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そして混迷は次代へ
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この日、人々が眠りについた頃
宮殿の各地で松明が照らされた。
その炎に照らされていたのは武装した騎士達の姿だった。
彼らは互いに合図を送ると足早に散って行く。
暫くして怒号や悲鳴が聞こえ始めると、宮殿は一気に恐怖に包まれて行った。
喧騒の中を1人の若き皇子が家臣を引き連れて悠然と歩いていく。
ジャンヴィエ・リーン
この帝国の継承順位第1位の皇子だった。
彼が向かう目的地はただ1つ。
それが何処なのか、彼は知っていた。
警備についていた衛兵達を黙らせ、問題なく辿りつくと、躊躇いもなく扉をノックした。
返事はない。
けれど、彼はこの場所に父がいる事を知っていた。
彼の父は帝国の君主である皇帝だった。
絶対的な権力を持つ父を前に彼の感情が漣み出す。
しかし、後に立つ部下達の気合いが彼の背を押した。
許可もなく扉を開いたジャンヴィエ・リーンは窓際に立ち、外を見つめていた父を見つめた。
「焦ったか、リーンよ。」
振り返る事なく誰が来たのか理解していた皇帝ハイゴール・ウィリにジャンヴィエ・リーンは眉を顰めた。
「世界平和の秩序を保つ為です。
これからの世に父上達の様な老害は必要ありません。」
そう言い放つ息子にハイゴール・ウィリは鼻で笑った。
「崇高な考えがあったのか?
私の世で、この国が終われば己が次代の皇帝になれずに焦ったのかと思ったぞ。」
父の言葉にジャンヴィエ・リーンは眉間に皺を寄せた。
「父上は龍を怒らせました。
私なら、もっと上手くやります。」
ジャンヴィエ・リーンの言葉に皇帝は振り返った。
少し疲れたようだが、何処か晴々とした顔だった。
「お前は私に似ているな。
愚かなところが、そっくりだ。
龍はお前なんぞに扱えぬよ。」
父の言葉にジャンヴィエ・リーンは声を荒げた。
「それは、父上が龍の姫巫女に失礼な事をしたからでしょう!
ちゃんともてなし、安息の場所を与えれば龍の姫巫女は我らの声に耳を傾けてくれたはずです。」
ハイゴール・ウィリは悲しそうに微笑んだ。
「龍の姫巫女は既に我らの声に耳を傾けている。
その上で、今の皇族を嫌っているのだよ。
いや、1番は私か・・・。」
自笑する父にジャンヴィエ・リーンは我慢が出来ずにいた。
「父上、御退場願います。
これからは私の世です。
貴方は私の手で再生する国を遠くの地から見ていればいい。」
ジャンヴィエ・リーンの言葉に部下達が皇帝ハイゴール・ウィリの両側から掴み連れて行く。
部屋を出ていく間際に父ハイゴール・ウィリが真剣な顔で振り返った。
「哀れな息子よ。
あの娘に会いに行くのなら気をつけなさい。
あれは龍の魂を持った女だ。
我ら人間の事情など受け付けぬぞ。」
息子の返事を聞く事もなく去って行く父を見送ると、ジャンヴィエ・リーンは外を見つめた。
沢山の松明の光が揺れていた。
次世代は既に動き始めている。
窓に手を当てると部下達を振り返った。
「次は後宮だ。行くぞ。」
宮殿の各地で松明が照らされた。
その炎に照らされていたのは武装した騎士達の姿だった。
彼らは互いに合図を送ると足早に散って行く。
暫くして怒号や悲鳴が聞こえ始めると、宮殿は一気に恐怖に包まれて行った。
喧騒の中を1人の若き皇子が家臣を引き連れて悠然と歩いていく。
ジャンヴィエ・リーン
この帝国の継承順位第1位の皇子だった。
彼が向かう目的地はただ1つ。
それが何処なのか、彼は知っていた。
警備についていた衛兵達を黙らせ、問題なく辿りつくと、躊躇いもなく扉をノックした。
返事はない。
けれど、彼はこの場所に父がいる事を知っていた。
彼の父は帝国の君主である皇帝だった。
絶対的な権力を持つ父を前に彼の感情が漣み出す。
しかし、後に立つ部下達の気合いが彼の背を押した。
許可もなく扉を開いたジャンヴィエ・リーンは窓際に立ち、外を見つめていた父を見つめた。
「焦ったか、リーンよ。」
振り返る事なく誰が来たのか理解していた皇帝ハイゴール・ウィリにジャンヴィエ・リーンは眉を顰めた。
「世界平和の秩序を保つ為です。
これからの世に父上達の様な老害は必要ありません。」
そう言い放つ息子にハイゴール・ウィリは鼻で笑った。
「崇高な考えがあったのか?
私の世で、この国が終われば己が次代の皇帝になれずに焦ったのかと思ったぞ。」
父の言葉にジャンヴィエ・リーンは眉間に皺を寄せた。
「父上は龍を怒らせました。
私なら、もっと上手くやります。」
ジャンヴィエ・リーンの言葉に皇帝は振り返った。
少し疲れたようだが、何処か晴々とした顔だった。
「お前は私に似ているな。
愚かなところが、そっくりだ。
龍はお前なんぞに扱えぬよ。」
父の言葉にジャンヴィエ・リーンは声を荒げた。
「それは、父上が龍の姫巫女に失礼な事をしたからでしょう!
ちゃんともてなし、安息の場所を与えれば龍の姫巫女は我らの声に耳を傾けてくれたはずです。」
ハイゴール・ウィリは悲しそうに微笑んだ。
「龍の姫巫女は既に我らの声に耳を傾けている。
その上で、今の皇族を嫌っているのだよ。
いや、1番は私か・・・。」
自笑する父にジャンヴィエ・リーンは我慢が出来ずにいた。
「父上、御退場願います。
これからは私の世です。
貴方は私の手で再生する国を遠くの地から見ていればいい。」
ジャンヴィエ・リーンの言葉に部下達が皇帝ハイゴール・ウィリの両側から掴み連れて行く。
部屋を出ていく間際に父ハイゴール・ウィリが真剣な顔で振り返った。
「哀れな息子よ。
あの娘に会いに行くのなら気をつけなさい。
あれは龍の魂を持った女だ。
我ら人間の事情など受け付けぬぞ。」
息子の返事を聞く事もなく去って行く父を見送ると、ジャンヴィエ・リーンは外を見つめた。
沢山の松明の光が揺れていた。
次世代は既に動き始めている。
窓に手を当てると部下達を振り返った。
「次は後宮だ。行くぞ。」
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