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得たものこそ宝なり

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「マジかよ・・・。」

 リチャード・ディライト子爵は、自身の妖精と戯れるディミトリオ・ハクヤ達を見つめて呟いた。

「理解し難いですよね。」

 彼に話しかけてきたのは、ライリー・ナイトメア伯爵だった。
 ディライト子爵よりも年下であるナイトメア伯爵であるが、文官として優秀で皇帝に期待された若き貴族だ。

 そんなナイトメア伯爵であるが、妖精などの御伽話でしか聞いた事がない存在に戸惑いを見せていた。

 2人の若き貴族とは裏腹に辺境伯であるサイラス・ブランチは、焦る様子もなく優雅に宝樹や光の玉を見渡している。

 ダニー・グランブル侯爵は、何かを諦めたのか用意された椅子にドカッと座り、厳しい顔をしたままだ。

 ラザロ・ウィットヴィル伯爵に関しては、光の玉などお構いなしで本を取り出し読み始める始末だった。

「なんて協調性のない人達なんだ。」

 呆れるディライト子爵にナイトメア伯爵は同意するでもなく、小さく笑い声を上げた。

 ディライト子爵は自分如きが龍の姫巫女と気楽に話せるわけがないと、妖精と遊んでいたクレイやスサ達に近寄った。

「失礼。
 お聞きしても?」

 妖精を愛でているクレイはいつもよりもご機嫌だ。
 普段のシニカルな笑顔を封印し頷いた。

「勿論です。ディライト子爵。
 何でもお聞き下さい。」

「妖精との契約とは如何様にすれば良いのでしょう。」

 問いかけるディライト子爵にクレイが考え込む。

「妖精が気に入ってくれたら・・・?
 でしょうか。
 リリィ様。
 説明が足りません。
 皆様にご説明を!」

 リリィに気軽に話しかけるクレイにディライト子爵だけでなく、ナイトメア伯爵も目を丸くしている。

「そうね。」

 そこからリリィはかつて“龍王島”にてディミトリオ・ハクヤ達が教授を受けた話をし出した。

 妖精は人の魔力と引き換えに力を貸す。
 魔力が多い者程、妖精と契約できる事。
 魔力がなくても代わりに体力が糧となり、契約者はお腹が空く事。

「妖精は決して、身分で契約者を選びません。
 寧ろ、そんなものは彼等にとって無意味です。
 そう言った意味で妖精は自由に契約者を選び、また気に入らなければ契約を打ち切る事だってあるのですよ。
 人間はせいぜい、妖精に捨てられないように愛情を注ぎ、魔力や体力といった彼等の糧を捧げる必要があるのです。」

 リリィの言葉に集まった者達は神妙な顔付きになった。
 
 人が頂点なのではない。
 世界の全ての理の中で全てが平等でり、均衡を崩すのはいつも人ばかり・・・。

 妖精に助けてもらわなければ、魔法を使う事の出来ない人間達。
 人間と共に行動する事で自身の力を強め、好奇心を満たす妖精。
 人間や世界中の生き物を慈しみ、見守る龍。

 自分達が如何に狭い世界で生きていたというのを、まざまざと知らされる一同だった。
 
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