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とある男の転換期
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新たな事業の原案が纏まった事で一息ついた頃にシオン・ポリティス伯爵がリリィに伝えた。
「先程、廊下で宰相閣下とお会いしましたよ。
リリィ様のお求めの土地の確保が出来たようです。」
「あら、本当?
王都で広めの土地なんてなかなか難しいと思っていたのだけど・・・。」
報告を受けたリリィは、望みを口にした本人であるにも関わらず不思議そうに首を傾げた。
「既にマーケットで十分な敷地を利用してますからね。
私も厳しいと思っていたんですがね。
フフフ。」
含み笑いをしたポリティス伯爵にリリィとディミトリオ・ハクヤの視線が合わさった。
「何かあったのかい?」
ディミトリオ・ハクヤの問いかけにポリティス伯爵は今度は堪えられない様にクククッと笑った。
「恐らく、まだ確保出来ていないんですよ。
いや・・・今日出来るのかもしれませんが。
宰相閣下もお人が悪い。」
首を傾げるディミトリオ・ハクヤとリリィはポリティス伯爵に説明を求めるが、彼が笑を止める事が出来ずにいた。
そこに、スッと近づいてきたのはディミトリオ・ハクヤの従者であるクレイだった。
「本日、皇帝陛下に目通りを願った商人はトンパ商会を始めとして、イディオ商会、ドゥラーク商会など8の商会です。
リストはこちらです。
そして、こちらの帝都の地図をご覧ください。」
いつ情報を集めてきたのか。
リストまで作り上げていたクレイには感心するしかないが、ディミトリオ・ハクヤとリリィはリストと地図を見比べた。
すると、どこも揃いも揃って同じ区画に固まっているのが分かる。
「中心地よりも少しズレていますが、マーケットの位置と程よく離れているので人の停滞を心配する必要はないかと思います。」
気の利くクレイは地図上に分かりやすく印をつけていく。
確かに全てを合わすと纏まった土地の出来上がりだ。
しかし、その中に1つ大きなタウンハウスがあった。
「ここは?」
素直にリリィが問い掛ければ、全てを悟ったディミトリオ・ハクヤまでが楽しそうに笑っている。
「今、皇帝と謁見している最中のダチェット侯爵の屋敷だな。」
それを聞いたリリィは目を見開いた。
「・・・うわ。
あの人達・・・えげつない事してるわね。」
事業を邪魔する新たな商会をなんとかして欲しいと願いでた貴族や商人の屋敷や店が偶々近隣だったのか?
いや、そんなはずはない。
リリィが仕掛けた事業の裏で若き皇帝と宰相が巧妙に画策してきたのだろう。
リリィは自分を囮にされた事に怒るわけではない。
寧ろ、やってるわぁと呆れている程だ。
目の前の2人の男が楽しそうに笑うのも理解できる。
「とんだ飛んでに火に入る夏の虫ね。」
訳のわからない事を口にしたリリィにキョトンとした3人の目が「何それ」と問いかけている。
「焚き火などの火に虫が飛び込んで行くのを見た事ない?
何処かの国では気付きもせずに災難や危険に飛び込んで行く事を、そう言うらしいわ。
炎の明るさに集まった虫は、業火に焼かれる運命を選んでしまうのかもね。」
リリィの言葉にディミトリオ・ハクヤは欲を追い求める人の業を憂うのだった。
「先程、廊下で宰相閣下とお会いしましたよ。
リリィ様のお求めの土地の確保が出来たようです。」
「あら、本当?
王都で広めの土地なんてなかなか難しいと思っていたのだけど・・・。」
報告を受けたリリィは、望みを口にした本人であるにも関わらず不思議そうに首を傾げた。
「既にマーケットで十分な敷地を利用してますからね。
私も厳しいと思っていたんですがね。
フフフ。」
含み笑いをしたポリティス伯爵にリリィとディミトリオ・ハクヤの視線が合わさった。
「何かあったのかい?」
ディミトリオ・ハクヤの問いかけにポリティス伯爵は今度は堪えられない様にクククッと笑った。
「恐らく、まだ確保出来ていないんですよ。
いや・・・今日出来るのかもしれませんが。
宰相閣下もお人が悪い。」
首を傾げるディミトリオ・ハクヤとリリィはポリティス伯爵に説明を求めるが、彼が笑を止める事が出来ずにいた。
そこに、スッと近づいてきたのはディミトリオ・ハクヤの従者であるクレイだった。
「本日、皇帝陛下に目通りを願った商人はトンパ商会を始めとして、イディオ商会、ドゥラーク商会など8の商会です。
リストはこちらです。
そして、こちらの帝都の地図をご覧ください。」
いつ情報を集めてきたのか。
リストまで作り上げていたクレイには感心するしかないが、ディミトリオ・ハクヤとリリィはリストと地図を見比べた。
すると、どこも揃いも揃って同じ区画に固まっているのが分かる。
「中心地よりも少しズレていますが、マーケットの位置と程よく離れているので人の停滞を心配する必要はないかと思います。」
気の利くクレイは地図上に分かりやすく印をつけていく。
確かに全てを合わすと纏まった土地の出来上がりだ。
しかし、その中に1つ大きなタウンハウスがあった。
「ここは?」
素直にリリィが問い掛ければ、全てを悟ったディミトリオ・ハクヤまでが楽しそうに笑っている。
「今、皇帝と謁見している最中のダチェット侯爵の屋敷だな。」
それを聞いたリリィは目を見開いた。
「・・・うわ。
あの人達・・・えげつない事してるわね。」
事業を邪魔する新たな商会をなんとかして欲しいと願いでた貴族や商人の屋敷や店が偶々近隣だったのか?
いや、そんなはずはない。
リリィが仕掛けた事業の裏で若き皇帝と宰相が巧妙に画策してきたのだろう。
リリィは自分を囮にされた事に怒るわけではない。
寧ろ、やってるわぁと呆れている程だ。
目の前の2人の男が楽しそうに笑うのも理解できる。
「とんだ飛んでに火に入る夏の虫ね。」
訳のわからない事を口にしたリリィにキョトンとした3人の目が「何それ」と問いかけている。
「焚き火などの火に虫が飛び込んで行くのを見た事ない?
何処かの国では気付きもせずに災難や危険に飛び込んで行く事を、そう言うらしいわ。
炎の明るさに集まった虫は、業火に焼かれる運命を選んでしまうのかもね。」
リリィの言葉にディミトリオ・ハクヤは欲を追い求める人の業を憂うのだった。
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