初代王もフランコ・トワ・ロンサンティエに龍の姫巫女を奪われた。
眉唾な話が、それが事実として受け入れられ異常なまでに恨みとなっていた。
「ステラ妃は当時の皇帝の3番目の側妃として迎えられました。
離宮も与えられたと聞きます。
ロンサンティエ帝国は法外な結納金と一部の土地をフロドゥール国へ渡しています。
それにより、戦争の矛を収めたフロドゥール国ですが、本当のところ感情はどうなのでしょうね・・・。
先帝・・・ハイゴール・ウィリ様もフロドゥールの娘を側室にと求められた事がありましたが、メッサリーナ様にこの時の事を持ち出されて諦めたと聞きています。」
好色な先帝を思い出し、リリィは呆れた顔をした。
「そのステラ妃に子供は?」
「御座いません。
ですので、フロドゥールの血族にロンサンティエの血筋はいないのです。
それもまた、今回のような重要な話に混ざれない大きな要因でもあるのでしょう。」
リリィとマドレーヌは大きな溜息を吐き出した。
「フロドゥール国の何とも言えない感情を知り得ました。
有難う御座いました。マドレーヌ様。」
「お役に立てば良いのですが・・・。
この話は、あまり知られていません。
私も思い出したのは最近です。
少し昔の歴史を調べておきましょう。
何か役に立つかもしれません。」
こうして、2人の茶会は終わりを迎えたのだった。
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