溜息だって吐きたくなるわっ！〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

この時期、誰しもが忙しい

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「どう？慣れてきた？」

　本当に飾らない言葉で話し掛けるリリィに２人の新たな侍女は微笑んだ。

「大変良くして頂いておりますので、仕事のしがいがあります。」

　そう答えるローラに対してジュディは、まだ緊張しながらも頷いた。

「実家でも、お掃除や荷物運びをしてたので問題ありません。」

　ジュディの素直な答えにリリィは微笑んだ。

「ジュディは兄弟が多いのよね。」

「はい！
　家は既に長兄が継いでいます。
　結婚もして子が２人もおりますし、姉達は嫁ぎ、その他の兄弟達もそれぞれ長兄を支えておりますので、私１人くらいは己で身を守っても良いだろうと家を出ました。
　下にも妹と弟がいますので、いつまでも実家に居座るのも気が引けましたし・・・。」

「しっかりと、己を理解しているのね。
　私はね。コッソリ研修生を見に行った時に貴方を見かけたの。
　とても効率良く動き回っていたし、細かいところにも目が行き届くお嬢さんだなって思ったのよ。
　何よりも、偉そうに働かずにいる者達に毒を吐いているところが最高だった。」

「えっ？」

　毒を吐いていた事などあっただろうかと、首を傾げるジュディにローラが苦笑した。

「意識していなかったんじゃない？
　素直な事は良い事だけど、周囲に聞かれないようね。」

　ジュディは顔を赤らめると「はい」と言い顔を俯かせた。
　そんなジュディをリリィとローラは可愛いと笑う。

「美しく着飾るばかりが女性ではないわ。
　本質の心までは偽れないもの。
　その素直な心を忘れないでね。」

　リリィは２人の為に新たな紅茶を淹れてやった。
　
　ローラは申し訳なさそうに眉を下げたが、リリィは楽しそうに首を横に振った。

「気にしないで。
　客人が来た時には貴方達に任せるけど、通常の時は淹れたい者が淹れたら良いのよ。」

「承知しました。」

　諦めたのかローラはクスっと笑うと、表情を少し緊張した面持ちに変えた。

「リリィ様。
　この場を借りて最初にお話ししておきたい事がございます。」

「何かしら？」

　ローラは困ったように微笑むと隣に座るジュディを気遣った。

「私の事情はお知りになっているかと思いますが、いつ誰に利用されるか分かりません。
　その時は切り捨てて下さい。」

　そう言い切るローラに何の事が分からないジュディは目を見張った。
　その様子にリリィは楽しそうに微笑んむ。

「それは、貴方がリチャード・リッチ様の婚約者であった事かしら？」

「左様でございます。
　私は己の事ですので覚悟をしておりますが、過去の事でリリィ様にご迷惑が掛かる事だけはあってはなりません。
　いくら、可愛い義弟の伝手といえども有事の際には迷う事なく切り捨て下さいませ。」

　まるで騎士の様な覚悟を見せるローラをリリィはじっくりと見つめた。