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新たな御代

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「キレーね。」

「はい。とっても美しいです。」

 2人の子供が目の前を飛ぶ白い蝶にうっとりとしていた。
 そんな子供達に微笑むと、ディミトリオ・ハクヤは優しく頭を撫でた。

「レイ。
 その子は光の力を持った妖精でレアという。」

「レア?
 レイと似てる。」

 皇姫シモツキ・レイがクスクスと笑うと白い蝶は揶揄う様に小さな鼻にツンツンとした。

「光の力って、ルーチェ様と同じ癒しの力ですか?」

 不思議そうに顔を見上げるアンディ少年にディミトリオ・ハクヤは頷いた。

「そうだね。
 同じ癒しの力が使える。
 レアは私が怪我をした時に助けてくれるのだ。
 それでも白銀の龍であるルーチェの方が、できる事は多い。
 リリィと共にいるルーチェはとても優秀なんだ。」

「ルーチェ様って凄いのね。」

 シモツキ・レイの可愛らしい無邪気な声が囁いた。

 ディミトリオ・ハクヤの視線に釣られるようにアンディ少年が目を向けると、リリィに寄り添っていた白銀のルーチェの尻尾が大きく揺れている。
 ディミトリオ・ハクヤと子供達の会話が聞こえていたのだろう。
 ご機嫌のルーチェに子供達は再びクスクスと笑い出した。 

 殺伐としたクーデターの後処理が終わり、和やかな1日であった。

 離宮“百合の宮”・・・龍の姫巫女リリィの根城は、いつも以上に賑やかだ。

「まぁ、ジョーディちゃんは水でウサギさんが作れるの?
 あら?フロウちゃんもお花上手ね。」

 水の妖精の少年達と楽しんでいたのはマドレーヌ妃である。

 今も尚、“桃華の宮”の主人であり新皇帝の母御となった彼女の元には連日、訪問者が耐えない。

 前皇帝や前皇妃に尻尾を振っていた者達の変わり身の早さに呆れもするが、彼らとて生き残りをかけているのだ。
 仕方ないと分かっていても疲れるものは疲れる。

 そんな時にリリィからの茶会の誘いがあった。

 貴族達は龍の姫巫女に軽々しく会う事が出来ない。
 マドレーヌはこれ幸いと子供達の手を引いて“百合の宮”に駆け込んだのであった。

 そこには、同じく疲れを癒していたディミトリオ・ハクヤがいて、互いに照れながらも挨拶を交わした。

 マドレーヌ妃はディミトリオ・ハクヤの足元にいる少年に首を傾げた。

『父様。』『とうさま。』

 ディミトリオ・ハクヤを父と呼ぶ2人の少年を驚いたように見ていたマドレーヌに気づいたディミトリオ・ハクヤが苦笑しながら紹介をしたのだ。

「私と契約してくれた水の妖精です。」

 それを聞いたマドレーヌ妃は別の意味で驚いた。

「妖精?
 えっ・・・。
 妖精が存在するのですか?
 いや、龍がいるのだから妖精がいても良いわけですよね?
 あれ?
 かつてはロンサンティエにも妖精がいたと歴史で学んだ事が・・・。」

 戸惑うマドレーヌにディミトリオ・ハクヤとリリィは微笑むばかりであった。
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