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災いは何でもない事から発覚する
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「あれ?どちらに?」
庭でまったりとしていたはずのリリィが外出しようとしている。
玄関の掃除をしていたロメオは不思議そうに首を傾げた。
素直な少年の顔には「今日は離宮から出ないって聞いてたのに。」と表情が表れている。
「うん。
なんだかボビーが付いてこいって言ってるの。」
「ボビーが?
ボビー・・・ダメじゃないか。
今日はリリィ様は休憩の日って言ったろう。」
目下、相棒のロメオに嗜められてもボビーは諦めない。
「キュッ」
短く返事をすると小さい手をピッと挙げている。
「さっき、本来の飼い主の事を問い掛けたのよ。
何か伝えたい事があるのでしょう。」
それを聞いたロメオは心配そうに眉を下げた。
本来の飼い主が分かってしまうというのは、彼らの別れを意味するのだ。
「ロメオ。
ボビーにも選択の自由があるわ。
友人なら彼の選択を見守る事も重要だと思うの。」
「・・・はい。」
「一緒に来る?」
「・・・はい。
もしかしたら、本来の飼い主さんはボビーがいなくて寂しがっているかもしれないですよね。」
1人心細く侍従になる為の研修を受けていたロメオ。
平民であり、同期の中で1番若かった彼が出会ったカランカ・・・別れが寂しくないわけがない。
それでも、見届けようとリリィに付いていく事にしたロメオ。
リリィは少年侍従の言葉に優しく笑い掛けた。
「行きましょう。」
「ちょっと待って下さい。
ジュディさーん。リリィ様と出掛けてきます!」
彼は若く新米であろうと侍従だった。
主人と共に出かける事を報告するのを忘れない。
奥から侍女のジュディがが顔を出した。
「お出かけですか?
お供します!」
こちらも真面目で優秀な侍女だった。
先輩達が出払っている今、リリィを守れるのは自分とロメオしかしないのだと意気込んでいる。
そんな、リリィの頭には呆れた様な顔で赤龍カシャが髪飾りとなって収まっていた。
『この娘・・・忘れてるのではないか?
我らがいるのに、リリィ様の護衛など必要あるまいに。』
その声はジュディには届かないが、リリィにはハッキリと溜息まで聞こえた。
「フフフ。
貴方達も守らなきゃって思っているんじゃない?」
小さな声で赤龍・カシャに答えると、カシャは驚いた様だった。
いつもは悪態ばかりのカシャが「ムムム」と唸った後に「フンっ!」っと鼻を鳴らした。
『尚の事、阿呆です。
人が我らを守るとは、どんな理屈ですか。
・・・まぁ、別に勝手にすれば良いですけどね。』
やっぱりカシャは悪態を付いた。
でも、どこか優しげな悪態だった。
何か洗い物をしていたのだろうジュディが慌てて手を拭きながら戻ってきた。
「さぁ、参りましょう。」
その手にフライパンが握られているのを見て、カシャはあくびをしながら再び呆れた声を出した。
『やっぱり阿呆だ。』
庭でまったりとしていたはずのリリィが外出しようとしている。
玄関の掃除をしていたロメオは不思議そうに首を傾げた。
素直な少年の顔には「今日は離宮から出ないって聞いてたのに。」と表情が表れている。
「うん。
なんだかボビーが付いてこいって言ってるの。」
「ボビーが?
ボビー・・・ダメじゃないか。
今日はリリィ様は休憩の日って言ったろう。」
目下、相棒のロメオに嗜められてもボビーは諦めない。
「キュッ」
短く返事をすると小さい手をピッと挙げている。
「さっき、本来の飼い主の事を問い掛けたのよ。
何か伝えたい事があるのでしょう。」
それを聞いたロメオは心配そうに眉を下げた。
本来の飼い主が分かってしまうというのは、彼らの別れを意味するのだ。
「ロメオ。
ボビーにも選択の自由があるわ。
友人なら彼の選択を見守る事も重要だと思うの。」
「・・・はい。」
「一緒に来る?」
「・・・はい。
もしかしたら、本来の飼い主さんはボビーがいなくて寂しがっているかもしれないですよね。」
1人心細く侍従になる為の研修を受けていたロメオ。
平民であり、同期の中で1番若かった彼が出会ったカランカ・・・別れが寂しくないわけがない。
それでも、見届けようとリリィに付いていく事にしたロメオ。
リリィは少年侍従の言葉に優しく笑い掛けた。
「行きましょう。」
「ちょっと待って下さい。
ジュディさーん。リリィ様と出掛けてきます!」
彼は若く新米であろうと侍従だった。
主人と共に出かける事を報告するのを忘れない。
奥から侍女のジュディがが顔を出した。
「お出かけですか?
お供します!」
こちらも真面目で優秀な侍女だった。
先輩達が出払っている今、リリィを守れるのは自分とロメオしかしないのだと意気込んでいる。
そんな、リリィの頭には呆れた様な顔で赤龍カシャが髪飾りとなって収まっていた。
『この娘・・・忘れてるのではないか?
我らがいるのに、リリィ様の護衛など必要あるまいに。』
その声はジュディには届かないが、リリィにはハッキリと溜息まで聞こえた。
「フフフ。
貴方達も守らなきゃって思っているんじゃない?」
小さな声で赤龍・カシャに答えると、カシャは驚いた様だった。
いつもは悪態ばかりのカシャが「ムムム」と唸った後に「フンっ!」っと鼻を鳴らした。
『尚の事、阿呆です。
人が我らを守るとは、どんな理屈ですか。
・・・まぁ、別に勝手にすれば良いですけどね。』
やっぱりカシャは悪態を付いた。
でも、どこか優しげな悪態だった。
何か洗い物をしていたのだろうジュディが慌てて手を拭きながら戻ってきた。
「さぁ、参りましょう。」
その手にフライパンが握られているのを見て、カシャはあくびをしながら再び呆れた声を出した。
『やっぱり阿呆だ。』
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