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新たな旅 ー王都ー

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 軽い脳震盪からかフラつくギガントベアーの正面に来たヒューゴは大剣を構えると勢いのまま斬撃を喰らわせた。

「グアぁぁぁぁぁぁ!!」

 攻撃によりギガントベアーは転がっているがヒューゴには手応えがなかった。
 その内、ザックス将軍とオーブリーが追いつきギガントベアーに攻撃を仕掛けていくが致命傷までとはいかない様だ。

「通常よりも皮下脂肪が多いのでしょうか?
 渾身の一撃も半減している様に思います。」

 ヒューゴの分析に2人も同じ感想を持った。

「こいつは面倒だな。」

 馬を降りたザックスは自身の大剣を頭上に構えると立ち上がってきたギガントベアーに振り下ろした。

「ぎゃぁぁぁ!ゴォォ!!」

 やはり効いてはいるが、自身が思っているよりかはダメージは半減している。

「とにかく、攻撃をやめるな!
 少しでも効いているなら数を打て!!」

「「了解!!」」

 ザックスの指示にヒューゴとオーブリーは攻撃の手を休まずに続けた。




 チュペロの木の上で一連の光景を観察していたイオリは、ヒューゴ達が苦戦しているのに気づいた。

「何だろう?
 ただのギガントベアーには見えないな。」

 3人がギガントベアーの元についたのを見てイオリはゼンに声をかけた。

「行こう!!」

『了解!』

 チュペロの木から飛び降りるイオリを大きくなったゼンが空中で背中に乗せ一直線にギガントベアーの元に向かった。

「あれは・・・!」

 観察を続けていたイオリが慌てた様にヒューゴ達に叫んだ。

「ヒューゴさん!離れろ!!!」

 イオリの声に反応して離れたヒューゴとザックスとオーブリーの目の前でギガントベアーが倍の大きさに変化し周囲の木や魔獣を潰していった。

 唖然とするヒューゴ、ザックス、オーブリーの3人に追いついたイオリはビルの3階はあるギガントベアーを見上げた。

「何だ・・・これは?
 戦っている最中にデカくなるなんて見たことがないぞ。」

「俺も初めてですよ。
 でも、今まで会ってきた魔獣の亜種はこいつみたいにデカくなりましたよ。」

 ザックスの疑問に答えたイオリはゼンに跨るとギガントベアー目掛けて走って行った。

「イオリ!!」

「ザックスさん達は、隙を見逃さない様にして下さい。
 それまでアイツの相手は俺がします。
 行こう!ゼン!!」

 ゼンはギガントベアーの周りをグルグルと周り、イオリはその間に足元を氷弾を撃ちまくっていった。
 足元を固めると続けて暴れる巨体を避けながら頭上に飛び乗ると、いつだったかアマメを膝まづかせた方法で頭を徹甲弾に撃ち抜いた。
 皮下脂肪の薄い頭に、受けた事のない衝撃が起こるとギガントベアーは大口を開けて天を仰いだ。

 イオリは口の中にライフルを突っ込むと引き金に力を入れた。

「神様が作った銃だ。
 そう簡単には噛み切れないよ。」

 ドンっ!!

 重い銃弾に撃ち抜かれたギガントベアーは土煙を上げて真っ直ぐに倒れていったのだった。
 




「イオリ!!」

 全てを見ていたザックスは見えなくなったイオリを心配し叫ぶがヒューゴが肩を叩いた。

「大丈夫です。ほら。」

 ヒューゴが示す先には大きな純白のフェンリルに乗ったイオリが悠然と近寄ってきたのであった。

「お疲れ様です。
 とりあえず、ギガントベアーの対処は終わりました。」

 飄々としているイオリを前にザックスは呆れた様に大剣をしまった。

「お前らめちゃくちゃだな。
 何だ?今の戦い方!」

「だから言ったじゃないですか。
 俺たちは変則的だって。」

 ニッコリと笑うイオリにザックスはニカっと笑った。

「勝負はまだついてないからな!!」

「・・・はいはい。わかってますよ。」

 イオリとザックスのやり取りと見て微笑むヒューゴと共に隣に立ったアースガイル軍副官オーブリーは報告を次の様にした。

《一国の軍に匹敵すると言われたザックス将軍を押しても苦労したギガントベアーの亜種を青年は純白のフェンリルと共に踊る様に攻撃を仕掛け、我々が手を出すまでもなく容易く倒してしまったのである。
 彼の力が欲ではなく、彼の信条のうちに使われている事に感服せざる得ない。》

「あっちは上手くやってますかね?」

 イオリは同時期に出発したロザリンダ姫を送迎しているを思った。

「今頃、領土の境に到着しミズガルド軍に引き渡されているはずです。」

 オーブリーの言葉にザックスはニヤついた。

「まさか将軍が守っていたのがだなんて、ミズガルドの奴らも気づかなかったろうな。」



_________

「如何した!?」

 慌てて声を荒げ馬車の外を見たロザリンダが見たものは、自国ミズガルドの軍が待っている国境であった。

「着きましたよ。
 さぁ、お気をつけて。」

 馬車を開け手を出したのは・・・

「ギルバート殿下・・・?」

 ニッコリ笑った王太子ギルバートがロザリンダをエスコートしミズガルドの軍に引き渡した。

「大事な姫君をお返しする。」

 ミズガルドの軍人は王太子自らがロザリンダを送りに来るとは思っていなかった為に慌てた様に馬を降りた。

「殿下自らのお見送りに感謝いたします。」

 ロザリンダは頭を下げた。

「私だけではないよ。」

 後ろを振り返れば弟であるディビットと、従兄弟であるポーレット兄弟までもが馬に乗っていた。

に足を運んでいただいたロザリンダ姫に敬意を持つのは当然の事。
 ここからの旅の安全を祈ります。」

 ロザリンダにとってアースガイルは敵国であり、父よって攻略の任務を得た地であった。
 自分がアースガイルをかき回したのは自覚しているしミズガルドの姫として当然と思っていた。
 しかし目の前の光景に自分は王太子殿下に負けたのだと実感した。
 何よりも、これからアースガイルを相手にしなければいけない自身の父に一抹の不安を持ったのであった。

「お世話になりました。」

 そうしてロザリンダは自国の馬車に乗り故郷を目指したのであった。
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