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得たものこそ宝なり
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ロンサンティエ帝国が誇る宝樹の根元は、いつになく賑やかだった。
それに伴い光の玉がいつもよりも機嫌が良く、感情豊に飛び跳ねているようだ。
大の男達は、その愛くるしい光景に戸惑うばかりであったが、いつまでも澄ました顔ではいられない。
光の玉が、そうはさせてくれないからだ。
龍を崇拝するブランチ辺境伯家のサイラスは肩の上でクルクルと回転している光の玉に微笑んでいた。
若いライリー・ナイトメア伯爵とリチャード・ディライト子爵などは、髪を引っ張られたり、服をチョンチョンとされたりと遊ばれている。
ムスッと椅子に座り込んでいたダニー・グランブル侯爵も例外ではなく、膝の上に乗っている光の玉を指で弾いては飛ばし、光の玉が戻ってくると再び弾くという遊びに付き合わされていた。
しかし、光の玉と交流していたが、誰として特定の光の玉・・・妖精との契約は未だに結ばれていない。
そんな時だった。
「まぁ、貴方が1番最初に妖精と心を通わせたようね。」
誰もが驚き振り返ると、キョトンとしていたのはリリィの侍従であるロメオだった。
生き物が大好きのロメオは妖精にも誠実だった。
光の玉との戯れていた時も誰よりも楽しそうだったのだ。
1体の光の玉がロメオの目の前からジッとして動かない。
「さぁ、名前を付けてあげて。」
いつにないリリィの優しい声に頷くとロメオは、教えられてもいないのに頭に浮かんだ言葉を紡いだ。
「我が名はロメオ。
僕に力を貸してくれるなら、君に名をあげる。
友達になって。」
手を差し伸べるロメオに光の玉がユラユラとしながら近づいた。
「君の名前は“ルル”。」
次の瞬間にボッ!と音を立てて炎を纏った動物が姿を現した。
「・・・ヒョウ。」
体にまだらの模様を浮かべた小さなヒョウが、ロメオに甘える様に体を擦り付けてきた。
「みゃー。」
まだ幼い子猫の様な鳴き声にロメオは思わず笑い声を上げた。
ロメオの肩に乗っていたカランカのボビーが恐る恐る小さなヒョウに顔を近づけた。
「この子はボビー。
僕の1番の友達なんだ。
君も仲良くしてくれると嬉しいよ。」
カランカは、ヒョウの容姿を持った妖精に挨拶をするようにスンスンと臭いを嗅ぐと、ギュッと抱きしめた。
ルルの方も、なんだか嬉しそうだ。
ほっとした様子のロメオが見守っていたリリィに顔を向けた。
「ロメオ。この子は火の力を持った妖精よ。
ヒョウなんて美しい姿を見せてくれるなんて・・・。
素晴らしいわ。よくやったわね。」
ロメオの頭を惜しげもなく撫でてやると、リリィは満足そうに一同を振り返った。
「ご覧になってましたね。
人間が妖精を得るのではなく、妖精が人間を選ぶのです。
大丈夫。
ここには沢山の妖精が集まってくれています。
必ず、貴方達を気に入ってくれる妖精がいます。」
目の前でロメオと妖精の契約を見た一同は一気にやる気を見せ、今以上に妖精と戯れるのだった。
それに伴い光の玉がいつもよりも機嫌が良く、感情豊に飛び跳ねているようだ。
大の男達は、その愛くるしい光景に戸惑うばかりであったが、いつまでも澄ました顔ではいられない。
光の玉が、そうはさせてくれないからだ。
龍を崇拝するブランチ辺境伯家のサイラスは肩の上でクルクルと回転している光の玉に微笑んでいた。
若いライリー・ナイトメア伯爵とリチャード・ディライト子爵などは、髪を引っ張られたり、服をチョンチョンとされたりと遊ばれている。
ムスッと椅子に座り込んでいたダニー・グランブル侯爵も例外ではなく、膝の上に乗っている光の玉を指で弾いては飛ばし、光の玉が戻ってくると再び弾くという遊びに付き合わされていた。
しかし、光の玉と交流していたが、誰として特定の光の玉・・・妖精との契約は未だに結ばれていない。
そんな時だった。
「まぁ、貴方が1番最初に妖精と心を通わせたようね。」
誰もが驚き振り返ると、キョトンとしていたのはリリィの侍従であるロメオだった。
生き物が大好きのロメオは妖精にも誠実だった。
光の玉との戯れていた時も誰よりも楽しそうだったのだ。
1体の光の玉がロメオの目の前からジッとして動かない。
「さぁ、名前を付けてあげて。」
いつにないリリィの優しい声に頷くとロメオは、教えられてもいないのに頭に浮かんだ言葉を紡いだ。
「我が名はロメオ。
僕に力を貸してくれるなら、君に名をあげる。
友達になって。」
手を差し伸べるロメオに光の玉がユラユラとしながら近づいた。
「君の名前は“ルル”。」
次の瞬間にボッ!と音を立てて炎を纏った動物が姿を現した。
「・・・ヒョウ。」
体にまだらの模様を浮かべた小さなヒョウが、ロメオに甘える様に体を擦り付けてきた。
「みゃー。」
まだ幼い子猫の様な鳴き声にロメオは思わず笑い声を上げた。
ロメオの肩に乗っていたカランカのボビーが恐る恐る小さなヒョウに顔を近づけた。
「この子はボビー。
僕の1番の友達なんだ。
君も仲良くしてくれると嬉しいよ。」
カランカは、ヒョウの容姿を持った妖精に挨拶をするようにスンスンと臭いを嗅ぐと、ギュッと抱きしめた。
ルルの方も、なんだか嬉しそうだ。
ほっとした様子のロメオが見守っていたリリィに顔を向けた。
「ロメオ。この子は火の力を持った妖精よ。
ヒョウなんて美しい姿を見せてくれるなんて・・・。
素晴らしいわ。よくやったわね。」
ロメオの頭を惜しげもなく撫でてやると、リリィは満足そうに一同を振り返った。
「ご覧になってましたね。
人間が妖精を得るのではなく、妖精が人間を選ぶのです。
大丈夫。
ここには沢山の妖精が集まってくれています。
必ず、貴方達を気に入ってくれる妖精がいます。」
目の前でロメオと妖精の契約を見た一同は一気にやる気を見せ、今以上に妖精と戯れるのだった。
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