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ロンサンティエ帝国の明暗
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『・・・何とも品のない男だ。』
『ブクブク太った豚だね。』
『醜く腐った脂肪は食べられない。』
『豚だって、もう少し身嗜みに気を使いますよ。
彼らは綺麗好きなんですから。』
『あれが、この国が落ちぶれた元凶だろう。』
『今から、アイツと話すの?
えぇ・・・やだなぁ。』
大広間をゆっくりと進んでいたディミトリオ・ハクヤは何かが囁いているのが聞こえた。
周囲に視線を配ってみても誰もいない。
そんな中、鈴の音の様なリリィが小声を出した。
「みんな黙って。
笑っちゃうでしょ。」
「リリィ?」
周囲から視線が集まっている中、粗相を犯すわけにはいかずにディミトリオ・ハクヤはリリィを心配する様に小さな声で問いかけた。
「何でもないよ。」
何でもないと言うリリィであったが、ディミトリオ・ハクヤにはさっきの声が聞こえ続けている。
『アレが姫様に手を触れた瞬間に血の全てを沸騰させてやる。』
『じゃあさ、じゃあさ。
その前に頭から花咲かせて良い?』
『それさ。それさ。
馬鹿みたいに見えるじゃない?』
『とうの昔にアレが馬鹿だと、誰しもが知ってるでしょう。
アレこそが愚かしい人間の象徴的な姿です。』
『今から、怖い思いをすんだから哀れなものだ。』
囁き声は他の貴族達には聞こえてはいないらしい。
戸惑うディミトリオ・ハクヤにルーチェが気遣う様に顔を覗き込んだ。
『気にする必要ないよ。』
気にするなと言う方が難しい。
なぜならディミトリオ・ハクヤは気づいてしまったのだから。
だって知っていたのだ。
ルーチェは白銀の腕輪に変化する。
ならば、謁見の準備を丹念に行なっていたアリスが丁寧につけていた宝飾品の全てが・・・。
「まさかと思うが、一緒に来た龍はルーチェの他にもいるとか言わないよな?」
小声で問い掛けるディミトリオ・ハクヤにリリィの楽しそうな声が聞こえた。
「逆に聞くけど、連れて行くのはルーチェだけと誰が言ったの?」
「あぁ・・・龍王よ。」
2人の会話は誰にも聞かれていない様だ。
それもその筈、普段から見目麗しいと評判のディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエ大公閣下が神々しい程の美しさを持つ娘を伴って帰って来たのだ。
周囲の人間は食い入る様に見る事くらしか出来ずに2人が皇帝陛下と対峙する時を待っている。
「クフフ。
ついに我が元へ参ったか。
龍姫よ。」
正式な挨拶の前に我慢が出来ずに声を掛けてきた豚・・・皇帝にディミトリオ・ハクヤはギョッとした。
『無礼者め。焼き尽くすぞ。』
『豚が鳴いてるぅ~♫』
『醜い豚が鳴いたぁ~♫』
『何と。
品のない豚は礼儀も知らなんだか。』
『皆、落ち着け。
アレを物を知らぬ乳飲子だと思え。』
『聞いた?
今、クフフって笑ったよ?』
そして、リリィは思わず口を開いていた。
「キモッ。」
『ブクブク太った豚だね。』
『醜く腐った脂肪は食べられない。』
『豚だって、もう少し身嗜みに気を使いますよ。
彼らは綺麗好きなんですから。』
『あれが、この国が落ちぶれた元凶だろう。』
『今から、アイツと話すの?
えぇ・・・やだなぁ。』
大広間をゆっくりと進んでいたディミトリオ・ハクヤは何かが囁いているのが聞こえた。
周囲に視線を配ってみても誰もいない。
そんな中、鈴の音の様なリリィが小声を出した。
「みんな黙って。
笑っちゃうでしょ。」
「リリィ?」
周囲から視線が集まっている中、粗相を犯すわけにはいかずにディミトリオ・ハクヤはリリィを心配する様に小さな声で問いかけた。
「何でもないよ。」
何でもないと言うリリィであったが、ディミトリオ・ハクヤにはさっきの声が聞こえ続けている。
『アレが姫様に手を触れた瞬間に血の全てを沸騰させてやる。』
『じゃあさ、じゃあさ。
その前に頭から花咲かせて良い?』
『それさ。それさ。
馬鹿みたいに見えるじゃない?』
『とうの昔にアレが馬鹿だと、誰しもが知ってるでしょう。
アレこそが愚かしい人間の象徴的な姿です。』
『今から、怖い思いをすんだから哀れなものだ。』
囁き声は他の貴族達には聞こえてはいないらしい。
戸惑うディミトリオ・ハクヤにルーチェが気遣う様に顔を覗き込んだ。
『気にする必要ないよ。』
気にするなと言う方が難しい。
なぜならディミトリオ・ハクヤは気づいてしまったのだから。
だって知っていたのだ。
ルーチェは白銀の腕輪に変化する。
ならば、謁見の準備を丹念に行なっていたアリスが丁寧につけていた宝飾品の全てが・・・。
「まさかと思うが、一緒に来た龍はルーチェの他にもいるとか言わないよな?」
小声で問い掛けるディミトリオ・ハクヤにリリィの楽しそうな声が聞こえた。
「逆に聞くけど、連れて行くのはルーチェだけと誰が言ったの?」
「あぁ・・・龍王よ。」
2人の会話は誰にも聞かれていない様だ。
それもその筈、普段から見目麗しいと評判のディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエ大公閣下が神々しい程の美しさを持つ娘を伴って帰って来たのだ。
周囲の人間は食い入る様に見る事くらしか出来ずに2人が皇帝陛下と対峙する時を待っている。
「クフフ。
ついに我が元へ参ったか。
龍姫よ。」
正式な挨拶の前に我慢が出来ずに声を掛けてきた豚・・・皇帝にディミトリオ・ハクヤはギョッとした。
『無礼者め。焼き尽くすぞ。』
『豚が鳴いてるぅ~♫』
『醜い豚が鳴いたぁ~♫』
『何と。
品のない豚は礼儀も知らなんだか。』
『皆、落ち着け。
アレを物を知らぬ乳飲子だと思え。』
『聞いた?
今、クフフって笑ったよ?』
そして、リリィは思わず口を開いていた。
「キモッ。」
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