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束の間のポーレット
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すっかりと目覚めたポーレットの街は人の往来が増え賑やかしさが増えていた。
“明けない魔の森”の存在のお陰か、アースガイルの中でも冒険者が集まる有数の街だ。
当然、冒険者ギルドも朝早くから忙しい。
イオリ達が冒険者ギルドの扉を開くと依頼ボードの前を始めとして受付も人が多い。
朝一番に仕事を求めている冒険者達が殺到しているのだ。
2階からギルド中を見渡していたギルマス・コジモはイオリ達の姿を見つけると手をあげて階段を指さした。
「あれは来いって事ですかね?」
「だろうな・・・。」
「行くのか?」
「目立たねーか?」
「目立ちますね。」
イオリ達は立ち往生して2階を見上げると、ギルマスは必死に手を振っている。
「・・・・・やめようかな。」
「やめるか。」
「そうだな。」
「目立つしな。」
「えぇ、目立ちます。」
子供達を促して引き返そうとした時だった。
「来いって言ってんだろうーが!!」
ギルマスの声がギルドに響き渡った。
冒険者が驚いてギルマスの声の先を探すと、真っ黒な青年を始め大柄な剣士と貴族の青年と騎士の身なりの2人が実に嫌そうに顔を歪めていた。
「アレって、公爵家の御子息だぞ。」
「じゃあ、隣にいるのは従者か?」
「あの子供連れって・・・。」
「黒狼じゃねーか?」
結局、注目を浴びたイオリ達はいそいそと階段を登りギルマスの部屋に滑り込んだ。
「ギルマスは空気が読めないと言われないか?」
部屋に入るなりヴァルトがそう言うと、イオリ達がウンウンと相槌を打った。
「あぁん?何言ってんですか?ヴァルト様は・・・。
そんな事より、なんで来ないんだ?」
ギルマスが首を傾げるのをイオリを含め部屋中から溜息が聞こえた。
「この方にデリカシーを求めてはいけません。」
サブマス・エルノールが眉を下げて苦笑していた。
「エルノールさん。おはようございます。
今日からよろしくお願いします。」
イオリはエルノールに握手すると、エルノールは満面の笑みになった。
「お世話になるのは、こちらも一緒です。
イオリさんの絶品料理を楽しみにしています。
ヴァルト様も見送りに来て下さったのですか?」
微笑むエルノールにヴァルトは、釣られるように微笑んだ。
「そんな事は良いんだよ。
お前ら誰かに狙われてるぞ?」
和やかな空気を破り、ギルマス・コジモがイオリに警告をした。
「あっ。知ってます。」
なんて事なくイオリが頷くとギルマスはキョトンとした。
「知ってた?」
「はい。流石に、数日間見張られていれば気づきます。
最初に気づいたのはヒューゴさんですけどね。」
イオリの答えにギルマスは思わずヒューゴを見た。
ヒューゴは肩を竦めると、平然と答えた。
「帰ってきてから、ずっと視線は感じていました。
それはイオリやゼンも一緒で、襲ってくる気配もないので放置してました。
しっかりと認識したのは“日暮れの暖炉”で飯を食ってた時に後のテーブルで観察された時ですかね。
それから、ずっと数人がついてきてますね。
公爵家の動きも見張ってました。」
「そこまで知っていて放置って・・・。
大丈夫なのか?
ミズガルドの事もあるし、依頼を断り続ける貴族連中の問題もある。
出発間際に面倒事に巻き込まれたら・・・。」
驚くギルマスは心配そうに顔を歪めた。
そんなギルマスにイオリは微笑んだ。
「何かしてくるなら、とっくに仕掛けてきてますよ。
出来ないって事は、ポーレット公爵が怖いんでしょう。
だから、俺がポーレットの街を出るまで来ないと思いますよ。
因みに、公爵も知っています。」
同席していたポーレット公爵家のヴァルトがニヤリと頷くとギルマスは驚いた顔をした。
仕事の早いイオリを含めたパーティーメンバーは、見張りの男達の存在を知っていたのだ。
雇い主を炙り出そうと放置していた彼らに結局、ギルマスは苦笑したのだった。
「それで?どうする?」
“明けない魔の森”の存在のお陰か、アースガイルの中でも冒険者が集まる有数の街だ。
当然、冒険者ギルドも朝早くから忙しい。
イオリ達が冒険者ギルドの扉を開くと依頼ボードの前を始めとして受付も人が多い。
朝一番に仕事を求めている冒険者達が殺到しているのだ。
2階からギルド中を見渡していたギルマス・コジモはイオリ達の姿を見つけると手をあげて階段を指さした。
「あれは来いって事ですかね?」
「だろうな・・・。」
「行くのか?」
「目立たねーか?」
「目立ちますね。」
イオリ達は立ち往生して2階を見上げると、ギルマスは必死に手を振っている。
「・・・・・やめようかな。」
「やめるか。」
「そうだな。」
「目立つしな。」
「えぇ、目立ちます。」
子供達を促して引き返そうとした時だった。
「来いって言ってんだろうーが!!」
ギルマスの声がギルドに響き渡った。
冒険者が驚いてギルマスの声の先を探すと、真っ黒な青年を始め大柄な剣士と貴族の青年と騎士の身なりの2人が実に嫌そうに顔を歪めていた。
「アレって、公爵家の御子息だぞ。」
「じゃあ、隣にいるのは従者か?」
「あの子供連れって・・・。」
「黒狼じゃねーか?」
結局、注目を浴びたイオリ達はいそいそと階段を登りギルマスの部屋に滑り込んだ。
「ギルマスは空気が読めないと言われないか?」
部屋に入るなりヴァルトがそう言うと、イオリ達がウンウンと相槌を打った。
「あぁん?何言ってんですか?ヴァルト様は・・・。
そんな事より、なんで来ないんだ?」
ギルマスが首を傾げるのをイオリを含め部屋中から溜息が聞こえた。
「この方にデリカシーを求めてはいけません。」
サブマス・エルノールが眉を下げて苦笑していた。
「エルノールさん。おはようございます。
今日からよろしくお願いします。」
イオリはエルノールに握手すると、エルノールは満面の笑みになった。
「お世話になるのは、こちらも一緒です。
イオリさんの絶品料理を楽しみにしています。
ヴァルト様も見送りに来て下さったのですか?」
微笑むエルノールにヴァルトは、釣られるように微笑んだ。
「そんな事は良いんだよ。
お前ら誰かに狙われてるぞ?」
和やかな空気を破り、ギルマス・コジモがイオリに警告をした。
「あっ。知ってます。」
なんて事なくイオリが頷くとギルマスはキョトンとした。
「知ってた?」
「はい。流石に、数日間見張られていれば気づきます。
最初に気づいたのはヒューゴさんですけどね。」
イオリの答えにギルマスは思わずヒューゴを見た。
ヒューゴは肩を竦めると、平然と答えた。
「帰ってきてから、ずっと視線は感じていました。
それはイオリやゼンも一緒で、襲ってくる気配もないので放置してました。
しっかりと認識したのは“日暮れの暖炉”で飯を食ってた時に後のテーブルで観察された時ですかね。
それから、ずっと数人がついてきてますね。
公爵家の動きも見張ってました。」
「そこまで知っていて放置って・・・。
大丈夫なのか?
ミズガルドの事もあるし、依頼を断り続ける貴族連中の問題もある。
出発間際に面倒事に巻き込まれたら・・・。」
驚くギルマスは心配そうに顔を歪めた。
そんなギルマスにイオリは微笑んだ。
「何かしてくるなら、とっくに仕掛けてきてますよ。
出来ないって事は、ポーレット公爵が怖いんでしょう。
だから、俺がポーレットの街を出るまで来ないと思いますよ。
因みに、公爵も知っています。」
同席していたポーレット公爵家のヴァルトがニヤリと頷くとギルマスは驚いた顔をした。
仕事の早いイオリを含めたパーティーメンバーは、見張りの男達の存在を知っていたのだ。
雇い主を炙り出そうと放置していた彼らに結局、ギルマスは苦笑したのだった。
「それで?どうする?」
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