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新たな旅 ーミズガルドー
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カレリン家執事・ユーリィは早朝に主人から客が来ると聞いて驚いた。
何でも、夜中に文が届いたと言う。
いつもの主人であったらば怪しげな手紙など一度ユーリィに見せてから判断するが、今回は思う所があるようだった。
主人の命は使用人の務め。
朝から、お客様をお迎えする為の準備勤しんだ。
王都から離れた領地といえど、噂は聞こえてくる。
アースガイルに婚約者候補として向かった第3王女ロザリンダの帰国。
ロザリンダの連れて行った使用人達のアースガイルでの悪行。
今回のお客様がアースガイルから来るとなると確実に関係はあるのだろう。
しかし、我が主人は王宮と距離をとっている御方。
利用しに来るのだったら丁重にお帰りいただかなくてはならない。
この数年間は地獄のようだった。
主人の悲しみを思うと新しい奥様ソフィア様と仲睦まじい姿を見て使用人達も心が安らぐ。
どうか、この安寧を崩さないでいただきたい。
昼過ぎに屋敷を訪ねてきたのは商人と護衛の冒険者だった。
「このような姿で申し訳ない。
本日、カレリン公爵に訪問する旨を伝えているヴァルト・ドゥ・ポーレットと申します。
お取次願います。」
ユーリィは驚いた。
ポーレット公爵と言えば、アースガイルで1番の貴族で最近も発展著しい街を収めていると聞く。
何よりも王弟殿下であった人物だ。
訪問した人物も“ドゥ”持ちとくれば、簡単に扱えない。
「ようこそ、カレリン領へお越しくださいました。
主人に取り次いで参ります。
よろしければ、お部屋をご用意します。
お着替えなどいたしますか?」
「それは有難いです。
流石にこのままでは会えないと思っていました。
お言葉に甘えます。」
メイドに案内をさせている間に自身は主人の元へ向かった。
「お客様がいらっしゃいました。
変装しておいででしたので、お部屋にご案内してお着替えをしておいでです。」
「そうか。丁重におもてなしするように。
・・・どんな人物であった?」
主人イグナート・カレリンは書類から目を離すとユーリィに聞いた。
「“ドゥ”持ちと言えば、彼の国では王位継承権をお持ちの方。
まさか、商人の格好でいらっしゃるとは想いませなんだ。
ご本人は清々しい若者でした。
体格も注文付けるところがございません。鍛えていらっしゃるのでしょう。
お供の方々も、同じような年周りでございました。
青年と少年が混じっていましたが、あれは冒険者でしょう。
護衛だと思われます。
それと・・・ポーレット公爵家はカーバンクルに愛された家。
今回も2匹連れております。どのようなスキルを持っているか分かりません。
因みに護衛の青年も従魔を3匹連れております。
十分にお気をつけ下さい。」
イグナートは少年と聞き、昨夜の客だと思った。
「分かった・・・。
あちらが準備が良いようなら、案内しなさい。」
「畏まりました。」
部屋を出たユーリィはこの時まだ、自分達が・・・いや主人が再び悪魔に振り回されるとは思っていなかった。
「まずは、こちらが我が王アルフレッド・アースガイルより預かって参りました書状にございます。」
客人が差し出した書状にユーリィは驚いた。
《アースガイル王は主を謀反人にするおつもりか!》
「嘘だ・・・まさか・・・。」
読み進める主人の顔色が変わっていくのがわかるとユーリィは心配になり体勢が崩れたイグナートに駆け寄った。
払い退けられた後、書状を押し付けてくる主人にユーリィは驚いた。
他国の王の書状を執事如きがが読むなどあってはいけない。
「読んでみろ・・・。
信じられない事が書いてあるぞ・・・。」
ユーリィは恐る恐る書状を手にした。
最初の方は挨拶とミズガルドに迷惑しているといった我々が把握している内容だった。
大型の魔獣を消しかけるなど、恥ずべき方法であるが主人とは関わり合いがない。
しかし中盤に差し掛かるとユーリィの手が震えて出した。
《悪魔が生きている・・・?まさか!!》
ユーリィは客人であるポーレット公爵子息を睨みつけた。
《ここに来て、まだ主人の心を乱すのか!
やっと平穏を手に入れたと言うのに!!》
しかし、ユーリィの想いは砕かれる。
「事実です。」
意志の籠もった若き貴族の目は主人だけでなくユーリィの心にも突き刺さった。
事はヴァハマン一派の腐敗政治だけでない
田舎で縮み上がっている場合ではない
一つ一つが殴られているようであった。
ガシャン!!
そんな時であった。廊下から物音が響いた。
ユーリィは慌てて扉を開くとメイドに支えられているソフィアの姿があった。
「奥様!」
何でも、夜中に文が届いたと言う。
いつもの主人であったらば怪しげな手紙など一度ユーリィに見せてから判断するが、今回は思う所があるようだった。
主人の命は使用人の務め。
朝から、お客様をお迎えする為の準備勤しんだ。
王都から離れた領地といえど、噂は聞こえてくる。
アースガイルに婚約者候補として向かった第3王女ロザリンダの帰国。
ロザリンダの連れて行った使用人達のアースガイルでの悪行。
今回のお客様がアースガイルから来るとなると確実に関係はあるのだろう。
しかし、我が主人は王宮と距離をとっている御方。
利用しに来るのだったら丁重にお帰りいただかなくてはならない。
この数年間は地獄のようだった。
主人の悲しみを思うと新しい奥様ソフィア様と仲睦まじい姿を見て使用人達も心が安らぐ。
どうか、この安寧を崩さないでいただきたい。
昼過ぎに屋敷を訪ねてきたのは商人と護衛の冒険者だった。
「このような姿で申し訳ない。
本日、カレリン公爵に訪問する旨を伝えているヴァルト・ドゥ・ポーレットと申します。
お取次願います。」
ユーリィは驚いた。
ポーレット公爵と言えば、アースガイルで1番の貴族で最近も発展著しい街を収めていると聞く。
何よりも王弟殿下であった人物だ。
訪問した人物も“ドゥ”持ちとくれば、簡単に扱えない。
「ようこそ、カレリン領へお越しくださいました。
主人に取り次いで参ります。
よろしければ、お部屋をご用意します。
お着替えなどいたしますか?」
「それは有難いです。
流石にこのままでは会えないと思っていました。
お言葉に甘えます。」
メイドに案内をさせている間に自身は主人の元へ向かった。
「お客様がいらっしゃいました。
変装しておいででしたので、お部屋にご案内してお着替えをしておいでです。」
「そうか。丁重におもてなしするように。
・・・どんな人物であった?」
主人イグナート・カレリンは書類から目を離すとユーリィに聞いた。
「“ドゥ”持ちと言えば、彼の国では王位継承権をお持ちの方。
まさか、商人の格好でいらっしゃるとは想いませなんだ。
ご本人は清々しい若者でした。
体格も注文付けるところがございません。鍛えていらっしゃるのでしょう。
お供の方々も、同じような年周りでございました。
青年と少年が混じっていましたが、あれは冒険者でしょう。
護衛だと思われます。
それと・・・ポーレット公爵家はカーバンクルに愛された家。
今回も2匹連れております。どのようなスキルを持っているか分かりません。
因みに護衛の青年も従魔を3匹連れております。
十分にお気をつけ下さい。」
イグナートは少年と聞き、昨夜の客だと思った。
「分かった・・・。
あちらが準備が良いようなら、案内しなさい。」
「畏まりました。」
部屋を出たユーリィはこの時まだ、自分達が・・・いや主人が再び悪魔に振り回されるとは思っていなかった。
「まずは、こちらが我が王アルフレッド・アースガイルより預かって参りました書状にございます。」
客人が差し出した書状にユーリィは驚いた。
《アースガイル王は主を謀反人にするおつもりか!》
「嘘だ・・・まさか・・・。」
読み進める主人の顔色が変わっていくのがわかるとユーリィは心配になり体勢が崩れたイグナートに駆け寄った。
払い退けられた後、書状を押し付けてくる主人にユーリィは驚いた。
他国の王の書状を執事如きがが読むなどあってはいけない。
「読んでみろ・・・。
信じられない事が書いてあるぞ・・・。」
ユーリィは恐る恐る書状を手にした。
最初の方は挨拶とミズガルドに迷惑しているといった我々が把握している内容だった。
大型の魔獣を消しかけるなど、恥ずべき方法であるが主人とは関わり合いがない。
しかし中盤に差し掛かるとユーリィの手が震えて出した。
《悪魔が生きている・・・?まさか!!》
ユーリィは客人であるポーレット公爵子息を睨みつけた。
《ここに来て、まだ主人の心を乱すのか!
やっと平穏を手に入れたと言うのに!!》
しかし、ユーリィの想いは砕かれる。
「事実です。」
意志の籠もった若き貴族の目は主人だけでなくユーリィの心にも突き刺さった。
事はヴァハマン一派の腐敗政治だけでない
田舎で縮み上がっている場合ではない
一つ一つが殴られているようであった。
ガシャン!!
そんな時であった。廊下から物音が響いた。
ユーリィは慌てて扉を開くとメイドに支えられているソフィアの姿があった。
「奥様!」
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