上 下
385 / 472
新たな旅 ーミズガルドー

457

しおりを挟む
「次!おらっ!そんなものか!!次!」

 アースガイル国軍将軍ザックス・ヒルは王宮の広場でミズガルドの軍人達を前に訓練という名の勝負を挑んでいた。

 聞けば、王宮を囲む様に現れた大蛇をイオリが倒したらしい。
 
《俺も、大蛇とやり合いたかった!!
 くそっ!イオリめ。いいところを持って行きやがって。》

 子供がお祭りに間に合わなくて剝れる様に目の前の軍人をなぎ倒す。
 ミズガルド軍の軍人達は他国にも名を轟かせるザックス・ヒル将軍との立ち合いに感動していたが、将軍の感情が読み取れるアースガイル軍の軍人達は深い深い溜息を吐いた。
 尚且つ、将軍を諫める副官オーブリーがいないのが悔やまれる。
 そんな訓練場に明るい声が響いていた。

「ザックス!イオリ連れてきたよ!」

「おぉ!!イオリ!来たか!勝負だ。」

 パティが声をかけると嬉しそうにザックスが顔をあげ手招きをした。
 イオリは苦笑するとコートをヒューゴに渡した。
 大きなザックス・ヒルに対し、細身のイオリが素手で近づいていくのをミズガルドの軍人達は驚いて見ていた。
 
「ザックスさんが俺を捕まえられたら、ザックスさんの勝ちです。」

 そう言うと、イオリはザックスに走っていった。

「いいねーいいねー。追いかけっこか?
 やってやるよ。」

 ザックスは真っ直ぐ走ってきたイオリに真横に剣を振った。
 喚くミズガルド軍に対し慣れた光景のアースガイル軍の軍人達は申し訳ないとヒューゴに眉を下げていた。

「オラァ!」

「ほっ!ほい!!」

 決して手を抜いている感じではないザックス・ヒルの剣をギリギリで避けているイオリにミズガルドの軍人達は驚いていた。
 イオリがザックス・ヒルの剣を蹴り飛ばし着地すると2人はニヤリとして勝負をやめた。

「やっぱり、お前は面白いな!飽きねーよ。」

「それは何よりです。俺も久々に体を動かすことができて楽しかったです。
 ありがとうございました。」

 その後、それぞれの軍に指示を出し自身は汗を拭うと制服を着たザックス・ヒルはイオリ達を連れて王宮の外に出た。

「見ろよ。王宮はボロボロだが、街は守られている。
 ヴァルトのとこのカーバンクルがいたとしても、よく守ったものだ。
 よくやった。」

 この国に来てから、ちゃんと街を見ていなかったイオリは壊れていない街並みを見て安心した。
 そんな中、王宮脇にゾロゾロと並ぶ人の群れを見た。
 衛兵が1人1人を書類と照らし合わせて決して豪華でない馬車に乗せている。
 次々と行われている、その光景を見たイオリはザックスに聞いた。

「あれは、何をしているんですか?」

「あぁ、あれな。
 前政権時にヴァハマン派だった連中やら不正やら恐喝をしでかしていた貴族や豪商達だ。
 取り調べの末、悪質だった者達を裁判までそれぞれの場所で隔離するんだそうだ。
 まぁ、今まで甘い汁を啜っていた連中さ。
 あれは俺らにはどうにも出来ない。
 ミズガルドの問題だ。」

 トーレチカの改革の一歩を見たイオリ達が眉を下げながらも踵を返し王宮に入ろうとした時だった。

「ニナ!!ニナでしょ?
 それに・・・ヒューゴ?ヒューゴじゃない!?」

 女性の声が響き渡った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。