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混沌なる後宮
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離宮が完成した翌日。
「龍の姫巫女様に御目通りを・・・。」
玄関前で頭を下げているのはロンサンティエ帝国にて誉高き宰相ムク・フランであった。
「ご用件は?」
それを見下ろすは龍の姫巫女が連れてきた体格の良い男・・・コテツだった。
「先程、私が派遣した侍女と護衛指名した騎士が返されたと報告があった。
後宮が如何に安全とはいえ離宮に警備は必須。
何が御不満であったのか伺いに参った。」
そう話す宰相の後では、彼以上に不機嫌な顔をした女達と男達がいた。
先日の出来事を噂程度でしか認知できていない輩の中には、態度の悪い者もいる。
自分達の矜持が傷つけられて立腹しているのだろう。
「姫様は必要ないとお考えのようです。」
言葉少ないコテツの威圧に一同が顔色を変える中、宰相は困ったとばかりに眉を下げた。
「しかし、この離宮には人が足りないのでは?
龍の姫巫女様に不便があってはならぬのだ?
龍の姫巫女様に直接お伺いさせて頂きたい。」
かつての荒屋が見事な離宮に変化して1日。
宰相は、あまりの変化に驚きを隠せずにジロジロと四方に視線を送っていた。
「姫様がいらっしゃいます。」
コテツとは違う冷たい声が聞こえた。
メイドの服に身を包んだアリスにコテツが目配せを送った。
その背後から今日とて美しいリリィが現れた。
「ふわぁぁ。
宰相さん。何かご用?」
眠そうなリリィに人々の頬が赤く染まった。
「姫様。
お胸が肌けておりますよ。」
慌てるでもないアリスに身支度を整われたリリィは玄関にあった椅子に腰掛け、眠っているルーチェを優しく撫でた。
「それで?
何の用です?」
ベールの無いリリィの青い目にダイレクトに見つめられ、宰相は息を飲んだ。
それでも負けじと視線を外す事はしない。
「私が届けた侍女と護衛が戻って参りました。
何が御不満だったのでしょう?」
宰相の後ろに控えていた侍女も護衛も納得がいかないのだろう。
不躾と知りながらもリリィをジッと見つめていた。
「何って・・・全部?」
キョトンとした顔を傾げるリリィに一同が唖然とする。
「私のアリス以上に能力のある侍女はいないし、私のコテツ以上に頼りになる護衛はいないもの。
女性の護衛騎士もいるようだけど、それだってアリスに比べれば不十分ね。」
それ以上に皇帝と宰相の回し者を自分のテリトリーに入れるつもりはないとは言わないアリスだった。
「心外です!
私は何よりも武を磨いてきた者。
そこな男にだって負けやしません。」
「私達も同じく王宮にて長年の間、侍女を務めて参りました。
帝国の流儀も分からぬ娘よりも役に立ちます。」
龍の姫巫女の連れてきたコテツとアリスに対して異常なまでの対抗心は、恐らく皇帝への忠義によるものだろうが、いかんせん相手は龍の姫巫女だった。
「この帝国には龍に見守られている私に害を与える人間がいるの?
帝国の流儀?
ならば、龍の流儀をお前は知っているのか?
無闇に龍の縄張りに踏み入れている事も分かっていないのに?」
リリィが首を傾げると宰相は顔を青くした。
リリィの肩で目を瞑っていた筈のルーチェが今やパッチリと宰相を見つめていたのだ。
「姫よ。面倒だ証明してやれば良い。」
コテツが口を開いた。
「そうね。手っ取り早いわ。」
アリスが口を開いた。
そして2人は声を揃えた。
「「表に出ろ。」」
「龍の姫巫女様に御目通りを・・・。」
玄関前で頭を下げているのはロンサンティエ帝国にて誉高き宰相ムク・フランであった。
「ご用件は?」
それを見下ろすは龍の姫巫女が連れてきた体格の良い男・・・コテツだった。
「先程、私が派遣した侍女と護衛指名した騎士が返されたと報告があった。
後宮が如何に安全とはいえ離宮に警備は必須。
何が御不満であったのか伺いに参った。」
そう話す宰相の後では、彼以上に不機嫌な顔をした女達と男達がいた。
先日の出来事を噂程度でしか認知できていない輩の中には、態度の悪い者もいる。
自分達の矜持が傷つけられて立腹しているのだろう。
「姫様は必要ないとお考えのようです。」
言葉少ないコテツの威圧に一同が顔色を変える中、宰相は困ったとばかりに眉を下げた。
「しかし、この離宮には人が足りないのでは?
龍の姫巫女様に不便があってはならぬのだ?
龍の姫巫女様に直接お伺いさせて頂きたい。」
かつての荒屋が見事な離宮に変化して1日。
宰相は、あまりの変化に驚きを隠せずにジロジロと四方に視線を送っていた。
「姫様がいらっしゃいます。」
コテツとは違う冷たい声が聞こえた。
メイドの服に身を包んだアリスにコテツが目配せを送った。
その背後から今日とて美しいリリィが現れた。
「ふわぁぁ。
宰相さん。何かご用?」
眠そうなリリィに人々の頬が赤く染まった。
「姫様。
お胸が肌けておりますよ。」
慌てるでもないアリスに身支度を整われたリリィは玄関にあった椅子に腰掛け、眠っているルーチェを優しく撫でた。
「それで?
何の用です?」
ベールの無いリリィの青い目にダイレクトに見つめられ、宰相は息を飲んだ。
それでも負けじと視線を外す事はしない。
「私が届けた侍女と護衛が戻って参りました。
何が御不満だったのでしょう?」
宰相の後ろに控えていた侍女も護衛も納得がいかないのだろう。
不躾と知りながらもリリィをジッと見つめていた。
「何って・・・全部?」
キョトンとした顔を傾げるリリィに一同が唖然とする。
「私のアリス以上に能力のある侍女はいないし、私のコテツ以上に頼りになる護衛はいないもの。
女性の護衛騎士もいるようだけど、それだってアリスに比べれば不十分ね。」
それ以上に皇帝と宰相の回し者を自分のテリトリーに入れるつもりはないとは言わないアリスだった。
「心外です!
私は何よりも武を磨いてきた者。
そこな男にだって負けやしません。」
「私達も同じく王宮にて長年の間、侍女を務めて参りました。
帝国の流儀も分からぬ娘よりも役に立ちます。」
龍の姫巫女の連れてきたコテツとアリスに対して異常なまでの対抗心は、恐らく皇帝への忠義によるものだろうが、いかんせん相手は龍の姫巫女だった。
「この帝国には龍に見守られている私に害を与える人間がいるの?
帝国の流儀?
ならば、龍の流儀をお前は知っているのか?
無闇に龍の縄張りに踏み入れている事も分かっていないのに?」
リリィが首を傾げると宰相は顔を青くした。
リリィの肩で目を瞑っていた筈のルーチェが今やパッチリと宰相を見つめていたのだ。
「姫よ。面倒だ証明してやれば良い。」
コテツが口を開いた。
「そうね。手っ取り早いわ。」
アリスが口を開いた。
そして2人は声を揃えた。
「「表に出ろ。」」
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